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本誌派生SS第57話⑥

これでこの話は終わりです~。

 

お付き合いくださりありがとうございます! 

 

 

*************

 

 

 

「ゆーりん。泣き止んで、ね?」


 


優しい陛下の声。あ、本当なんだ。


 


「へ、陛下は知ってらっしゃったんですか?」


 


バツの悪そうな顔でへへへ~っと笑う。


 


「いや、知らなかったんだよね~。今朝、朝議の場で開口一番後宮を閉鎖するって言ったらさあー。」


「はぁ?後宮を・・・へ、閉鎖―!!」


「うん、それでね。」


「いや、それでじゃなくてですね、何でですか?そんな無茶な。」


「だからね、もう!ゆーりん、ちょっと黙って聞いて!!」


「は、はい。すみません。」


「でね、僕、もうゆーりんしかいらないし、他の娘と閨なんて嫌なんだよ。こんなに可愛くて僕思いで倹約家のお嫁さんなんて他にはいないだろうし。僕、ゆーりんだけでいいんだ。」


 


蕩けそうな笑顔で陛下が見つめてくる。


うわぁ、またこんな恥ずかしいことを。あ、でもこれ演技じゃないのよね。


ぼふん!!本気~!!それはかなり恥ずかしい~。もう~。


 


「だから後宮を閉鎖するって言いに行ったんだよね。そしたら柳も氾もそのほかの大臣もみーんな反対しなくてさ。」


「へっ?誰も・・・ですか?」


「うん。なんかね、優秀すぎる側近が頑張ってくれてたらしくてね。」


 


_____なぁ、と狼の微笑みで李順さんに問いかけた。


 


「だいたい有り得ませんよ。浩大にあげるだなんて。言い出した時から準備は始めていたのですよ。どうせこうなるだろうと。あなたを焚き付けるために浩大はその身を差し出したのですから咎はないと思いますがね。」


「_____その件については近々、しっかり話し合わねばなるまい。」


 


急に馬車の中の温度が下がった気が。


 


「へ、陛下!浩大は悪くありません。私が悪いんです。」


「妻の口から他の男の名前は聞きたくないと言っているんだが。」


 


と唇を塞がれた。昨夜の余韻かすぐに頭に霞がかかる。


はっ!ダメダメダメ~!!胸を押して離れた。


 


「李順さんがいます~。恥ずかしいです。」


「あいつなど石ころと思えばいいものを。仕方ない、可愛い妃の頼みならば聞くとしよう。」


ふう、甘い、甘すぎる。いつも以上に甘すぎて蕩けそう。


「そ、それはそうとですね。このまま行ったら、青慎とお父さんがびっくりしちゃうんじゃ・・・。」


「それも大丈夫。もう行ってるだろ、なあ李順。」


「左様です。既に先発隊として方淵と水月が行っております。」


「は?そ、そんなことまでやっていただいているのですか?」


「ええ。ですから、思ったよりも陛下が我慢強かったため準備期間が長く取れましたのでね。前もって書状にて伝えてあります。それに、昨夜浩大からも今日だと連絡がありましたからね。」


 


き、聞いていたのかしら・・・ね、浩大は。


 


「なんなら浩大からの連絡を詳しくお話しいたしましょうか?」


「い、いえ!!大丈夫です!!もう、勘弁してください~。」


 


最後の方は小声になる。いたたまれない。


 


「わが妃をからかうのはその辺でいいだろう。あいつには再教育が必要なようだな。」


 


憂い笑いの狼陛下___。でもそこは、うん。教育してもらおう。


 


 


 


 


馬車が止まった。扉が開く。


大好きな狼陛下の蕩けるような笑顔で手を差し伸べてくれる。


ああ、この手があれば私は間違えない。


私に勇気を与えてくれる優しくて暖かい手。


これから先、辛いことも悲しいこともあるだろうけど。


あなたがいれば大丈夫。


 


いつまでも手をつないで・・・


 


 


 


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本誌派生SS第57話⑤

どんどんいきます~。



****************

 




 

「支度は整ったかな?」

 

はっ、やっと来た~。

 

「陛下~~~~~」

 

陛下はこちらを見て目を丸くしたまま固まって動かない。

 

「あ、あの、やっぱり変ですよね!あの、すぐ着替えますから。」

 

