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(SS)大切なあなた②

こんばんは!

続きを持ってまいりました!

今日はもう寝ます←

パソコンで書いたのをここにペーストしてるんですが、勝手が違うらしく、書式とかが統一できません・・・

すみません(>_<)

それでもよろしければお付き合いくださいませ!

 

 

 

 

****************

 

 

 

「じゃあ、姉さん行ってくるね。」

「青慎、勉強頑張るのよ!姉さんも頑張るからね!!また帰ってくるから。」

「うん、ありがとう。姉さんも身体大事にしてよ。」

「ええ!私は丈夫だけが取り柄だもの!気にしないの!じゃ、もう遅刻するわよ!夕餉は作っておくからね。行ってらっしゃい!」

 

青慎を学問所へ見送ってから青慎の為に夕餉を作った。と言っても、気が付くとほとんどが陛下の好物ばかりだったけれど。

出来上がると急いで包んで家を出る。

 

____約束だもの。早い方がいいわよ、ね?

 

言い訳めいたことを考えたけど、実際王宮での暮らしが長くなってきていて、陛下の気配がないのを寂しく感じていた。

 

____バイトが終わったら、私、大丈夫かしら?

 

先のことを考えてちょっと悲しくなってしまう。でも今はそれよりも約束だ。

陛下が待っていてくれるのならば急いで帰りたい。

王宮への道を急いで歩いた。

 

 

「え?どうされたんですか?」

 

老師のところで妃衣装に着替えて回廊に出ると侍女さんたちが今か今かと待ち受けていたようだった。

 

「お妃様、お待ちいたしておりました。さ、さ、お急ぎくださいませ。時間があまりありませんので。」

 

どういうことだろう。確か陛下は日没までにと言ってたはずだ。まだ日没までには時間があるし、予定よりも早く帰ってきたのに。

 

____何か予定が入っていたかしら?

 

考えてみるものの何も思い出せず、取り敢えず侍女さんたちの成すがままに任せた。

 

部屋に戻ると見たことのない衣装に宝飾品が並んでいた。

 

「こ、これは・・・?」

 

なんだか心もとないほど胸元も開いてるし、脚も透けて見えそうな衣装だ。

 

「お妃様、陛下より本日の夕餉はお妃様と共に召し上がるとお聞きいたしました。その時にこれを、と陛下から仰せつかっております。」

「へ、陛下が・・・。あの、ですが、少し派手ではないでしょうか?」

「いいえ!!お妃様の為に陛下が内緒で新調したものだと聞き及んでおります。御寵愛の表れですわ。本当に私どもも感激いたしました。」

 

侍女さんたちは目をキラキラさせて胸の前で手を組んで頬を赤らめて力説する。

 

「あ、あの、その、・・・あ、ありがとうございます。で、ではお手伝いをお願いできますか?」

 

そう言うと侍女さんたちは満面の笑みを浮かべ、嬉々として私を飾りだしたのだった。

 

 

 

 

 

「妃よ、今戻った。」

「へ、陛下、お帰りなさいませ。」

「ふっ、昨日は君の笑顔が見られず此処はまるで極寒の地の様であった。やはり君がいるだけで暖かく感じるな。」

「あ、ありがとうございます。わ、私も寂しゅうございました。」

「して、妃よ。」

 

じっと陛下が見つめてきた。居たたまれないわ。きっと似合ってないもの。

 

「とても・・・美しいな。気に入ってくれたか?」

「あの、その、とても綺麗で。あの、似合ってますでしょうか?慣れなくて・・・。」

「とても似合っている。」

 

そう言うと美しく笑い手を差し伸べてきた。

 

「では、共に夕餉を。」

 

陛下の手に自分の手を重ねると急に視界が揺れた。

気が付くと陛下の腕の中に抱き上げられている。

 

「へ、陛下、あの何を・・・。」

「いや、少し移動するのでな。妃も帰ったばかりで疲れているだろうから労わらなければ。」

「いえ、あの陛下もお仕事でお疲れでしょう?私は大丈夫なので降ろしてくださいませ。」

 

