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(追記あり必見!!)シークの花嫁 ④

とんでもお久しぶりです!

皆さま、どう過ごされてますでしょうか?

なんだか南のこちらより、北の方が遥かに暑いようですが、お元気でしょうか?

こちらは毎日涼しくて、ちょっとびっくりするくらいです。

例年、梅雨時期でもこんなに涼しくはないのですが・・・

地球がおかしくなっているなぁ、なんて思ったりして。


リアでは仕事が激忙しく、妄想する脳みそが行方不明になっていましたが。


S(サド)さんが囁くんです。

素敵な絵をもらったからキスの日にお話あげるの!って。


N(ナチュラル)さんが被せてくるんです。

なら、私もそれに乗っかろうかな?って。


二人が呟くんです。

シーク、次、キスくらいするだろ?ね?って。


М(マゾ)の私に断れるわけないじゃないですか?←


ということで、大好きな二人に誘われて、久しぶりの更新です。


フリーダム☆ゲリラ企画!!


『キスの日』って美味しいの?そりゃあ美味しいに決まってるでしょ!!


です!!←違うから


SとNのお二方は言わずもがな、あの方々です。

あちらのお話はきっと素敵だと思うの!

私も楽しみです(●´ω`●)


では、久しぶりにシークパロ、更新します!

いってらっしゃいませ!!



*************



何が起こったのか理解する間もなく、シークがユーリの身体の上に覆いかぶさった。

ユーリは余りもの恐怖に声も出ずカタカタ震えることしかできずにいた。

月明りのみの薄暗い部屋で、シークの瞳だけが紅く光を帯びユーリを鋭く睨みつけている。

その瞳は底の見えない冷たさで泣きたくなるくらいに怖い。

そういえば、戦場に立っていたころはシークウルフという異名が付いていたという記事をどこかで読んだことを思い出し、全くその通りだわと恐怖を通り越した先で考える。

確かに恐怖を感じているのに、何故か暗闇に浮かぶ瞳に見入ってしまいたい衝動に駆られる自分はおかしいのかもしれない。

 

目を逸らすこともできず、ユーリはそのまま逃げることも忘れ、暫く見つめ合っていた。

 

《・・・君は。》

《・・・》

《君は、白陽の民か?》

《・・・》

《答えよ。》

『こんな状態で睨まれて、脅かされて。そんな人に答える筋合いはないわ。』

 

脚が震えるほどの恐怖が身体を支配するが簡単に認めるわけにもいかない。

棒色の瞳に涙を堪えながらもプライドに支えられ睨み返す。

 

《・・・すまない。》

『・・・』

《まずは、私から話そう。だから、君も安心できたなら、正直に話をして欲しい。》

 

先程までの威圧的なシークは消え、すっかり弱り切った犬のように困った顔をするとユーリの上から起き上がり、寝台に腰かけユーリに向かって弱弱しく微笑んだ。

紅い瞳の輝きはそのままに優しさを帯びた瞳にユーリの頬が瞬時に染まる。

不遜な態度を取られ続けていたため印象は最悪だったが、普通にしていれば明らかに美丈夫に入るのはユーリにもわかっている。

 

そんな人にこんな風に優しく微笑まれらば誰だってポウッとなるものよ。

 

ユーリは自分の頬が熱くなるのをごまかすかのようにふいっと横を向いて起き上がろうとすると影が差した。

ん?と思った瞬間、シークがユーリの手を引き、腰にもう片方の手を当てて抱き起こされた。

 

『きゃうっ!』

《・・・》

『な、な、な、何を!きゅ、急に触らないでください!驚くから!!』

《・・・》

 

変な声が出て恥ずかしくなったユーリは目をつぶって口を引き結んだ。

 

《・・・ぷっ。》

 

え?

 

ユーリが恐る恐る目を開くと。

 

《くっ、くっ、くっ、あはっ、ははっ。》

 

もう我慢できないといった態で吹き出すように笑うシークがいた。

 

『ちょ、ちょっと!失礼じゃないですか?』

《だって、ちょ、あはは、おかしな声で、くっ、ふふ、おかしな顔・・・あははは。》

《おかしな顔って失礼ね!!》

 

居たたまれなくなってユーリが叫ぶと、シークは途端に笑うのを止め真摯な表情を浮かべユーリを見つめた。

 

《君は、やはり白陽の民なのだな。》

《・・・》

 

ユーリは答える代わりにコクンっと頷いた。

 

《脅すようなことをしてすまない。》

《・・・いいえ。大丈夫です。》

《何故?先程まであんなに警戒をしていたのに。》

《貴女は悪者ではないと思います。ほんの少ししかお話していませんが、考えたら、さっきホーエンとかいう人からも助けていただきましたし。きっと、大丈夫だと、私の第六感が言ってるので。》