言い終わらないうちにずかずかと近づいてきて腰をさらわれ陛下の腕の中に閉じ込められる。

 

「ゆーりん、すっごぉく、綺麗・・・」

 

陛下は蕩けるような笑顔をして耳元で囁いた。

 

「このように美しい妃を持って私も幸せと言うものだ。誰にも見せたくはないが、共に参ろう。」

「や、陛下~。これは何かの間違いでは?」

「何がだ?これ以上美しくなっては見つめるのもつらくなる。」

 

あ~。いちいち甘い~。

 

「下町に行くのですよね?これでは、あの、陛下も私も正装では?」

 

李順さんが準備したという衣装を見て驚いた。

それはまるで婚礼衣装の様で、もちろん下町ではお目にかかれないようなもので。

純白の上等な絹に繊細な刺繍が施され、所々に真珠が縫い込まれている。上掛は極薄い桃色の、これまた手の込んだ刺繍がされ、こちらは紅水晶と翡翠が縫いとめられている。装飾品に至っても、また同じような豪奢さだった。

 

「そのままで良い。」

 

ん?なんで狼陛下なの?

 

「でもこのままだとみんなが驚いちゃいますよ。」

「いや、そのままでいいんだ。」

 

ますます訳が分からない。挨拶に行ってくれることはうれしい。本当は王様なんだから欲しいというだけで済む話なのは私でもわかっている。

でも、王様だということが下町で知られては大変だし、私が庶民だということがそこからばれてしまっては陛下の御為にならないのではないかしら?

 

「いえ、陛下が下町に行ったことが表沙汰になったら、そこから私が庶民の出であることがばれてしまいます。私は構いませんが、陛下が貶められるのは嫌です。」

「皆知っている。」

「え?皆?」

「そうだ。皆知っている。」

 

は?何を?出自不詳なはずでは?

 

「今詳しく話をしていると日が暮れてしまうからな。馬車の中で話すとしよう。」

 

陛下は茫然とした私を抱き上げると額に唇を落とし、「はぁ、僕、馬車の中で我慢できる自信ないよ。」と嬉々として運んで行ってくれた。

 

馬車が準備されていることにも驚いたけど、その豪奢さにも驚いた。

王様が乗るよりは控えめだが、やはり装飾はそれなりのものだ。

その上、大臣その他重鎮が両脇に立ち並び頭を垂れて拱手している。

いったい何が起こっているのかわからない。私は気絶しそうな身体を陛下に預けていた。

馬車に乗り込むと李順さんが先に乗っていた。

 

「李順さん~、いったい何なんですか?どうしてこんなことに?」

「どうもこうもないですよ。正妃様。」

「は?正妃さま?誰が・・・ま、まさか___」

「まさかもトサカもありません。あなたですよ、夕鈴様。」

「え、いや、私庶民ですよ。李順さんのおっしゃる然るべき家柄ではないですよ。」

「そうですね。ですが、あなたが正妃様になられるのですよ。ああ、今日は急ぎでしたのでこの様な衣装になっておりますが、近々立后していただきますので衣装を新調いたしましょう。戻ったら、今まで以上に妃教育をしますので頑張ってくださいよ。忙しくなりますよ。」

 

最後の方は苦虫を噛み潰したような顔で言われ、はぁ~っと溜息をつかれた。

 

「李順、今はそれくらいでよかろう。それより、何故お前が同じ馬車に乗っているのだ?」

「ええ、どっかの誰かさんが正妃様のお美しい姿をどうにかなさらないように、ですよ。」

「どうにかとはなんだ?だいたいこれが我慢できると思うか?」

「だから同乗してるんです!!あなたはもう箍が外れるとこうなんですから!!!盛りのついた狼は大人しくしていてください!恥ずかしいのは夕鈴殿ですよ!!」

 

うきゃ~、李順さんどこまで知ってるの?ていうか、知っているのね・・・

 

「夕鈴殿、ええ、わかってますよ。全く、回りくどいことをなさって。周りの迷惑も考えて欲しいものですよ。ええ!!!」

 

へ?なんで考えてることがわかっちゃったの?

