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【リレーSS】ドS陛下と野兎妃⑧

お久しぶりです!皆さま!!

本の締め切りを前に、久しぶりにお話を持ってこれました。

忙しくて全てを放置してしまい誠に申し訳ございません!

只今絶賛リハビリ中でして・・・

萌えが降ってきたものから書くことに(#^^#)


久しぶりですが、さり奈さまとのリレーの続きです!


前回はこちら →  (さり奈様宅へ飛びます)



【原作寄り】
【陛下がドS】
【捏造いっぱい】
【いずれ甘くなる予定】




「夕鈴、あれもだ。」

「ええ!もうこれ以上は・・・」

 

冷や汗を流しながらも拒否の言葉を述べようと顔を上げると怪しく光る紅い瞳とぶつかり瞬時に喉が詰まる。

 

「・・・わ、わかりました!行ってきます・・・。」

 

夕鈴が項垂れ肩を落としトボトボと向かった先はたくさん並ぶ屋台の一つだ。

屋台の前まで来ると主人を前にはぁ~っと盛大な溜息を一つつくと口をへの字にしながら呟いた。

 

「おじさん・・・その饅頭を二個頂戴・・・」

 

何故か饅頭を前に悲壮感の漂う夕鈴に屋台の主人も怪訝な顔を隠さない。

 

「・・・姉ちゃん、買ってくれるのは嬉しいけどよ・・・。」

 

夕鈴の肩越しにチラッと視線をやると苦笑いを浮かべた。

 

「ちょっと・・・買い込みすぎやしねぇか?」

 

店主が口にした尤もな言葉は全くもって尤もすぎて夕鈴も引き攣った笑いを浮かべるしかない。

 

 

 

 

 

時刻は少し前に遡る―――

 

「さぁ、我が愛しき妃よ。一時とはいえ君の気配すら感じられないことは私にとって耐えられるものではない。私の安寧の為にも視察に付き合ってはくれぬか?」

 

夕鈴は甘言を囁きながらも射るような瞳で見つめてくる狼の腕に捕まっていた。

あんなことがあったにもかかわらず、黎翔とは距離を置き、バイトであり偽妃であると自制心を総動員して時を過ごしていた夕鈴はその熱に目を回していた。

正直夕鈴はとても混乱していた。

あれは仕事だと思おうと必死で自分に言い聞かせた。

数日たち痛みもどことは言えない場所の違和感もなくなった頃には、夢だったのかもしれないと思うほどには自分をごまかすことに成功していた。

 

―――けれど

 

「妃よ。」と甘く蕩けるような声で呼ばれるたびに―――

女官さんや侍女さんたち以上に甘く美しく向けられる微笑みに―――

政務室で執務の間にチラリと夕鈴を目の端に捕らえる視線に―――

隙あらば閉じ込めようと画策する逞しい腕に―――

庭園を散策するときに絡みついてくる指先に―――

 

ただその一瞬で。

 

黎翔はあっという間もなく、夕鈴の持て得る全ての時間を費やした労力を根こそぎ奪っていってしまうのだ。

気を抜くと黎翔の熱に浮かされ、自分へと向けられた視線を思い出して腰が砕けそうになる。

あれは媚薬のせいだと何度も自分に言い聞かせるも、その最中に黎翔への恋心に気が付いてしまった自分が不憫で仕方なかった。

陛下の為なら、と言った少し前の自分を心底恨みそうになる。

それなのにこうして腕の中に囚われ甘い声で囁かれると反射的に思い出され思考は停止してしまうのだ。

 

そして、黎翔もそれは承知していた。

その様が何とも言えず可愛らしく、つい視線を送ってみたり、愛撫を思い出すような指の絡ませ方をしては瞳に涙をいっぱい湛えて耳どころか指先まで真っ赤に染まる夕鈴を愛でては悦に浸っていた。

 

「夕鈴、もちろん君も同じ気持ちであろう?」

 

耳元で息を吹きかけるように囁かれた夕鈴は完全に意識を停止させた。

 

 

 

 

 

そして冒頭に戻る。

 

知らない間に通常仕様の町娘の装いに変わっていて、誰が着替えさせたのか想像しただけでまた違う世界に行きそうだ。

やっぱり理解の範疇を超えていて混乱の極みにいる夕鈴に、次から次へと黎翔は買い物を言いつけていた。

夕鈴がやっと理性を取り戻し思考を始めるころには、座って待つ黎翔の脇は買った食べ物でいっぱいになっていた。

 