侍女さんたちの手前暴れることができないのをわかっていて楽しそうに抱きしめてくる。

 

「ふむ。だがしかし妃よ。こうしている方が温かい。離れていた間の分も温めて欲しいのだが。」

 

美しい笑顔に寂しさを湛えた瞳で告げられては太刀打ちできない。

そんな風に色気を撒き散らさないでほしい。

 

脱力した私は結局陛下に抱きしめられたまま移動することになった。

 

移動した先は回廊の少し張り出した所で。満天の星空が見えていた。

陛下は私を降ろすと侍女さんたちを早々に下げた。

 

「ね、ゆーりん、寒くない?大丈夫?」

「はい、大丈夫です。火鉢もありますし、暖かいですよ。それよりも、これはどうしたのですか?」

 

いつもはこの場所にはない卓にはお皿が並べられていて、お酒や飲み物まで用意されている。ただの星見ではないのかしら?

 

「あー、うん。今日ね、新月で月がないから星が綺麗でしょう?周が、今夜は流れ星が多いって教えてくれたから、一緒に見たいなと思って。」

「それで早く帰るように仰ったのですね。ありがとうございます!!絶対流れ星を見つけて願い事をしましょうね。」

 

そう言うと陛下はキョトンとした。

 

「あー、そっか、願い事かあ。したことなかったな。」

「じゃあ、今日、初めてですね?楽しみですね。では、早速夕餉の準備をしますね。早く食べてのんびり星を眺めましょう!」

 

そう言ってお土産に持ってきた食べ物を卓いっぱいに並べた。

 

「わあ、すごいね、ゆーりん。がんばったね~。」

 

にこにこと子犬の笑顔を向けてくれる。この笑顔が見たくて頑張ったのよね。

 

「はい!こちらではあまり作る機会がないので、陛下が以前美味しいと言ってくださったもの中心に作ってきました!どうぞ。」

 

そうして二人きりの星見の宴が始まった。

 

陛下は何度も「美味しいね、美味しいね。」と言いながら、結構な量を全て平らげてしまった。本当に作り甲斐のある方なのだ。ちゃんと褒めてくれる、それが嬉しくてまた作ってしまう。

料理をする妃なんて駄目なんだろうけど、この笑顔がもらえるなら、後ろ指さされてもいいと思う。

 

料理も全て食べ終わって、食器は下げてもらった。

 

二人で長椅子に座って空を見上げ、下町での他愛のない話をしながら流れ星を待った。

 

「あ!そうでした!陛下に、もう一つお土産があるんでした。」

 

懐から包みを取り出し一つを陛下に差し出した。

 

「え?どうしたの?お土産ならさっき食べたけど。」

「いえ、これは、その、食べ物ではなくてですね。あのいつもお世話になっているのでお礼にと思いまして。」

「へ?お礼?なんで・・・?」

「あ、いや、その~、珍しかったので。あ、私には!ですよ。陛下は御存じなのかもしれませんが。あの・・・。」

 

陛下が包みを見つめたまま固まっている。もしかして失礼だったかしら。私ったらただの臨時花嫁なのに陛下に贈り物なんて・・・。顔から血の気が引いてくる。

 

「あ、違う!ゆーりん、嫌とかじゃないから。」

「いえ、あのすみませんでした。私、出過ぎたことを。ただの庶民が陛下にお礼とはいえども品を差し上げるなんてずーずーしいにも程がありますよね。すみませんでした。」

 

差し出した手をひっこめようとしたら陛下の手がすっと伸びてきて引き寄せられ膝の上に誘われた。

 

「へ?あの、その・・・へ、陛下?」

「いや、夕鈴、ごめん。いやじゃないよ。ただびっくりしたんだ。」

「・・・?」

「今日、さ。実はね、僕の誕生日なんだ。」

「え?え~~~!それならそうと、って言うか誕生日に庶民料理ってどうなんですか?すみません、もう何から何まで。私、何も知らなくて。」

「うん、誰も知らないと思うよ。公表してないし。めんどくさいよ。」

「めんどくさいって、陛下。本当なら民も総出でお祝いするところではないのですか?」

「うーん、それがめんどくさい。即位してから何もしてないし。」

 