 

「あなたの考えていることは顔を見れば誰でもわかります!」

「はあ、そうですか。あの、ところで周りに迷惑って・・・」

「ええ!!もう!!あなたが!!浩大に嫁ぐといった日から政務室にはいらしてませんでしたから、あなたは!!存じ上げてらっしゃらないでしょうが!!!その日からですよ。政務室は今までで一番のブリザードで官吏が何人も倒れました!!まるでどこかの令嬢の書かれているという物語が如く、陛下の視線!一挙手一動によって皆倒れましたよ。」

 

李順さんはふぅ~っと大きな溜息をついた。

 

「ですが、それが良かったのです。後宮のいざこざから寵妃が政務室に出てこなくなったため陛下の機嫌が降下していると考えた官吏たちから、夕鈴殿を政務室にとの嘆願書が出されました。それをもとに方淵と水月が官吏たちを纏め上げ、妃として認めるよう大臣たちに訴えかけてくださいました。家に反してもよい、と。陛下とお妃さまの御為とおっしゃられましたよ。」

 

夕鈴の瞳からは大粒の涙があふれ出した。

政務室のみんなが・・・ありがたくて嬉しくて、何と言っていいかわからない。

 

「まあ、他にもいろいろありますが、とにかく、王宮の総意はあなたを認める、ということで纏まりました。庶民であることから、権力争いになんら関わらずに済むというのも良かったのですよ。ですから、胸を張ってください。これ以上泣かれると、私の腕をもってしても美しくして差し上げることは難しくなります。」

 

_____正妃様になられるんですから、無様な様を民に見せるわけにはいきません!

 

ともう一つ小言を落とすと、今までにないくらい微笑んだ。

 

「ご正妃様。陛下をよろしくお願いしますよ。」

  

 

 

***************

 

 

 

つづく

本誌派生SS第57話④

さぁ、お話も終わりに向かいます。


やっぱりこうでないとですね。



************* 

 


 

ぼんやりと目を覚ます。


部屋の中はずいぶん明るくなっていて、なんでこんなに寝過ごしてしまったのかと焦った。


急いで寝台から降りようとすると何か違和感に気が付いた。


あれ?は、裸!


よく見ると体中に紅い華が咲いていて、昨夜のことを思い出した。


あ、私、へ、陛下と・・・


恥ずかしすぎる!と寝台の上でわたわたしていると声がかかった。


 


「お妃さま、お起きでしょうか?」


「あ、はい。すみません、寝過ごしてしまったようで。」


「いえ、陛下から起きるまで近くで控えるよう言付かっております。お支度のお手伝いをさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「い、いえ・・・自分で。」


 


この姿を見られるのは恥ずかしすぎる!


あれ?体がうまく動かない・・・え~~~~~!!!


 


「お妃さま?大丈夫でしょうか?」


 


侍女が心配そうに聞いてきた。


仕方ない。


 


「すみません。手伝っていただけますか?」


 


と声をかける。


 


も~なんなのよ!恥ずかしすぎるわ!


支度の間中、侍女は頬をいつも以上に染め、なんとも言えない生温い視線を送ってくる。


 


「陛下がお泊りになられたようで、素晴らしいですわ!」


「妃の部屋で目覚めるなど、本当にお妃さまへの寵愛は限りなく溢れているのでございますね。」


 


などと、ずっと王の妃への愛について興奮気味に話している。


みんな、紅珠の巻物に侵されてるわ。恥ずかしすぎる!


心の中で叫んでは見るものの、今回はさすがに本当に事があった後なのでどうしていいやらわからない。


 


「陛下より、昼餉を共に、との伝言を受けておりますがその様でよろしいでしょうか?」


もうそんな時間なのね?恥ずかしいけど、ここで断るわけにもいかないわよね。


「はい、その様にお願いします。」


 


いつもは一人でやってしまう支度を侍女に珍しく頼んだせいか、張り切って着飾られた。


宴も謁見もないのにこんなに着飾らなくても、と苦笑いしていると声が聞こえた。


 


「愛しいわが妃よ、目覚めたか?」


 


愛しいあの人がものすごく上機嫌な声と甘い笑顔で部屋の入り口から顔を出した。


 


「お疲れ様です。ものすごく機嫌がよろしいようですね?」


「うん、ものすご~く、いいことがあったからね。」


 


いたずらっ子のように笑うと人払いをして食事が始まった。


 


「陛下は朝からお起きになられ政務に励まれてらしたのに、わたしだけのんびり寝てしまって申し訳ありません。」


「ん~、いいんだよ。だってゆーりん初めてなのに僕が無理させちゃったからね。」


 