 

真っすぐにシークを見つめて笑うユーリにシークは目を瞠った。

 

晩餐会の間、彼女を睨みつけていたのは、間諜ではないかと疑ったからだ。

流暢なフランス語で会話をし、まるでフランス人かのように振る舞ってはいるが、言葉の節々に懐かしい訛りがある気がして。

その上白い肌は肌理が細かく、遠い記憶を呼び起こし囚われそうになった。

睨みつけるように見つめていると、ユーリは気が付かないとばかりにコウジュと一生懸命話していたが、引き攣った頬、青ざめた顔、カタカタと震える肩がまるで捕食されるのを待つ兎のように見え、身体が熱を帯びた。

 

灯を受け金色に輝く髪を指に絡ませたい。

柔らかそうな頬に指を滑らせたい。

棒色に輝く大きな瞳に映し出されたい。

 

疑り睨みつけていたはずの自分は、だんだんと邪な考えばかり浮かびだしていた。

 

あの細い肩に口付け歯を立てたらどんな味がするのだろう?

薄絹の・・・その向こうが知りたい。

 

終いにはそんな衝動が沸き起こり、どんどん顔が険しくなる。

それに合わせ、周りが震えあがり、ユーリの表情も歪んでいくのが分かっていたが、そこで気を抜けば自制するのが難しいと分かるほどに身体は熱を孕んでいた。

 

その瞳に僕を映し出してほしい・・・

その笑顔を僕に向けて欲しい・・・

その声で僕の本当の名を紡いでほしい・・・

 

叶わないと分かっていながらも遣り切れない思いをぬぐうこともできず、気分転換に夜風に当たろうと出た先で懐かしい言葉が聞こえた気がして振り向くと、ユーリとホーエンの言い争う声が耳に届いた。

一瞬にして心が抗えないほどの勢いを持った炎に覆い尽くされるのがわかった。

 

間諜だろうと何だろうと手に入れてしまおう。

 

そう思って寝台に縫い付けたつもりだったのに。

弱弱しいと思っていた兎は存外気が強かった。

震えながらも睨み返すその気概。

緊張の解けた空気で交わす会話。

そして、あまりにも純粋で真っすぐなその瞳。

 

簡単に手折っていい娘ではない・・・。

けれど、彼女の温もりが欲しい・・・。

 

すっかり警戒を解いたレイは満面の笑みを浮かべるとユーリを腕の中に囲うと寝台に倒れこんだ。

 

《な、なにを!!》

《しぃっ!ここで白陽語を大声で話すわけにいかないから。》

《でもなんでこんな!》

《・・・ごめんね。ほら、僕、シークだから。シークの寝室に女人がいるってことはさ、ほら、ね?》

 

言い辛そうに苦笑いしたレイにユーリも緊張を解いて身を預け小声で囁いた。

 

《わ、わ、わかりました。でも、コウジュ様との婚礼が近いのに、私なんかが侍って大丈夫なのですか?》

《ああ、この国のシークは現在も多妻制なのに変わりない。好色な王も多かったせいか、異国からの妃も多くいた。過去には100人近い妻のいた王もいるくらいなんだ。》

《・・・そう、ですか。》

 

ユーリの顔が雲り、ぎゅうっと拳を握りしめた。

 

《この国は、戦ばかりで領地を拡大してきた。だから、まるで勲章かの様に征服した国の姫や妃を奪っては妻にしていたんだ。》

《・・・》

《・・・》

 

そこまで言うとレイは黙り込み、ユーリも蒼白な顔で黙り込んだ。

 

ふぅー。

 

大きなため息が聞こえるとともに、シークの腕がユーリに絡みつき、ギュウっと抱きしめられる。

 

《僕の・・・僕の母もその一人だ。》

 

頭上から降ってきた言葉に逃げ出そうと身体を捩ったユーリがピタリと動きを止めた。

 

《シークのお母さまが?》

《ああ。僕の母は白陽国王家の末裔だったらしい。戦乱の中身を隠し、生き延びていたのだが、外国の宴の場で踊り子として舞台に上がった際に王に見初められたそうだ。そのまま監禁するようにこの国に連れてこられて。身分がばれることはなかったそうだけどそのままハーレムに・・・そして僕を身籠った。》

《・・・》

《母は生前言っていたよ。この言葉を忘れないで欲しいって。僕で、次に伝える人がいなくなっても気にしなくていいって。貴方はハクディの王子として歩みなさいって。そう言った母がどんな思いでいたのか、僕にはもう知ることもできない。》

 

まるで他人事の様にサラッと話しているような声色。

けれど、ユーリを抱きしめる腕は微かに震え、何度もユーリの髪を指で梳く。

そんなレイの様子にユーリも心がギュウっと鷲掴みされたような気持ちになる。

 

この人は、これまでどれだけ我慢して、気が付かないフリをしてきたんだろう。

この国の王の子として生を受けたにもかかわらず、母から秘密を知らされた時、どんな衝撃がこの人を襲ったのか。

どう振る舞って生きていけばいいのか、計り知れないほど悩んだに違いない。

それなのに、そんなことは微塵も感じさせないほど飄々と、ただある事実だと言わんばかりに話す。

いや、そうすることで、感情を押し殺すことで、自分を守ってきたのかもしれない。

 

私と・・・お、なじ?