そういえば陛下の代になって王の誕生日のお祝いのお祭りはなかったっけ。先代の時は町に活気はなかったけれど、王の誕生日には彼方此方で特売があったりして張り切ったものだったことを思い出す。

 

「じゃあ、なおさら、こんなもの差し上げるわけにはいきません!見なかったことにしてください!!」

 

陛下の膝の上で暴れて隠そうとした私の腕をつかみ包みを奪い取ると蕩ける様な笑顔で笑った。

 

「ううん、夕鈴、嬉しいよ。君が僕のことを想って選んでくれたのだろう?離れていても私のことを考えてくれていたとは、感無量とはこのことだな。」

「~~~~~今演技は要りまっせ~ん!!!」

 

ぎゅーっと抱きしめてくるのを少し追いやる。心臓に悪いからやめて欲しい。

 

「はは、そうだね~。ごめん、ごめん。」

 

そう言いながら包みを開ける。中からコロンと根付が出てきた。

 

「これ・・・根付?」

「は、はい。あの、剣の柄に付けても大丈夫かと思いまして。その、王宮では無理だと思うのですが、何処かお忍びの時にでも付けていただけたらと・・・。」

 

言いながら顔がだんだん熱くなるのを感じる。取り敢えず、さっさと説明して、要らないなら返してもらおう。

 

「それで、その琥珀が付いていたので。あの、陛下と同じハクだから、王宮では特別な石だと李順さんから聞いていたので。それに、鈴が、あの特別な硝子でできているそうで初めて見たんです!」

 

そう言われて根付を見遣れば確かに珍しい鈴だった。でもそれだけじゃない。夕鈴、君ってホント恥ずかしがりだよね。

 

「確かに珍しい鈴だね。で、ゆーりん、それだけ?」

「いや、あの、その~~~//////。」

 

どうしても彼女から聞きたくて甘えた声を出してみる。

 

「・・・。」

「~~~あの!一緒についてる細工、兎なんです!!陛下、私の事兎みたいって仰るからですね、その~~~/////。」

 

ふふ、可愛いな。耳まで真っ赤だ。

 

「そっか。ありがとう!大事にするね。いつも夕鈴と一緒みたいで僕嬉しいよ。で、もう一つの包みは何が入ってるの?」

「あ、こ、これはですね、簪なんです。本当はこっちがメインで。そっちはオマケなんです。そんなもの陛下の御誕生日になんて、本当に申し訳なくて・・・。」

 

目をウルウルさせてお嫁さんが言う。こんなに可愛いなんてずるいよ。

 

「いや、大事にするよ。夕鈴の気持ちが嬉しいんだ。ね?気にしないで。そっちも見せてよ。」

 

そう言うと包みをおずおずと開けて中身を取り出し見せてくれた。

 

「あ、れ?これ・・・?」

「はい、私のは陛下の即位記念で作られたものなんだそうです。それで、いつもは贅沢品は買わないのですが、つい・・・/////。」

 

装飾品を贅沢品だと言う君がつい買ってしまった簪。

それが僕に纏わるものであったことがこんなに嬉しいとは。

どこまで君に溺れているのやら。そんな自分に苦笑してしまう。

 

「では、早速。」

 

君の手から簪を抜き取るとすっと髪に挿した。

 

「うん、とっても似合ってるよ。僕の物って印みたいだね?」

 

夕鈴自らが僕を思い出す品を選んでくれたことが嬉しい。今日、それがもたらされたことが本当に奇跡の様で。

 

「あ、ありがとうございます。あの、そんなに見つめないでください。恥ずかしいです!」

「ふふ、嬉しいんだ。せっかく夕鈴を愛でようと着飾らせたのだからいいだろう?」

 

そう言うと更に真っ赤になって俯いてしまった。

 