頬を染めながらこちらを見る陛下は可愛いけど、その姿と言葉に私は全身真っ赤になってしまう。


 


「へ、陛下、あの、あまり言わないでください・・・恥ずかしいです。」


 


最後の方はものすごく小声になってしまった。


陛下はクスッと笑うと包み込むような笑みを私に向けてくれる。


あー、この微笑みが大好きなのよね。


 


「ねぇ、ゆーりん。ご飯を食べたら一緒に出掛けようね?」


「え?どちらにですか?なにか急な視察でもありましたか?」


「えー、ゆーりん、忘れたの?」


「は?何かありましたか?」


 


さっぱりわからない。


何かあったなら、むしろ朝まであんなことをして大丈夫だったのか?


と考えて思い出してしまい真っ赤な顔で俯いて黙り込んでしまった。


今なら恥ずかしさで死ねそうだ。


 


「ご挨拶だよ!ゆーりん、今日ご実家に結婚の挨拶に行くんでしょ?」


 


あ!そうだった!すっかり忘れていた。


事前に休みをもらい、いつも逃げ回っている父に絶対に家にいるよう手紙も書いた。


あんなことがあったからすっかり抜けていた。


と、また思い出して頭から煙が出そうだ。


何かある度にこれでは身体が持たない・・・


 


「あ、そうでした。でも、浩大とはもう、その、しないので__」


「愛しい妃の口から他の男の名が紡がれるのは面白くないな。」


 


食事の終わった陛下はさっと立ち上がると私の腰をさらい、あっという間に長椅子の上に座らされた。


正確にいうと、長椅子の上に座る陛下の膝の上に座らされている。


ちゃんと伝えなきゃ。


 


「あの、でも、その、わたしはもう、その、陛下が・・・」


「陛下が・・・なぁに?」


「陛下が・・・」


「・・・」


「陛下が・・・」


「ねぇ、言って?君の声で聞かせてくれ。」


 


耳元で囁かれる。死にそう!


 


「陛下が、その、好きなので。あの、おそばにいたいです。」


「僕もゆーりんが大好きだよ。愛してる!だから、ちゃんと貰いに行かなきゃね!」


「で、では着替えを・・・」


「ん~、そうだね。李順が用意してくれてるからそれに着替えてね。僕も着替えてくる。では、また後でね。」


 


陛下は尻尾をぶんぶん振り回しながら自室へ戻られた。


 


さあ、私も急がなくっちゃ!

 

 

 

***************

 

 

 

つづく


本誌派生SS第57話③(追記あり)

ということで、このお話は連続で投下します。



(追記)


平成28年7月2日、白友であり、リンクもさせていただいております花愛さまよりいただいた絵を挿絵として公開させていただきました。

本当に!ありがとうございました!

またくださいね!←(((o(*゚▽゚*)o)))


************



翌朝の夕鈴はいつもと変わらない様子で朝餉を共に取り、見送ってくれた。


詳細を聞いた李順は驚いた顔をしてはいたが、私が娶らずに済んで良かったですよ、と毒づくことは忘れなかった。


夕鈴だったら、誰でも喜んで結婚するに決まってるのに。


 


それからはいつも通りに日々は過ぎていった。


 


ただいつもと違うことといえば、彼女は後宮の立ち入り禁止区域での掃除をしながら、常に浩大と話をしているということだった。


なんでも、家族には、王宮での掃除中に知り合った下男と恋に落ち、バイト期間の終了に伴い離れがたく、結婚の話が出た、という説明をすることにしたという。


恋愛結婚なのに、いろいろなことがわからないでは怪しまれるから、と他愛もない話を二人で延々とやっているらしい。


 


面白くない。


私と共に過ごす時間よりも、明らかに奴との時間の方が長い。


なんで奴が彼女の家族に正式に紹介されるのか。


なぜ、結婚の許しを請うのが奴なのだ?


命令を下したのは自分だが、蓋をした感情を持て余す。


油断をすると走り出しそうになる自分を律する日々が続いた。


 


彼女の自室を訪れれば従来通りにこやかに出迎えてくれ、同じように時を過ごしてはいたが、何時も、彼女の笑顔は李順が指導したお妃教育の賜物であるかの様なものでしかなくなっていた。


もう、彼女の屈託ない、陽だまりのような笑顔を向けてはもらえないのだろうか?