 

気が付くとユーリはレイをジィっと覗き込み、レイはそんなユーリを見つめていた。

 

どちらからともなく、顔が近づき・・・

二人は触れるようなキスをした。

見つめあったまま、角度を変え二度三度と唇を重ねる。

レイと距離を置くように身体の前でユーリ自身を抱きしめていた腕がレイの首に回されたのを合図に、二人は足りなかったものを満たすかの如く、何度も何度も貪るように唇を重ねた。

 

 

シーク✖️ユーリ  

☆江口様より頂き物☆ 

 

**********

 

 

 

つづく 


『兎の山と狼の里』管理人 江口様より

 

素敵な絵をいただいてしまいました!!(●´ω`●)

 

あんまりにも素敵なのでみんなで愛でましょう!!

 

ありがとうございます!江口さん(#^^#) 

 

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シークの花嫁③

ということで・・・


続きです。

放置しすぎてすみません・・・

もう、ゴールデンウイーク完結目指すことにします←





【ハーレクインパロ】

【陛下がシーク】

【よって捏造甚だしい】 

 

 

 



《王様も大変なのね。》

 

ユーリは夜、こっそりと抜け出した宮殿の庭で歩きながらそっと呟いた。

彼の経歴を聞いただけで、どれだけの強い意志と精神を兼ね備えた王かということはわかる。何よりも国の再興が急務だと言わんばかりに、浮いた噂一つない清廉潔白なシーク。王というだけで次から次へと女性を宛がわれるのは・・・

 

《私だったら、めんどくさくて怒るか、逃げるわね。》

 

またしても小声で呟き、溜息をつきながら笑った瞬間。

 

《夕鈴!》

 

遠い昔に聞き覚えのある声に呼ばれ、ユーリが振り向く。

 

《っ!!几鍔!なぜここに?》

《なんでってお前の方こそなんでだろ?》

《私は、シークの義弟のエイフー様の家庭教師やってるの。今回帰国中も勉強に遅れないように是非ついてきていつも通り教えて欲しいって言われて・・・。》

 

俯きながら言いよどんだユーリの頭を几鍔はくしゃくしゃっと手で撫でる。

 

《・・・よく来たな。》

《・・・ええ。そう、ね。で!几鍔は何で?》

《俺は今回のシークの成婚式で配られるスイーツの監修のために呼ばれたんだ。》

《あんたが?まっさか~、誰の推薦よ?》

《おうっ!俺の活躍知らないのか?》

《いや、知ってるけど。》

 

ユーリが揶揄うように腕を組んで目を細めて言うと、几鍔は真顔になった。

 

《わかってるよ。お前の方が舌は確かだからな。ここで会ったのも何かの縁だ。ちょうど味が決められないものがあってよ。ちょっと見てくんねぇか?》

 

几鍔は世界的にも有名なショコラティエだったユーリの父ケイの最後の弟子だった。

年もそう変わらない二人は並んでケイの教えを学んだ。

几鍔はメキメキと頭角を現し、初めてケイがのれん分けの許可を与えたとても優秀なショコラティエだった。

幼いころから厨房に出入りしていたユーリは父ケイから、神の舌を持つ娘、と呼ばれとても可愛がられていた。

 

あの日までは――――。

 

《夕鈴?・・・やっぱりまだ・・・》

 

目を細めて笑う几鍔が余りにも悲しそうで、ユーリの胸を締め付けた。

久しぶりに会った懐かしい友人にそんな悲しい顔をさせたいわけではない。

ユーリは慌てて大きく息を吸い込むと腰に手を当て、胸を張って大声で叫んだ。

 

《しょうがない!昔なじみに頼まれちゃね?》

 

ユーリがいたずらっ子の様に微笑んで几鍔とハイタッチした時だった。

 

「何者だ!」

 

驚いてユーリが振り返ると冷たい剣先がユーリの首筋にピタリと当てられた。

 

『な、なにを・・・』

「それはフランス語か?『貴様は何者だ!何故こんな深夜にこの宮殿で男と話しているのだ!』」

『わ、私は・・・』

『ユーリ、俺が話す。』

 