「・・・買ってきました。もう終わりですよね?」

 

うんざりするように呟いた夕鈴を口元を歪めた笑みを浮かべながら見上げる黎翔に夕鈴の背をゾクゾクと何かが這い上がる。

 

「では・・・」

 

黎翔は満足げに呟くと夕鈴の手首を引っ張り自分の膝の上に誘った。

 

「どわっ!ちょっ、待ってください。こ、こんなところでっ・・・だ、誰かに見られたら!」

「誰に見られても構わぬ。君はいつでもどこでも私の可愛いお嫁さんだからな。」

 

意地悪そうに笑いながらぎゅうぎゅうと夕鈴に抱き付いてくる黎翔が腹立たしい。

自分の実家とは違う区とは言え、決して遠くはないこの場所は誰に見られるかわかったものではない。

それ以上に、下町の夫婦はこんな風に人目の多い往来でいちゃいちゃなんてしないものだ。

 

そこまで考えて夕鈴はハッとして俯いた。

 

―――それ以前に・・・夫婦じゃないもの。

 

「・・・あの、李翔さん?これって普通じゃないので降ろしていただけませんか?」

「うーんと、どれがいいかな?これかな?」

 

俯いたまま身体を僅かに震えさせた夕鈴に、黎翔は袋から取り出した饅頭を口元に運んだ。

 

「はい。あーん。」

「へ?」

「へ?じゃなくて、ほら、お腹すいただろう?口を開けろ。」

 

正直そんな気分ではない。

散々振り回されこき使われ、終いには思考がどん底まで落ち込んでいるのに。

能天気にドSっぷりを発揮してくる黎翔に腹が立つ。

 

「・・・いりません。」

「口を開けろ、と言っている。」

「嫌です。」

「・・・ほう?」

 

黎翔は紅い瞳を細め冷たい微笑みを夕鈴に向けると腰をガッチリと抱きしめ、夕鈴の耳を甘く噛んだ。

 

「ひぃやぁっ!・・うぐっ。うっ。」

 

思いもよらない攻撃を受け、尚且つ無理矢理に膨らんだ口の質量に夕鈴の瞳に涙が浮かぶ。

 

「君はまだ分かっていないようだな?」

 

黎翔は酷薄な笑みを浮かべたまま夕鈴を見つめた。

 

「君の反抗的な態度は私の嗜虐心を煽るだけだ。そして・・・」

 

ついっと夕鈴の目元に指を添え零れ落ちそうな涙を拭う。

 

「その表情は・・・もっとなかせたくなる。」

 

黎翔の言っているところの『なかせる』が卑猥な音になって耳に届く。

熱っぽい視線に射貫かれて、息が詰まりそうになる。

 

いや、詰まった・・・

 

「ぐっ、ぐほっ!げほっ!!」

 

さっき無理矢理口に突っ込まれた饅頭が喉にかかり、夕鈴は思いっきり咽てしまい、黎翔を睨み上げた。

 

「・・・くっくっく。ああ、君はそんな表情も私を喜ばせているだけだとそろそろ理解してほしい。」

 

嬉しそうに笑いながら夕鈴の背を摩ってくれるのが嬉しくて。

それでもその掌の感触を生々しく思い出してしまい、寂しく思う自分が嫌だ。

顔を上げるとやっぱり意地悪なのに蕩けるように嬉しそうな表情を隠さない黎翔と目が合う。

そうして自分が考えている間もあちこち撫でまわす困った人を真剣に拒めない自分がいる。

何故かこのドS陛下は自分のことを気に入っているのは確かだと思える。

 

それならば・・・

 

今を大切にしてみたら、失った後、少しは私の心も救われるかしら?

好きだとは言えなくても。

想いは届かなくても。

 

たとえ・・・とてつもなく、辛くても。

 

「あの、李翔さ・・・っ!!きゃっ!」

 

いきなり後ろから夕鈴は手首を引っ張られ、黎翔の囲いから引き離された。

 

「おいっ!お前、こんなところで何やってるんだ!」

 

はぁ~っと大きなため息をついて夕鈴の頭上から微妙な表情で顔を覗き込んできたのは幼馴染の外道だった。

 


************


つづく

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ドS陛下と野兎妃⑥

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(リレーSS)ドS陛下と野兎妃④

皆さま!お久しぶりです!!