あの笑顔が、安らぎが、もう奴だけのものなのだろうか。


暗い感情が覆い尽くしていた。


 


それでも、彼女を逃がさなければならない。


責任感がどうにか自分を押しとどめていた。


 


 


 


 


とうとう、明日、浩大が夕鈴を貰いに行く。


僕の花嫁でいてくれるのもあと少し。


時間が惜しいから早々に人払いをして二人で過ごそう、と急いで彼女の部屋に行くとすでに人払いがされていた。


中から話し声がし、時折彼女の笑い声が聞こえる。


こんな笑い声は最近僕の前ではなかったな、なんて寂しさがこみ上げた。


捨てられた子犬か手負いの狼か。


今の僕の顔はきっとひどいものだろう。


 


「じゃあ、明日はよろしくね、浩大。」


「ん~、リョ~カイ。でもさ、ホントにいいのかよ。オレとで。」


「良いも悪いも・・・でも、ありがとね、浩大。付き合ってくれて。ごめんなさい。」


「いや、いいよ。命令だし?それに、お妃ちゃん結構かわいいし?オレ役得じゃね?」


「お世辞言っても何も出てこないわよ?私下町じゃあ嫁ぎ遅れで有名なんだから!可愛くねぇって。」


「いやいや、ダイジョーブだよ。可愛いから。まあ、アッチの方はソノ気になれるかわっかんないけどね~。」


「アッチ?」


「閨の方?」


「ね、あ、う、・・・何言ってんの!」


「いやぁ、お妃ちゃん可愛いけど、そういう対象として見たことないからなあ。でも、子供たくさん産んでくれるらしいから頑張らなきゃいけないじゃん?旦那様としては!」


「もう!」


 


なんだか僕と話すより二人の心の距離はうんと近いように感じる。


旦那様って。良い響きだな。


僕が言われたかったな。


浩大め!僕がいるのをわかってやってるに違いない。


一度殺さねばわからんらしいな。


小刀を投げようとした時・・・


 


「んじゃ、試してみよっかな?」


 


能天気な声に動きも思考回路も止まって、ただ茫然と見つめていた。


浩大の指が夕鈴の顎をとらえ上を向かせ、その可愛らしい唇に己のそれを重ねていた。


彼女の表情は見れなかった。


だが、しばらくすると彼女からか細い声が漏れ聞こえてくる。


 


「ふ・・・ふぁ・・やぁ・・・こ・・・だい・・」


 


彼女は膝から崩れ落ち、浩大にしっかりと抱きとめられた。


後姿でも耳や手の指の先まで真っ赤に染まっているのがわかった。


 


血の気が引く。


心臓が恐ろしいほど早鐘を打つ。


頭の中は気絶しそうなほど大きく警笛が鳴り響いた。


怒りと悲しみと絶望と、もう何が何だかわからない感情の渦に飲み込まれただ立ち尽くしていた。


 


「ん~。大丈夫そうダネ。いい声で啼くじゃん?これなら誰だって煽られるんじゃね?そう思わねぇ?なあ、へーか?」


 


オレはわざとヘラッと軽薄そうに笑って見せた。


まだ意地はれるかね?へーか。


とりあえず死ぬ前に少しくらい美味しい思いしてもいいよね~。


 


 


 


う、うそ?


振り向くとそこには紅い眼をぎらつかせた愛しい人がいた。

 

 

************

 




ほんとにもう浩大ったら。


閨とか、恥ずかしいこと言わないでよ、っと思っていたら、


 


「んじゃ、試してみよっかな?」


 


と能天気な声とともに唇を塞がれた。


な、何が起こっているの?わけがわからない。


しばらくすると、舌が侵入してきた。


ちょ、ちょっと待って。


こんな口づけは知らない。知りたくない。


なんで陛下じゃないの?


 


いや!