几鍔はユーリに剣先を突き付け睨み続ける男との間に入り込むと、そっと剣を押しのけた。

 

『キガーク殿?貴殿はこの国の規律をしっかりと理解している、と私は考えていたのだが。』

『・・・理解はしている。しかし、旧友に久しぶりに会ったのでつい昔に戻って話しかけてしまった。すまなかった。』

 

ユーリは青ざめた。

ユーリが滞在していた場所は、宮殿でも女性専用の、いわゆるハーレム、と言われる場所だった。

基本的にハーレムにいる女性は、例え一時の滞在であろうともシークの所有物扱いだ。

観光の為ですら、シークの許可なく外出することを許されてはいない。

滞在中は一人で行動することはなく、一人で夜出歩くことも禁じられている。

ましてや男性と二人きりで話すなど論外だ。

久しぶりに会った友に会えた喜びで、すっかりこの国の風習を忘れ話し込んでしまっていた。

 

几鍔は謝ったが、相手の方は尚も剣の切っ先をこちらへ向けたまま睨みつけている。

昔やんちゃをして小さな切り傷や擦り傷など日常茶飯事だった几鍔が誠心誠意謝っているのになぜいつまでも剣先を向けられなければいけないのか。

最初は刃物を突き付けられ震えていたユーリは、今や別の事で身体を震わせ始めていた。

 

『~~~~~っっ!!もう我慢できない!!』

『ユーリ!落ち着けって!』

 

ユーリを後ろ手に庇っていた几鍔を押しのけ、ユーリは几鍔と男の間に入り込んだ。

 

『うっさい几鍔!!私たちは何も悪いことしてないわ!ハーレムに滞在してはいるけど私はシークの物じゃないし、シークのこともよく知らないし、そんなことどうだっていいのよ!』

「もう少しゆっくり話せ!大体女のくせになんでそんな大声で喚き散らして睨み返すんだ!女性というのはもっとおとなしく嫋やかで儚いものだ!!」

『うるさいわね!私は強くて逞しく生きると誓っているのよ!!この国では天然記念物に指定されるくらいの女ねっ!きっと!』

 

ユーリが頭のてっぺんから湯気を出しながら一気に言い切り、鼻息も荒くふんっと腰に手を当てふんぞり返ったのを見て、先程まで威圧的に剣を向けていた男は目をまん丸くして口をあんぐりと開けたまま固まった。

 

「ホーエン、そこまでだ。」

 

そんな緊迫したところに、低く良く通る声が響き渡った。

その瞬間、ユーリは自分の意思とは関係なく、脚から崩れ落ちた。

力が入らず、危ない!そう思い目をギュッとつぶった瞬間、ふわっと重力が無くなり、温かいものに包まれた。

 

「ホーエン、私の客人に何用だ?」

 

先程まで高圧的な態度だったホーエンと呼ばれた男は剣を鞘に納めると膝をつき頭を垂れた。

 

「シーク。こちらの女性はこのような夜分にもかかわらず、慣習を犯し、男と逢瀬をしておりました。」

『ちがっ!友人と偶然再会したから話をしていただけだわ!!』

「それだけではありません!彼らは私には分からない言葉で話していました。何か悪だくみの相談だったやも知れません。もしや成婚式の食事に何か混入するのかもと・・・」

『はぁ?ばっかじゃないの?そんなことして誰が喜ぶっていうのよ!!少なくとも、私もキガークもそんなことするような人間じゃないわ!ふざけないで!!やるなら正面からやるわよ!!っんんっ!』

 

ユーリがまだ言い足りないと叫ぼうとすると、頭を抑えられ、逞しい胸に押し付けられた。

その状況に一気に怒りが霧散し正気に戻ったユーリは青ざめた。

余りに頭にきてすっかり忘れていたが、ユーリは足元から崩れ落ち地面にぶつかる寸前、影から現れた男に抱き上げられていた。

今、ユーリを抱きかかえ、頭を自身の胸に押さえつけている男。

威圧的な態度で剣を向けてきた男が目の前に傅き、この男のことを何と呼んだ?

 

――――シーク?この人がさっきのシークなの?