放置っぷりも大概ですが、ご訪問感謝いたします。

年度末に向けて我が業界は鬼の忙しさに突入しております。

ついでにメインの業務が決算にかかわるので、正直やばいなぁと思いつつ←思うだけ

 

察しの良い貴方ならばお気づきでしょう!

そう!今日は殿が胃腸炎で仕事を休みました~(●^o^●)←オイッ

ということで、やっと書いたので、アップして寝ます!

 

リレーなのに待たせてしまってすみません!

しかも長い・・・

寝る前の睡眠導入にいかがですか?←チガウ

 

さり奈さん宅の③はこちら!! →  

 

では、行ってらっしゃいませ!

 

【原作寄り】
【陛下がドS】
【捏造いっぱい】
【いずれ甘くなる予定】 

 

 

 

 

その日も王宮政務室はいつも通り、国中から集まってくる陳情や報告の書簡が行き交い、狼陛下の指示のもと、官吏が冷や汗をかきながらも必死にこなしていた。

皆が陛下の指示に瞬時に反応できるよう、常に注意を払う。

陛下の様子を常に伺いながら動くことを要求される官吏達が、その日はしかし、なるべく陛下を気にしないようにしていた。

しかしその実はまた違って、注目をしていないふりをするのに躍起になっていた、というところが真実である。

いつも世話をさせるため近くに侍らせている陛下付きの女官に至っては、この珍事に壁際に立ち尽くし、顔を歪ませたまま身体を震わせていた。

中には啜り泣く声も聞こえる。

 

同じようで同じではない日常。

それは――――

 

「妃よ。」

 

冷たい狼の瞳に色気を漂わせ、熱く見つめるその先に、狼陛下唯一の寵妃(仮)夕鈴がいた。

 

「~~~な、なんでございましょうか、陛下。」

 

耳まで真っ赤に染め上げ、2つに結い上げた髪を震わせながら応える妃はまるで借りてきた兎のようで、知らぬふりを貫いているはずの官吏達の頬も染まる。

 

「折角来てくれたのに、こんな場所ですまぬな。」

「こ、こ、こんな場所とは、皆様が御国のために頑張ってくださっている場所、ということでしょうか?」

 

扇子で顔を隠し、必死に平静を装う夕鈴は黎翔の嗜虐心を擽る。

 

――――ああ、可愛いなぁ。

 

腰が疼くのを我慢して、黎翔はそっと夕鈴の耳元で囁いた。

 

「いや、私の膝の上、という意味だ。」

 

言葉とともに吐息まで吹きかけられて、夕鈴の身体は黎翔の膝の上でピクッと跳ねた。

それでいてぎゅうっと黎翔の胸元を握りしめる手に力を入れしがみつく夕鈴に黎翔の口角が知らず上がる。

 

「それでは落ちてしまう。可愛らしい君に例え一筋だとしても傷が付くのは耐えられない。」

 

そう言うと黎翔はとても美しい笑みを浮かべ夕鈴の腰をぎゅうっと抱き寄せた。

 

「ひゃわわっ。」

 

突然の抱擁に驚き妃らしからぬ声を上げた夕鈴の唇に、黎翔の指がそっと触れた。

 

「君のその愛らしい声は、閨で、私のみに聞かせて欲しい。」

 

『閨で』の部分を殊更強調するようにゆっくりと言葉を紡いだ黎翔は、妃に溺れていると見せつけるに十分な鮮やかな笑みを浮かべた。

只でさえ女性に甘い黎翔ではあったが、妃限定に紡がれる甘言とその熱のこもった視線に、側で控える女官たちは足元から崩れ落ち、官吏たちは前のめりになる。

 

「ああ、お前たち、ずっと立っていては辛かろう。暫し休憩とする。」

 

女官たちの腰が砕けているのに気が付かないかのように労いの言葉を掛けた黎翔に、悔しさをにじませた者たちが、それでも食い下がろうと必死に立ち上がり拱手して進上した。

 

「では、御茶を準備させて――――。」

「それには及ばぬ。私は今後、これの淹れたもののみを口にしたい。」

 