 


あまりものことに頭がついていかない。


押し退けよう。そう思った。


でも・・・


嫌悪感とともに、受け入れなければいけないんだと悲しくなった。


どうせ好きな人のもとには行けないのだ。


大切なあの人のためにも平気にならなければいけないんだ。


頭のどこかに冷静な自分がいて。


自分を説得させる言い訳をどうにか考えながら、我慢していた。


息も絶え絶えに、どうにか言葉を紡ぎだしてみる。


 


「ふ・・・ふぁ・・やぁ・・・こ・・・だい・・」


 


膝から落ちた私を浩大が支えてくれた。


 


「ん~。大丈夫そうダネ。いい声で啼くじゃん?これなら誰だって煽られるんじゃね?そう思わねぇ?なあ、へーか?」


 


は?へーか?


う、うそ?


 


振り向くとそこには紅い眼をぎらつかせた愛しい人がいた。


 


狼陛下!


さーっと血の気が引くのがわかる。


今の私はとんでもなくひどい顔をしているだろう。


なんで好きな人にこんなところを見られなきゃいけないの?


悲しすぎる・・・


もう!なんで浩大はそうニヤけてるの?


 


なんで陛下?怒ってるのかしら?


目も合わせてくれない・・・


こんなところでこんなことして呆れられた?


 


夕鈴がいろいろ考えている間も黎翔は微動だにせずこちらを睨みつけていた。


 


仮にも妃だから、王様以外と口づけをしてはいけないんだわ。


それで、バイト中なのにって腹を立てているのね。


謝らなければいけないわね。


 


そう考えがまとまって声を出そうとした瞬間。


黎翔が夕鈴へ向かってずかずかと歩いてきた。


へ?と思う暇もなく手首を強く捕まえられ黎翔の方へ引き寄せられ担ぎ上げられる。


何が何だかもう、とにかく謝らせてほしいのに、有無も言わさない雰囲気だ。


黎翔は大股で夕鈴を肩に担いだままどこかに向かっている。


 


よくわからないけど、なにかまずい気がする。


口をパクパクさせているとニヤニヤと笑いながら手を振る浩大と目が合った。


と、同時に後ろを向いているはずの陛下の手元から光るものがいくつか浩大へ飛んだ。


な、なんなの?


 


「へ、陛下!あ、あの・・・」


 


やっとの思いで言葉をかけるとゆっくりと寝台に降ろされた。


陛下は何も言わず、私の上に覆いかぶさるように乗ってくると両手を寝台に抑えつけた。



花愛さまからの頂き物 




さっきからの展開についていけず目をぐるぐる回していると、


 


「・・・ゆーりんはさ・・・」


 


耳元で陛下の声がした。私の肩口に陛下の顔が埋まっている。


 


「ゆーりんは、誰のお嫁さん?」


「へ、陛下のです。・・・偽も、ん・・・」


 


最後までいう前に唇を塞がれた。


また~。もう何なの?この人達は!


逃げ出すこともできず、陛下にされるがまま。


息もできなくて、朦朧としてくる。


 


「へ・・いか・・お・・しおき・・です・か?」


 


涙が零れる。


 


「なんで?」


 


狼の瞳で子犬のように優しく聞かれる。


 


「だって、臨時とはいえ、私はまだ陛下の花嫁なのにあんなことしてしまって・・・


すみません。」


「違うな。」


「違う?」


「あぁ、違う。君は、私が怒って君に口づけをしたと思ってるのか?」


「違うんですか?」


 


見上げる陛下の顔に寂しそうな微笑みが浮かんだ。


な、何?これ?


こんなに弱り切った狼は見たことがない。


これじゃあ、耳も尻尾も垂れてる子犬陛下じゃない?


 


「本当に君には何も伝わらないな。いや、伝えることはしないように自分にも強いてきた。・・・が、もう我慢はやめよう。」


「我慢・・・ですか?」


「君が誰かに触れられることが、こんなにも私を揺さぶるとは思わなかった。頭では理解していたのだが、目の前でやられるとは・・奴も余程命がいらないと見える。」


 


なんなんですか?その狼の微笑は。


怖いんですけど・・・怖い~。


 


「ゆーりんはさ、浩大が好きなの?」


「へ?す、好き?いや、あの、その、ある意味ではそうなのかもしれませんが。」


「ある意味・・とは?」


「あ、あの。浩大は陛下にとって大事な道具なのですよね?あ、あの、だからですね、私にとっても大事なわけでして。」


「なんで僕の大事なものはゆーりんも大事に思うの?」


「え、なんでって、あの、その・・・」


 


あ~、もう、何て言えば。


だいたいさっきから、狼になったり子犬になったりずるいわ。


 


「その・・・何?」


「へ、陛下は私にとって大事な方だからです!陛下には幸せになって欲しいんです!いや、あの、変な意味ではなく、民としてですね・・・」


「民として・・それだけ?」


「い、以前も申し上げました・・・離してくださいませ。」


 


瞳をそらして呟くように言うのが精いっぱいだった。


もうこれ以上はやめて。想いを口走ってしまいそう。


なのに陛下は離してくれなくて、なおも私の上にのしかかったまま。


 


「では、夕鈴だけに言わせていては悪いな。」


 


な、何が?