「あの、だからこの格好なんですか?」

「うん、綺麗な夕鈴を見て楽しもうと思って。本当は誕生日なんて言ったら驚くだろうから内緒にしておくつもりだったんだけどね。夕鈴があんまり可愛いプレゼントをくれるから、つい話しちゃったよ。」

 

話しながら自分の刀剣の柄に根付を付ける。

 

「うん、ほら、いい音だね。御揃いだ。」

「へ、陛下!陛下には似合わないです。あの、李翔さんの姿の時にでもと・・・」

「え~、ゆーりん酷いな。僕には君を思い出す術をくれないの?」

「だって、李順さんに・・・。」

「じゃあ李順が何も言わなきゃいいんだろ?それまで付けておく。ね?そうしよう。鈴の音が鳴るたびに夕鈴を思い出せるね。これで政務も頑張れるよ。ね?」

「~~~はい、わかりました。付けてくださって、とても嬉しいです。」

 

頬を染めてふわっと笑う君をまた腕の中にぎゅっと囲い込んだ。

 

「~~~////。」

「あ!ほら、夕鈴!流れ星だよ!!」

 

腕の中の兎が逃げ出さない様に話を逸らす。

 

「あ!本当ですね!早く願い事をしなくちゃ。あ!また流れました!」

 

二人で寄り添って夜空を見つめる。願うべくは。

 

 

 

『ずっと君が傍で笑っていてくれますように。』

 

 

『ずっとあなたが幸せでいられますように。』

 

 

 

『大切な貴方(貴女)』

 

 

 


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(SS)大切なあなた①

おはようございます!

昨日は雨が降って冷房がよく聞いたこちらの気候も今日は晴れ・・・

晴れると人の出入りの多いうちの会社の冷房はちっとも効きません。

冷房の中汗かくってどういう意味だ?

さて、今日も某国より転載になります。

もしよろしければお暇つぶしにでもどうぞ。

 

 

【臨時花嫁】

 

*************

 

 

 

 

政務が終わって夕鈴の部屋を訪れると卓に座って真剣に何かを読みふける君を見つけた。

そっと手を上げて侍女を下げ、ゆっくりと後ろから近づいて抱きしめる。

 

「わきゃ!!へ、陛下!び、びっくりした~。ど、どうかされましたか?」

 

驚いて目に涙をためて振り向き頬を染めて見上げてくる。

 

「うーん、ゆーりんが気が付かないから・・・」

 

思いっきりいじけた顔をして彼女を見つめかえした。きっと彼女には耳を垂らした幻の僕が見えてるんだろう。

 

「~~~~~///////

「寒いから夕鈴のお茶が飲みたくて来たのにさ。だから、先に夕鈴に暖めてもらおうかと思って。」

「それ、は、・・な、ぬ。す、すみません・・でした。で、では、お茶をお入れしますね!」

勢いよく立ち上がろうとする彼女の細い腰を攫って自分の膝の上に誘う。

「お茶は後でいいよ。それよりも寒いからもう少し夕鈴で暖まりたいな。」

 

首をかしげて頼むと君は目をグルグルさせながらも小さな声で「はい。」と答えてくれた。

了解を得たので遠慮なく彼女の肩に顔をうずめて、お腹の前で組んでいた腕に少しだけ力を込めた。彼女は少しビクッとなったけど、

 

「落ちたら困るでしょう?それに、ぴったりとくっついてた方が暖かいよ。ね?」

 

と言うと「そ、そうかもしれません。」と真っ赤になって言ったきり下を俯いてしまった。

 

「で、ゆーりん、何をそんなに真剣に読んでいたの?」

「あ、そうでした!青慎からの手紙です!!」

 

縋るような瞳で答えた。目も潤んでいるし、両手を胸の前で握りしめている。

 

「・・・何かあった?」

 

こんな彼女を見れば何を言われるのかは大体分かる。あまり聞きたくはないが僕は彼女には甘いのだ。彼女が喜ぶだろうことはしてあげたい。

 

「いえ、あの、陛下。・・・お、お休み、頂けないかと思いまして・・・。」

 

やっぱり!!嫌な予感はよく当たる。

 

「えっ!なんで?また何か問題でも起きたの?」

 