 

恐ろしい考えに至ったユーリはもがいてなんとか腕の中から逃げようとするも、何故かガッチリと固定され降りることすら許されない。

それでもこの人が本当にシークだとしたら、これはまずいことであることだけは確かで、ユーリは必死にもがいた。

 

なんとしてもこの腕から逃れなければ。

何故だか本能がそう叫んでいた。

それなのに・・・

 

《お願いだから、静かにしておくれ。》

 

思いがけず耳元に、そっと吐息と共に呟かれた言葉でユーリは脱力してしまった。

 

「彼女は私の客人だ。そして、キガークは素晴らしい職人だ。彼以上の者を提供できる人間は世界中どこを探してもいない。大体、キガークの作ったスイーツを出すと言っているのはコウジュだとお前も知っているだろう。」

「ですが、彼らは!」

「ホーエン?」

 

シークが一言名を呼ぶと、彼は途端青ざめ震えだし顔を伏せた。

これ以上はないぞと言わんばかりの冷たい声が、まだ熱を持ったままの夜風をも凍らせる。

 

「わかったら下がれ。」

「シーク!」

「下がれ!!」

 

顔を胸に押し付けられたままだから見ることは出来ない。出来ないけれどもその冷たく威厳のある声色、身体から溢れる怒気がダイレクトに抱かれたままのユーリに伝わってきてユーリは身体を震わせた。

 

「ホーエン?」

「・・・御意。」

 

悔しさをにじませた声で、ホーエンと呼ばれる男が衣擦れの音と共に立ち上がると、足音が遠ざかっていくのが分かり、ユーリはほぅっと息を吐いた。

息を吐いたとはいえ、未だシークの腕に囚われの身であることを思い出し、再び震えだす。

 

《すまない、怖い思いをさせた。》

 

それはさっきまでの冷たい怒気を含んだ声ではなく。

 

《大丈夫か?》

 

抱き上げたまま、ユーリの顔を覗き込んだその人と目が合った瞬間。

 

ポンッ!

 

ユーリの顔は真っ赤に色付き、それどころか指先まで真っ赤に染まった。

シークの容貌の噂は本当だった。

ゴトラをかぶる彼は威厳に満ちた異国の世界の住人で、目が合うだけで身体が竦んだ。

しかし、ゴトラをはずしたシークはアラブの王にしては肌の色は白く、しかしながら漆黒の髪は肌とのコントラストで一層素晴らしい彫刻の様でまた違った魅力を醸し出している。

紅く燃えるような瞳は月の光を浴びて先程とは全く違う輝き。

そして優しい声とは裏腹に酷薄な笑みを浮かべる唇はどこまでも魅力的で。

自分を抱き上げる腕の逞しさ、衣越しでもわかる胸板の厚さ。

ユーリは思わず魅入ってしまった。

 

《君は・・・ハクヨーの民か?》

 

思いがけないことを言われ、思わずユーリの身体はこわばった。

 

《ああ、心配ない。几鍔、二人で話をしたい。悪いようにはしない。》

《・・・わかりました。夕鈴、またな。》

《ええ、また、ね。》

 

名残惜しそうに、几鍔は一度自分の頭をガシガシと掻いた後、くるっと振り返り、後ろ手に手を振りながら去っていった。

 

《さて、君との話だが・・・ここはまずいので移動する。掴まっていろ。》

 

そう言うとシークはユーリを抱いたまま大股でずんずんと歩き出した。

シークに抱き上げられ揺れながら、シークがさっきから今は亡きユーリとキガークの故郷の言葉であるハクヨー語をフランス語と同じかそれ以上に流暢に話していることにユーリはやっと気が付いた。

それどころか、自分はシークに対しフランス語で挨拶したにもかかわらず、ホーエンと呼ばれた男が話したアラブ語に対しフランス語で言い返してしまったのも見られている。

おそらくアラブ語も理解できることがばれてしまっただろう。

ユーリは頭に警笛が何度も鳴り響き、まずい、まずいと思いながらも、腰が抜けてどうにもならない自分に悔しくて涙が溢れた。

途中何人か家臣と思われる人とすれ違ったが、会う人会う人みんなが目を丸くして青ざめているのが目に入る。

そんなにシークはお怒りなのかと、この先の自分の行く末を想像しては更に涙が零れた。

その間にもシークは無言でずんずんと歩き続け、扉をばんっと大きく響かせて部屋に入ると、寝台にユーリを投げた。




***************


つづく




シークの花嫁②

バレンタイン企画とか言っといて、ちっとも更新できずすみません!

取り敢えずこっちから更新します!

リレーは頭では仕上がっているのであとは文字におこすのみ!!