 


「私にとっても夕鈴は大事だ。民として・・・では、ない。いつも隣で笑っていてほしいし、僕のために毎日お茶を入れてほしい。」


「君の憂う顔は見たくないし、その前にさせないようにしたいと思う。」


「君にとって大事なものは私にとっても大事だ。」


 


陛下は何を・・・?


 


「私は夕鈴が好きだ。これは、君の気持ちと同じ、ではないか?」


 


え、いや、まさか・・ね。


そんな自分に都合のいいように解釈してはダメ。


 


「汀 夕鈴!」


「・・・」


「ゆーりん?」


「は、はい・・・」


「私の・・僕の・・花嫁になって。」


「へ?いや、あの・・」


「僕のそばは嫌?命も狙われるし、忙しくて会えない日もあるし、嫁ぎ先としてはいまいちお勧めできない。だから、僕から逃がそうと思ったんだ。でも、無理だってわかったから。夕鈴、私の本当の花嫁になってくれないか?もちろん是しか聞かないが・・・」


「それって・・・拒否は・・」


 


詐欺だわ~!


 


「否は聞けない。君がいないと僕は笑えない。君がいないと幸せになれない。君だけでいいんだ。他には妃はいらない。君さえいれば、何もいらないんだ。」


「僕に幸せになって欲しいんでしょ?」


 


意地悪な笑みでこちらを見ている。


くっそー。こっちの気持ちなんかとっくにわかってるって顔して悔しいわ。


さっきから気になることを聞いてみる。


 


「陛下、先程から、狼になったり、子犬になったり、とても自然ですよね?もしかして・・・」


「ははは、こんな時に。でも、言っとかなきゃダメかな?うん、ゆーりんの思ってる通り、どちらも私で僕だ。」


 


あー、やっぱり。騙されたわ。


 


「嫌か?やはり狼は怖い・・か?」


 


そんな捨てられた狼みたいな顔して・・もう!


 


「嫌ではありません!」


「ホント?」


 


あー、耳と尻尾が見える。


真実がわかるとこっちも子犬じゃなくて、喜んだ狼の様に見えるから不思議ね。


 


「じゃあ、いい?」


「何がですか?」


 


あれ?耳と尻尾が下がったわ。


 


「結婚だよ~。してくれるんでしょ?」


「へ、いや、あの、それはですね・・わたしでは、その。」


「私は夕鈴を愛している!夕鈴は違うのか?」


 


あー、もう。


 


「私だって陛下のこと・・・で、でも。」


「否は聞かないといったはずだ。」


「いや、あの、でも・・・」


「可愛くないことを言う唇は塞いでしまおう。」


 


陛下はニヤリと笑った。


顔中に口づけが降ってくる。


だんだん頭が蕩けてきて、無意識に陛下の首に両手を回し引き寄せていた。


陛下は嬉しそうに笑うと紅い瞳を煌めかせて呟いた。


 


「じゃあ、是というまで、今夜は共に過ごそう。」


 


その後のことはよく覚えていない。


恥ずかしさと混乱で朦朧としている間に狼に全て捧げてしまった。


何度も何度も責め立てられ、まさに是というまで離してくれなかった。


 

***********



 

 

つづく 


あ、そうそう。


私は浩大が大好きです!!