それなら付いて行こう。李順が何と言おうと心配だ。いろんな意味で。

 

「い、いえ、何も。・・・あの、あの子の、青慎の誕生日があったんです。下町にいた時は毎年贅沢はできなくても、あの子の好物を作って、夜遅くまで双六をしたりしながらおしゃべりをして、楽しく過ごしていました。だから、その、もう過ぎてしまったのですが、誕生日を祝ってやりたくて。・・・無理、でしょうか?」

 

そんな肩を震わせて目をウルウルさせる君に勝てる人っているのかな?凶悪だよね、僕のお嫁さんは。

 

「・・・2日くらいなら、大丈夫かも。」

「ほ、本当ですか!!」

 

頬を染め嬉しそうに見つめてくる。その笑顔、凶器だよ、夕鈴。

 

「明日、李順に聞いてみるよ。」

「あ、ありがとうございます!」

 

意地でも休みをあげる様にしよう。お嫁さんが笑ってくれるなら。

 

 

 

 

 

 

 

「では、陛下、行って参りますね。お休みありがとうございます。」

「うん、夕鈴が嬉しいと僕も嬉しいんだ。」

 

二人で笑いあう。こんな穏やかな時間をくれる君が愛おしい。

 

「でね、夕鈴、お願いがあるんだけど。」

「はい、お土産ですか?陛下の御好きなものも沢山こさえてきますね。」

「あー、うん、それは凄く嬉しいな。とても楽しみだ。だけど、そうじゃなくてね。」

「・・・?」

 

小首を傾げてこちらを見上げてくる。あー、帰したくないな。

 

「ねぇ、夕鈴。明日、必ず、日が落ちるまでには帰って来て欲しいんだ。」

「日が落ちるまで・・・ですか?」

「うん。・・・約束、して?」

「・・・はい、わかりました。美味しいもの沢山作ってきますね!一緒に夕餉を頂ましょう。」

握りこぶしを突き上げて「まかせてください!」と意気込む君に自然と頬も緩んでしまう。

「じゃあ、約束ね!」

「はい、約束です。」

 

そう言うと夕鈴は下町に戻って行った。

 

 

 

 

 

家に帰りながら食料を物色する。下町も久しぶりで、値切るのにも力が入る。

やっぱりここが私のいる場所なのね、と思いながら王宮のあの人を思って寂しくなった。

でも、近くに居られる間は私が出来ることはしてあげたい。あの人が少しでも癒されるのであれば、と青慎の好物とは別に陛下の好物の材料も買った。きっといつもみたいに「美味しいよ。」って言ってくれる顔を思い浮かべると心がポカポカして寒さも忘れてしまう。

偽物の妃に優しい陛下。気持ちは伝えられないけれど、想いを込めて好物を作ろう。

青慎の誕生日を祝うために休みをもらったのに、気が付いたら陛下の事ばかりを考えていた。

肝心のプレゼントを買い忘れていたのに気が付いたのは家に着いてからだ。

まだ日は高いし今日は泊まれるから、もう一度市まで行こう。今度は食料ではなくて、雑貨店が多い通りにしようと急いで家を出た。

 

露店が多く立ち並ぶ通りには所狭しと色々な行商が立ち並んでいて、特に何にするか決めていない私は彼方此方覘いては通り過ぎることを繰り返していた。

何件目かで青慎にぴったりの着物を見つけそれにすることにした。いつもは私が仕立てているけれど、後宮で妃が針仕事を、しかも男物のあまり質の良くない生地の物を仕立てるのは良くないだろうと新しい着物をあげるのは諦めていたのだ。値段も手ごろなものを見つけられて良かった。

ウキウキと帰ろうとしたその時だった。

 

____ちりん、ちりん。

 

何処かから澄んだ音色が聞こえてきた。

音のなる方を見やると綺麗な簪がしゃらんしゃらん、ちりんちりん、と風に揺られ音を奏でていた。垂れ下がった金細工と鈴の音のようだった。

 

____綺麗。

 