 

狼陛下とハーレクインがお好きな紳士淑女の皆さまはお進みくださいませ。 

 

【ハーレクインパロ】

【陛下がシーク】

【よって捏造甚だしい】 

 

 

 

****************

 

 

 

 

晩餐会の席でユーリは一人唸っていた。

来る前に、郷に入れば郷に従えよ、とエイフー様の母君であるランヨー様から言われ、この国の衣装を数点、出張費みたいなものと思ってくれればいいから、と頂いてた。

上質なシルクに金糸で繊細な刺繍が施されているそれは、正式な場で身に着けても遜色のないものだと聞いていた。

だから身に着けて来たというのに・・・。

 

『ユーリ、この国の衣装がとても似合うね。これは、僕が選んだんだよ。』

『ああ、貴女には若草色がとても映えて素敵よ。少し嫉妬しちゃうくらい似合うわ。』

 

二人は少し目を瞠った後、嬉しそうに言ってくれた。

なのに・・・。

 

二人と連れ立って、シークにご挨拶に行ったら、シークは大きくため息をついた後、地を這うような声でこう言ったのだった。

 

「コウジュの前でこの女を私に宛がうのが目的か?」

 

薄絹で顔を隠していた私にもわかるほど、エイフー様とランヨー様の顔が青ざめる。

私の手を引いてくれていたエイフー様の手がカタカタと震えだし、指先が急に冷たくなった。

この男はなんていうことを言うのだろう。

 

――――シークだか王だかなんだか知らないけれど、腹違いとはいえこんなに自分を慕ってくれる弟に対して言う言葉じゃない。

――――大体、私にも失礼ってものだわ!

 

悔しくてユーリがぎゅうっとエイフーと繋いだ手を握りしめると、エイフーがにこっと笑って頭を垂れた。

 

「兄上、そんなつもりは毛頭御座いません。母上はユーリを着飾らせるのが趣味なのです。パリでも何かとユーリを着飾らせては楽しんでおります。他意は御座いません。」

「其は誠か?」

「はい。ユーリを宛がうなどとんでもございません。ユーリは優秀な家庭教師であり、更には家政婦でもあります。私と母上にとってなくてはならない存在の彼女を宛がうなど・・・考えるはずも御座いません。」

 

エイフーは青ざめながらも視線を逸らすことなく真っすぐに言い切った。

シークの冷たい空気に晒され、その場にいる誰一人として微動だに出来ず凍り付く。

短くも長い沈黙の時間が流れた。

 

 

 

 

 

「わかった。疑って悪かったな。」

「いえ、兄上の御立場は重々承知しております。この時期に異国の女人と卓を共にすることをお許しいただいたにも関わらず、こちらの配慮が足りず申し訳ございません。」

「・・・もうよい。それよりも・・・」

 

シークがスッと手を伸ばすと、その手のひらに控えめに白く小さな手が乗せられ誘われシークの側に立つ。

 

「こちらが此度婚儀を挙げるコウジュだ。コウジュ、彼が私の義弟エイフーだ。」

「エイフー様、ランヨー様、初めまして、コウジュに御座います。」

「コウジュ様、此度、ご結婚おめでとうございます。以後お見知りおきください。」

 

エイフーはそう遠くない未来の義姉に最上級の言葉で礼を尽くした挨拶をし、ランヨーもそれに合わせて笑顔で歓迎の意を表す。

可愛らしい声で優雅に裾をたなびかせるその姿はまるで無垢な女神の様で、ユーリは一瞬にして魅入られぼーっとしていた。

 

「すみませんが、後ろの方は・・・」

「あ!ユーリ!ユーリっ!!」

 

ユーリがポウッとしているの気が付いたエイフーがユーリの裾を引っ張るも、コウジュにすっかり魅せられてしまったユーリは気が付かない。

あたふたするエイフーとポウッとして口を半開きにしているユーリ・・・。

 

「・・・」

「ユーリ!ユーリ!!ちょっと!!」

 

何度目かにとうとう声を張り上げたエイフーにやっと正気に戻ったユーリは失態を犯してしまった恐怖と恥ずかしさで涙目になった。

 

『も、申し訳ございません!わ、私はエイフー様の家庭教師でユーリと申します。本日はこの席にお招きいただき、大変嬉しく思っております。あの、不躾に見つめてしまい申し訳ございませんでした!』

 

優雅さのゆの字もないほどの勢いで挨拶をしたユーリに今度はコウジュが固まった。

居たたまれなくなったユーリがここから離れようとした時・・・。

 

『ユーリ?あの、できたら私の話し相手になっては頂けないかしら?』

『え?』

『フランス語ももっと学びたいし、私、外国のお友達っていないんですの。エイフー様が羨ましいですわ。是非お願いしたいんですの。』

『や、あの、でも・・・』

『お願いいたしますわ!!』

 

美しいビーナスに懇願されるように言われて断れる人がいたら見てみたい・・・。

 

『わ、私で良ければ・・・』

 

あっけなく陥落してしまったユーリであった。

そして気が付けば末席であったはずのユーリの席はシークの隣であるコウジュの隣に設えられた。

二人は初対面とは思えないほど話が弾み、表向きはとても楽しい時間を過ごした。

 