そういうと、黎翔は抱き寄せていた夕鈴が震えているのを確認しながら笑みを浮かべ旋毛に口付けた。

 

「で、ですが、お妃様はお茶など――――。」

「我が妃の淹れる茶は甘露のようだ。妃の全てが甘く私を誘惑する。これ以上私を夢中にさせてどうしようというのか。なぁ、夕鈴。」

 

黎翔は自分の胸に埋もれていた夕鈴の顔を覗き込むと、顎に指をやり上を向かせた。

酷薄な笑みに熱のこもった視線を間近で受け止めた夕鈴は頭から煙を出すと、全身から力を抜いた。

 

「くっくっく。何も言わずとも、君の望みは知っている。私は最愛の妻の望みを叶えられない夫ではない。」

 

黎翔は夕鈴の輝く髪を愛おし気に指で何度も梳くと、一房持ち上げ、そっと唇を寄せた。

 

「お前たちは下がって良い。呼ぶまで戻ってこないように。」

 

常ならば労いの言葉等少しは掛ける黎翔が、妃の髪を弄ぶのに夢中で一瞥すらしないことに女官たちは苛立ちざわめいた。

 

「・・・聞こえなかったか?私は妃と二人きりで過ごしたいのだが?」

 

出自不明の妃をいきなり娶ってからも、黎翔の女官たちへの甘い対応に変化はなかったことに安堵していた女官たちも、今までにない対応に青ざめ、唇を噛み締めながら退室していった。

 

 

 

 

 

「へ、陛下。あんな風に言うことはなかったのではないですか?」

 

二人きりになったことを確認して夕鈴が黎翔に詰め寄る。

 

「ん?じゃあ何か?君はあのままずっと皆の前で私に甘い言葉を囁かれ、口付けられ、熱い視線を送られたかった、と。そう言うのか?」

「そ、そ、そ、それは、その・・・も、無理。」

 

そう言って未だ黎翔の膝の上で青ざめながら耳を真っ赤に染めて俯く夕鈴は美味しそうだ。

 

「私は別に構わないのだが・・・」

 

笑みを浮かべ顔を近づけると、夕鈴は両手を前に出して黎翔の唇から自分を守った。

 

はずだった――――。

 

目を閉じたまま顔を真っ赤にして黎翔を食い止めようとする夕鈴のその姿こそが黎翔の心を打ちぬいていることに気が付かないまま。

 

――――ああ、堪らないな。

 

黎翔はニヤッと笑うと、夕鈴の手首を捕まえてペロッとを舐め上げた。

 

「のわぁ!!」

 

驚いたはずみでバランスを崩した夕鈴が黎翔から落っこちたのを庇うように黎翔も一緒に床に転がる。

 

「くっくっく。君は面白いな。」

「な、な、何がですか!!」

「そんなに私に虐められたいのか?」

「そんなわけないでしょう!!何がどうしたらそうなるんですか?」

 

今まで見たことのない鬼の形相で怒る夕鈴もなんとも魅力的に見えて、意地悪な顔の下でほくそ笑む。

 

「落っこちたついでに茶を淹れてくれ。」

「え?あれ本気だったんですか?」

「ん?ああ。無論だ。」

「でも私・・・」

「李順から習ったのだろう?聞いている。」

「それは、そうですが・・・。まだ及第点しかもらっていないので、陛下にお淹れするのは・・・。」

 

戸惑う夕鈴に黎翔は目線をいったん逸らしたあと、静かに話し出した。

 

「・・・李順からは何も聞いてない?」

「へ?何をですか?」

「女官の淹れる茶について。」

「・・・たまに?毒ではないけれど何か入ってることがあって政務に支障をきたすのでやめて欲しい、とはお聞きいたしましたが???」

「たまに、ね・・・」

 

何故か急に不穏な空気を醸し出した黎翔に夕鈴は不安が募る。

黎翔はいつも二人の時は夕鈴を翻弄し、わざと怒らせるようなことをする、いわゆる悪ガキのようなものだ。

それが、今目の前にいる黎翔は心底弱り切ったように、何か大切なことを伝えるか逡巡しているように感じる。

いつもはドSで俺様な王様が、何故か困っているように感じて、夕鈴はつい言ってしまった。

 