いつもなら気にならない装飾品なのに、何故か音が耳から離れなくて、引き寄せられるように露店に近づいた。

 

「ねえちゃん、ひとつどうだい?」

「え?私?・・・私なんて似合わないもの。」

 

そう言って離れようとすると店主は慌てて話し出した。

 

「ま、待ってよ。見ていくだけでもいいからさ。この鈴、硝子なんだよ。ちょっとやそっとじゃ割れない様に出来てんだ。まだ有名じゃないからこの値段だけど、きっとこの技術はお偉いさんの目に留まる。そしたらこの値じゃ買えなくなるってオレは思ってんだ。な?見たことねえだろ?」

 

確かに先程から硝子同士が風に吹かれてぶつかり合っているのに割れない。それに、とても心地よい音を紡いでいる。

 

「じゃあ、お言葉に甘えて、もう少し音を楽しんでいいかしら?」

しばらく音に耳を傾けながら眺めていると気になるものを見つけてしまった。

「お、ねえちゃん、それ気に入ったかい?」

「ええ、珍しいですね。簪に犬の飾り、ですか?」

「これね~、犬じゃないのよ。狼なんすよ。」

「え?狼?」

「実は狼陛下が即位された時に記念にって作ったんですがね。ほら、あの通りの噂でしょ?なかなか買い手がつかなくてね。未だに残ってるんですよ。ほら、ちゃんと王家の方の瞳が赤いってんで珠も赤でしょ?綺麗だと思うんだけどねえ。陛下がらみってんでいい珠使ってんですけどね。・・・気に入ったんなら安くしときますよ。」

 

安く・・・それは魅力的な言葉だけど、今日の目的は青慎の誕生日だ。私のはとっくに過ぎているし、自分の為に何か買うなんてことしばらくしてなかった。王宮に居れば付ける機会はないであろう装飾品、陛下がらみと言うのは頬が緩むけれどやっぱり贅沢よね。

黙り込んでいると悩んでいると思われたらしく店主が更にお得なことを言ってきた。

 

「~~~んじゃ、ほら!こっちの、御揃いの根付もあるぞ。おまけに付けようじゃねえか。

旦那にプレゼントしてやったら喜ぶぜ~。」

 

旦那って・・・。いるけど、偽物だし。

さらに黙り込んでしまう。

 

「あ?もしかして旦那にはなってないのか?そうか、じゃあこれ持って行って気持ちを伝えたらどうだ?」

「これって、これはちょっと・・・。狼は、ね。」

 

陛下に狼なんて冗談じゃないわ!私は狼の簪でいいけど。すっかり買う気になって考えている自分に笑えるけど。

 

「じゃ、じゃあ、わかった!ねえちゃんの恋が実るように、なんでも好きな根付持ってけ!これでどうだ!!!」

「ほ、本当?じゃあ買うわ。おじさんありがとう。」

 

そう言うと、実はさっきから目の端に入っていた一つの根付を指さした。

 

「ね、ねえちゃん・・・目が高すぎるよ。」

「・・・駄目、なの?」

 

そうよね。李順さんのお妃教育の賜物で宝飾品のある程度の知識がある私は陛下にあげてもまあ困らない程度の珠が使われていると思われるものを選んでいた。

ちょっと落ち込んで店主を見遣り店を後にすることにした。

 

「ちょ、ちょっと待って!男に二言はねえ。持っていきな、ねえちゃん。その代わり、もしも恋が叶ったらみんなに宣伝してくれ。口コミは侮れねえからな。」

「あ、ありがとう!!もちろんみんなに宣伝するわ。」

 

私の恋が叶うことはないけれど、貰ってくれたらそれで叶ったのと同じ、でいいわよね。きっと陛下はお優しいから身に付けはしなくても貰ってくれるはず。

 

「ねえちゃん、がんばりなよ!」

 

店主から受け取った包みを大事に懐にしまって急いで家路に着いた。

 

 

 

 

 

その夜は青慎の大好物を作って、珍しく父さんも帰ってきたから、久しぶりに一家団欒を楽しんだ。

 

*************

続く