けれど・・・

 

刺すような視線に顔を上げると、シークと視線がぶつかる。

怖くて顔を直視することはとてもではないが適わない。

それでも宝石の様に輝く燃えるような紅い瞳が、まるで餌を狙い定めたようにジィっと睨みつけてくるのだ。

なるべくコウジュの方を向き気にしないように努めてはいたものの、正直味もよく分からないほどだった。

こんなことがなければもっとおいしく感じられただろう豪勢な食事に悲しくなる。

いったい自分が何をしたからこうも睨みつけられなければならないのか。

周りも気が付いているだろうに、俯きがちにシークの方を見ては視線を逸らし、さぁっと青ざめ、こちらを見ては、気の毒そうな顔をする。

さっきエイフー様に言った言葉に対し謝罪のようなことを言っていたけれど、これは明らかに疑っているとしか思えない。

腹は立つが、初対面から数時間の人間にユーリの人間性を見たらわかるだろうなどと叫んだところで仕方がないことも理解はしていた。

 

ユーリはコウジュに気が付かれないようにそっと息を吐いた。

 

――――立場はわかるけどやっぱりめんどくさいわ。

 

そう思いながら。

  

 

 

 

****************** 

 

 

どうしてもパロでもパラレルでも紅珠が当て馬になってしまうんですが。

たまにはオリキャラとかがいいのかしら?

なるべくオリキャラは作らないように心掛けてはいるのですが。

 

 

シークの花嫁 ①

 

こんばんは! 

転載終わってないのになんで新しいの?という声が聞こえてきますが・・・

えへっ!←

 

実はまんまるこはハーレ○インが大好きなんです。

中でも好物はシークもの!!( *´艸`)

考えたら、私は狼陛下のシークパロは読んだことがない!と思いまして。

同じくハーレ○イン友のN様に相談したところ、書いてしまえ!という話になりまして・・・

どうせならばバレンタインからホワイトデーまでで完結を目指してみたら?と提案されたのでうっかり乗っかりました←

 

ということで←? 

 

バレンタイン企画!

 

陛下がシークだったら!!

 

をお送りします! 

捏造しまくり、年齢操作しまくりですが、安定のハッピーエンド目指して!

 

もしよろしければお祭りに乗っかっていただけたら嬉しいです(#^^#)

 

 

【シークパロ】

【年齢操作有】陛下30歳 夕鈴26歳 エイフー12歳 あとは察してください←

【多国語】鍵かっこの違いで言語が変わります。

 

 

 

*******************

 

 

肌にねっとりと纏わりつく空気。

眩しすぎるほどの陽射し。

 

――――ああ、本当に来ちゃった。

 

いつもより露出が少なくゆったりしたデザインの服に身を包み。

頭からは薄衣を被り口元までゆったりと覆い隠す。

 

――――バレなければいいんだけど。

 

『ユーリ!謁見の時間が!遅れると兄に失礼になりますので急ぎましょう。』

 

前を行く少年が少し早めに歩き出したのを見て、ユーリも急いでついていく。

一生来ることはないと思っていた、いや、誓っていた土地を踏んだことへの恐怖に囚われそうになりながら、ユーリは少年と、その母と共に謁見の間と呼ばれる場所へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「兄上、只今戻りました。エイフーに御座います。拝顔叶いまして、大変嬉しく存じます。」

 

少年は先程までの快活な様は息をひそめ、頭を垂れ粛々と口上を述べる。

そして、その少年エイフーが頭を垂れたその先に、一段上がった場所で威風堂々と座る男がいた。

 

「久しぶりだな。元気そうで何より。あちらの暮らしはどうだ。」

「はい、こちらとはまた違った環境、考え方、学び方に日々戸惑っておりますが、こちらにいるユーリのお陰で難なく過ごせております。」

 

年齢よりも少し幼い雰囲気が残るエイフーが述べる大人びた言葉にユーリの頬が緩む。

 

『ユーリ。』

『フランス語で失礼いたします。エイフー様の家庭教師兼家政婦をさせていただいておりますテイ ユーリと申します。』

『義弟をより良く導いてくれるよう期待する。』

『っ!・・・期待に応えられますよう精進いたします。』

 

耳に心地よい流暢なフランス語で返事を返され、ユーリは一瞬言葉に詰まり、顔を上げそうになった。

義弟の家庭教師で謁見が許されているとはいえ、外国人であるはずの自分がおいそれと直接顔を見ることなど許される立場ではないことは重々承知しているのに。

シークの紡ぐフランス語の声色に、何故かぞくぞくと身体の奥から何かが沸き上がる。

 