「わ、私で良ければ、お聞かせください!!」

「・・・」

「お給金の分はしっかり働きますとも!!」

「くっ、くっ、くっ。夕鈴は素直だよね。君のそういうところにホッとするんだよね。」

 

そう言って笑った黎翔は、心からの笑みに見えて、夕鈴も初めて力を抜いて自然な笑みを浮かべた。

 

「じゃあ、言うけど・・・実は、女官たちが淹れるお茶は大抵媚薬が混入している。」

「・・・へ?び、やく?」

「ああ。」

「びやく?」

「媚薬、だ。」

「え?薬?」

「・・・媚薬、知らない?」

「あんまり・・・その、少しだけ下町で聞いたような。でも、その、それって・・・」

 

ぼふんっ!ぼふんっ!!ぼふんっ!!!

 

「ああ、そう、考えているので概ね正解だと思う。」

 

真っ赤に茹で上がった夕鈴を面白そうに見つめた黎翔が笑いながら言う。

 

「そ、そんな、そんなの笑っていることじゃ!!」

「まぁ、幼いころから慣らしているから対して効果はないんだが、たまに、強い催淫作用があることがあってね。困ってるんだ。でも策のためには飲まないわけにもいかないし・・・」

 

心底困ったように苦笑いする黎翔に夕鈴の胸はきゅうっと苦しくなる。

 

確かに夕鈴には意地悪ばかりする困った王様だけど、知ってしまった。

朝は主婦同然に早起きする夕鈴よりも更に早起きして王宮へ向かう日も多いこと。

共に夕餉を取った日でも戻って政務に励んでいることも。

何日も後宮に戻ってこれない日が続くことも。

 

少なくとも、陛下は王様を頑張っている――――。

 

そう思ったら、涙が溢れてきた。

確かに困った人だけど、国のために誰よりも働いて頑張っている。

女ったらしなのはどうかと思うが、それも情報を得るためだと言われれば仕方がないとも思う。

目の前にいるこの人は、王様から逃げ出すことなく、立派に勤め上げているのに。

 

気が付くと夕鈴はぐっと握りこぶしを突き上げていた。

 

「え?」

 

泣いたかと思うと急に勇ましくなった夕鈴に黎翔は珍しく動揺をみせ、床に座ったまま後ずさった。

 

「任せてください!陛下は、そりゃあ困った人だし女ったらしだけど、立派な王様なのに!!私が陛下を守りますから!!」

「へ?」

「陛下の御茶は全て私が淹れます!」

「本当に?」

「ええ!もちろんです!!」

「もしも他の御茶を飲んで媚薬を盛られたら?」

「そ、それは、そんなことは起こり得ませんが、そ、その時は私が責任をもって!最速で陛下を元に戻します!!」

「で、でもそれは・・・」

「戻します!!」

「・・・は、はい。よ、よろしく、ね?」

 

鼻息荒く宣言する夕鈴に気圧され、黎翔は頷くことしかできなかった。

 

様に夕鈴には見えた――――。

 

夕鈴はやっぱりうっかりさんだったのかもしれない。

 

 

 

 

 

**************

 

 

狼さんが狙った獲物を逃がすわけないものね?( *´艸`)

 

 

【リレーSS】ドS陛下と野兎妃 2(追記あり)

今日は本邦初公開のお話を・・・。

 

ブログ「恋色アクアリウム」で素敵なお話を沢山書いているさり奈様に、ニアピンキリ番リク権をいただきまして。

ウハウハとリクエストしたら、何故か気が付けばリレーで書くということになりまして。

読んだ方もいらっしゃると思いますが、昨日第一話が公開されました。

 

流石のさり奈様で、その後書くのちょっとドキドキでしたが、どS陛下の内心を考え出すと胸の鼓動が激しくなったので、早速書いてしまいました。

 

二人とも他にも連載があるので、リレー連載公開はかなり不定期になると思います。

陛下の設定も女ったらしでドSとおかしいし、誰得って私得な話なんですけど。

お付き合いくださるとうれしいです(#^.^#)

 

 

第一話はこちら です。

ぽちっと飛んでくださいませ。 

 

 

(追記)

 

いつも仲良くしていただいている時盗人管理人novello様が、このリレーに絵を描いてくださいました!

 

素敵すぎる絵に悶え死にしてくださいませ→☆ぽちっと

 

 

 

【原作寄り】

【陛下がドS

【捏造に次ぐ捏造】

【いずれは甘くする】←私が書くときのお約束事

 

いってらっしゃいませ!

 

 

 

 

*****************

 

 

 

白陽国王宮、王陛下私室____。

 

「陛下。先程の事はどういった主旨であのような行動に出られたかお聞かせ願えると嬉しいのですが?」

 

そこには蟀谷に青筋を浮かべ口元を歪める王側近、李順の姿があった。

 

「・・・」

「私は3倍増しの甘い演技を、とお願いした記憶があるのですが、私の思い違いでしょうか?」

「・・・、ああ。思い違いかもしれんな。」

「陛下!!何がどうしてそうなるんです?いいですか?あなたの縁談除けのための臨時妃ですよ。王宮での他の女官よりももっと、いえそれこそ通常の甘さなど大したことがないと思わせるほどの甘い夫を演じていただくと、そういうお話でしたよね?」

「そうだな。」

「ならば何故あんな態度をとるんです?」

「・・・」

「陛下!!」

「うるさいぞ、李順。」

 

いつまで話をしても煮え切らない黎翔に大声を出した李順を黎翔が低く響く声で制した。

その瞬間黎翔の纏う雰囲気が一気に狼のそれになり、李順は身を正した。

 

「・・・陛下、お考えをお聞かせ願いたいのですが。」

 

落ち着きを取り戻した李順がまっすぐに黎翔を見つめ答えを待つ。

その視線を逸らすことなく受けていた黎翔だったが、やがて諦めたようにはぁ~っと大きな溜息をつくと目を逸らして呟いた。

 

「~~~~~~だ。」

「は?よく聞こえませんが。」

「だから、~~~~~~~だ。」

「はぁ?もう少しはっきり仰ってください。」

「だから!あれは可愛すぎるんだ!!」

「・・・はぁ?」

 

心底意味が分からないという顔をして頭を横に垂れて呆けている李順に黎翔は馬車馬のように興奮して話し出した。

 

「李順、見たか?彼女の反応を!!」

「はぁ。」

「市井では私は狼陛下、女性子供老人にも容赦がないと恐れられている、そうだな?」

「ええ、その通りです。市井では私の策が良い具合にはまってうまい具合に風評が流れております。」

「そうだろう。なのに・・・だ。」

 

そこまで話すと黎翔は宙を見つめて記憶を辿った。

その記憶を思い起こすだけで今日一日とても気分良く過ごせたのだ。

 

「陛下、顔がたるんでおります。今すぐこちらの世界へお戻りください。」

「お前も大概だな。」

「思い出してにやけている変態に言われても痛くも痒くも御座いません。」

「まぁいい。兎に角だ。彼女のあの態度・・・ぞくぞくする。」

 

李順は聞き間違いかと思い、目を瞠り、殊更集中して黎翔の話の先に耳を傾ける。

 

「見たか?私が妃嬪の位の房を与えよと言った時の彼女の顔を。」

 

そう言われ、李順も思い出そうと記憶を辿る。

謁見の場では黎翔に手を捻りあげられ、罵声を浴び、物凄く悔しそうな顔をしていたような気がする。

只の一庶民にもかかわらず王陛下を睨みつける所業を後できつく注意しておいたが、李順にとっては面倒くさい少女だというだけの印象だ。

 

「・・・彼女の顔がどうか?」

 

やっと返ってきた言葉が自分の想像していたものと違い、黎翔はあからさまに肩を落とした。

 

「やっぱり李順にはわかんないんだ。」

 

急に子犬化した黎翔に李順も苦笑いを浮かべる。

 

「まぁ、仕方ない。彼女の良さは私だけが知っていればよいのだ。」

「ちっとも知りたくは御座いませんが念のためお聞かせ願えますか?」

 

李順が聞く耳を持っていることに気を良くした黎翔は嬉々として話し出した。

 

「あの娘、全身震わせていたにもかかわらず、私を睨み上げてきたぞ。」

「ええ、本当に失礼な小娘で・・・」

「違う!!青ざめて震えているのにだ!瞳に涙をいっぱい溜めて、その様で市井で狼陛下と揶揄される私を睨んだんだ!」

「・・・」

「あの悔しそうな顔。零れそうな涙。憤慨して紅く染まった頬・・・。」

「・・・」

 

うっとりとした顔で再びその時の記憶に溺れ始めた黎翔に李順は呆れ顔だ。

彼がどSなのは知っていた。

知ってはいたが、まさかこれほどとは・・・。

早いうちに手を打った方がいいのか・・・?