「兄上。いえ、シーク。此度、ご婚礼おめでとうございます。婚儀に何か私の手が、もしも必要であれば何なりとお申し付けください。」

「大事ない。お義母上の父君がよく纏めてくれておる。」

「それはようございました。」

「今宵、久しぶりに共に卓を囲もう。コウジュを紹介しよう。」

「っ!兄上の婚約者とやっとお会いできるのですね。

「ああ、コウジュも楽しみにしているそうだ。」

「あっ、でも…」

 

敬愛する兄の婚約者に初めて会える喜びに顔を輝かせていたエイフーが気まずそうに目を伏せユーリの方を振り返る。

エイフーはとても心根の優しい少年で、雇用主と使用人という立場にしかすぎないユーリにも色々と気遣いを忘れない。

少し困ったように伺いを立てるような表情にユーリの顔にも自然に笑みが浮かぶ。

 

『エイフー様、私のことはお気になさらないでください。折角の帰ってきたのですもの。』

『ユーリ…ありがとう。じゃあ遠慮なく。』

 

ユーリの言葉に再び満面に喜びを表すエイフーは実年齢よりもかなり幼く見えて、ユーリは置いてきた弟を思い出し、ふと瞳を伏せた。

何よりも、誰よりも大切な弟。

もう既に成人し、自分の望む道をまっすぐに進んでいる自慢の弟。

あの時、今のエイフー様よりもまだ幼かった弟には事実を曲解して伝えたままだ。

この国へ来ることになった時も、通常の範囲で心配をかけてしまってはいたが、ユーリの深層に沈めた感情は気取らせずに済んだと思う。

深い闇に思考を奪われそうになった時だった。

 

『エイフーが望むならば、末席で良ければ席を設けてやっても構わぬが。』

 

耳を疑うような提案が頭上から降ってきた。

できるだけこの国の王家やその家臣とは関わりは持ちたくない。持ってはいけない。

それは即ち危険と隣り合わせということだ。

この声はとても魅力的で、決して甘言を言われているわけでもないのに頬が熱くなっているのは間違いないが。

 

――――断ろう。

 

『ありが・・・』

『流石兄上。お心遣い、有難うございます!』

 

なるべく丁寧に、抑揚を込めないで断ろうとしたユーリに被せるようにエイフーの声が響き渡る。

 

『ユーリ!ここの料理はとても美味しいんだ!貴女にもいつか食べてもらいたかった。貴女は料理がとても上手だから、きっと楽しく美味しい晩餐になるよ!』

 

エイフーは今まで見たどの笑顔よりも嬉しそうで。

あまり会えないけれど、兄のことをとても尊敬していて大好きなんだと。

仲良くなりたいんだと不安げな瞳で語っていたエイフーを思い出す。

彼の為を思えば兄であるシークの誘いともいえる提案を受けないという選択肢はない。

それに、これ以上拒否するとかえって目立つかもしれない。

 

ユーリはできるだけ優雅にハクディ流の王族に対する挨拶をすると、にっこり笑って了承の意を表した。

 

 

 

 

 

謁見の相手はこの国、アラブの小国アル・ケンローディア・ハクディの新たなる王、シーク レイ、その人だった。

長く内戦で苦しむアル・ケンローディア・ハクディを圧倒的な武力でもって一つに治めたかと思いきや、今度は失われた数十年を飛ぶ鳥を落とす勢いで取り戻すかの如く、次から次へと類を見ない、けれども素晴らしい政策を打ち出し、短期間の間に国を復興させた賢王。

フランスで暮らすユーリの耳にも入るほどのカリスマ性。

一目見た女性はみんな彼に恋をすると言われるほどの美貌の持ち主とも噂される。

が、未だ燻る内線の残党らへの霍乱のため、その容姿は公表されていない。

謁見を許されるのはごく身近な身内および国の重鎮に限られる。

なのに何故容姿についての噂だけが独り歩きしているのか。

それは、あわよくば王の御手付きにでもなって世継ぎを娘に産ませよう、と画策する重鎮らによって催される視察、交流会という名の場で娘たちを強制的に紹介され続けているから、というのが理由であった。

そんなことが幾度となく続いていたある日、長い動乱を治めた彼は、国の安寧のため、幼いころからの許嫁とやっと結婚式を挙げ、世継ぎを儲ける気になった、という理由で全ての女性との接触を断ったという。

 

――――なのに、義弟のために単なる家庭教師と卓を共に囲もうなんて、優しい人なのね。

――――所詮、ハクディの王族だけど。

 

などとちょっとだけ、シークに対する恐怖心が解けたのだが、数刻後、それはすっかり間違いだと再認識し、憤慨する羽目になるのだった。

 

 

 

 

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はいっ!

いかがでしたか?

ハーレ○インらしく書けてるかしら?←そこ?