 

李順が眉を引き結び思考に沈んでいる間にも黎翔のどS視点からの夕鈴批評が続いていた。

 

「だから、僕、行ってくるね!」

「は?どこにですか?」

「夕鈴のところだよ。」

「行ってどうなさるので?」

3倍増しの甘い夫婦を演じるに決まっているだろう。」

「ちょっ。陛下!陛下~~~!!」

 

李順の声は闇夜に吸い込まれた。

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

 

 

「お妃様、陛下がいらっしゃいました。」

「へ?なんで?」

「妃よ、今戻った。何か不便はなかったか?」

 

妃嬪として与えられた房に入るなり黎翔はその綺麗すぎる顔に色気たっぷりの笑みを浮かべ夕鈴に近づいた。

 

「い、いえ。あの、皆様に良くしていただいて。」

「そうか。それは安心した。」

 

そう言うと黎翔は夕鈴の腰をさらいぎゅうっと抱きしめた。

 

「皆もこれに良く仕えているようだな。我が唯一の妃に迎えた最愛の少女だ。皆よろしく頼む。」

 

夕鈴付きになった侍女たちにも甘い声色で鮮やかな笑みを送ることも忘れない。

黎翔から直接声を掛けられた侍女たちは頬を染め顔を伏せ拱手して壁際に下がる。

 

「こんな場所で寂しくはなかったか?」

「・・・は、い。さ、寂しゅうござい・・・ました?」

 

疑問形で答えた夕鈴に黎翔は吹き出しそうになるのを堪えプルプルと震えた。

それをお怒りになっていると捉えた夕鈴は蒼白になった。

 

黎翔と謁見が済んだ後、李順に連れられ仕事の詳しい内容を聞かされた。

 

王陛下の寵妃として過ごすこと。

通常の数倍甘い夫婦演技をすること。

兎に角陛下の演技の邪魔はせず、なんでも甘受すること。

 

改めて聞くととんでもない要求をされていて、これがお給金が破格な理由だったかと肩をガックシと落とした。

しかも陛下の隠している一面を見られたからには協力してもらう。

しないのなら一族郎党・・・、わかりますね?なんて眼鏡を光らせながら言われたら是以外に選択肢はなかった。

 

兎に角怒らせたら可愛い弟にまで咎が行く可能性がある。

 

「・・・陛下?」

 

夕鈴が恐る恐るそーっと覗き込むと黎翔は年相応の青年の様に笑っていた。

その表情に心臓がぎゅうっと鷲掴みにされたように感じた夕鈴であったが、目が合った瞬間その表情は消え、顔には酷薄な笑み____。

 

「ああ、手首に痕が。すまない、やっと君を娶れた嬉しさで強く握ってしまって。」

 

そう言うと黎翔は夕鈴の手をスッと引き寄せ、袖口を捲り手首を露出させると紅くみみずばれになった痕に舌を這わせ、何度も舐め上げた。

 

「っ!!やっ!」

 

顔を紅くして手を引こうとした夕鈴をもう片方の手で逃げられないように抱き寄せると耳元に囁く。

 

「演技、だよ。夕鈴?」

「・・・」

「できる、よね?」

 

黎翔はそう言うと震える夕鈴の傷口に再び舌を這わせ、舐め上げ、何度も唇を触れさせては吸い上げた。

その間、視線は夕鈴をまっすぐ見つめたままで、侍女たちはその光景にほうっと見とれていた。

 

唯一、夕鈴だけが、狼に睨まれた兎ってこんな気分なのかしら?とこれから己の身に起こる未来を思うと泣きそうな気分だった。

 

耳まで紅く染め、プルプルと震えつつも我慢し瞳に涙を湛えたまま見つめ返してくる夕鈴に、黎翔の嗜虐心がこの上なく触発されゾクゾクさせているということにも気が付かず。

 

 

 

 

***************

 

 

 

つづく

 

 

 

続きはそのうちさり奈様の御宅にて。

その際はこちらでも更新のお知らせをする予定です~(*´ω`*)