本誌派生SS第57話妄想②

こちらに移すにあたって読み返しているのですが、穴があったら入りたいくらいに酷いですね・・・


なので一気に上げていこうと思います。


恥ずかしすぎるので恥を一気に晒します←


いってらっしゃいませ。




**************




王宮の魑魅魍魎から守らなければ。


ここから逃がさなければ。


彼女には帰る場所がある。


私のそばにいて、これ以上危険な目にあう必要はない。


彼女だけはそのままで。


僕を置いて・・・行ってくれ・・・


 


自分勝手な願いだと、君が聞いたら怒りそうだけど。


 


 


 


夕鈴を解雇することにした。


彼女には笑っていてほしい。


何の苦労もしないで、ただ、彼女らしくいて欲しい。


最後だから、彼女にしてあげられることは全部してあげたかった。


もうきっと、彼女に会うことも、


何か手助けしてあげることもできないだろうと思ったから。


せめてもの餞に・・・僕をいつか思い出してくれるように。


いや、忘れてくれた方がいいのかもしれない。


それくらい幸せになって欲しいと思う。


なのに、彼女は僕には何もさせてはくれない。


バイト妃にはもったいないと言う。


この線引きに、自分が強いてきた境界に、堪えられない焦燥感・・・


どうすれば彼女がこの先も幸せでいられるのか。


幸せを知らない僕にはわからなかった。


 


「君が望むなら嫁ぎ先を融通することも・・・」


 


そうすれば君が幸せかどうかくらいは耳にできるだろうか。


 


君が息をのむ音が響く。


君の大きな瞳に、こぼれそうなくらいの涙が浮かんだ。


次の瞬間、まっすぐにこちらを見る君から溢れ出た言葉の勢いは驚くくらいの強さで。


僕は適当な相づちを返すくらいしかできなかった・・・


 


浩大?


浩大がいいのか?


 


彼女が浩大を呼んで事の次第を説明している姿を他人事のように見ていた。


2人で何やら話をしているようだったが、僕の思考は別のことを考えていた。


 


浩大ねぇ。


悪くないかも!


手を出すなと言っておけば、奴は出さないだろう。


彼女の近況も手に取るようにわかるだろう。


それに、奴は僕が夕鈴をどう思っているか、多分にわかっているはずだ。


 


 


 


「いや、だってさ。結婚だよ?お妃ちゃん、俺の子供産んでくれんの?」


「こ、う、で、・・・子供くらいいくらでも産むわよ!」


「いくらでも!へえ。俺頑張らなきゃいけないなあ。


 


ん?ちょっと待て!!


子供?って言ったか?


夕鈴の子供・・・可愛いだろうな。


じゃなくて・・・


夕鈴の?浩大と?


 


 


__________嫌だ・・・


瞬間、心も頭も身体も凍っていくように感じた・・・


 


結婚とはそういうものだ。


わかっている。


子供を産んで家族を作る。


それが普通の幸せであろう。


ましてや彼女は普通の女の子だ。


いくら弟がかわいくて最優先だろうと、幸せな結婚像があるだろう。


それに、弟ですらあんなに可愛がるのだから、自分の子供となったらそれはそれは可愛いく思うだろう。


欲しくないわけがない。


浩大にしても、奴の優秀さは群を抜いている。


あいつの子供なら、それはやはり優秀なのかもしれない。


持って生まれた天性の身体を受け継ぐのかもしれない。


奴の子供は、正直に言って、とても楽しみだ。


いい道具になるかもしれない、という点で。


是非にでも産まれてほしいと思う。


 


だが、これでは夕鈴の子を隠密に?ということか。


それでは彼女を逃がしたことになるだろうか。


彼女の、おそらくは溺愛するであろう子供を、常に生命の危険が付きまとう隠密にするのか・・・


 


 


未来を考えると頭がこねくり回されているように考えがまとまらない。


2人の子供が、と考えるだけで血の気が引いていくのに、その先を冷静に考えてしまう自分がいる。


どこまでいっても自分ここから逃げられない。


やはり狼陛下なのかと自嘲してしまう。


愛しいと思う娘を他に嫁がせようと、それでもいいかと考えてしまう自分に嫌気がさす。


 


 


 


浩大が彼女の耳元に近づいて何やら二人にしか聞こえないように呟く。


 


「す、好きって・・・そんな・・・言えないもの。」


 


なんで?


夕鈴は僕のお嫁さんでしょう?


浩大のことが好きだったの?


僕のことも、私のことも、好きだと言ったじゃないか。


あの言葉は、本当にただの親愛の意味だったの?


浩大のことは本当に好きだから、真っ赤になって、それでも言えないの?


 


自分のやっていることは棚上げに、浩大に小刀を投げつける。


彼女を赤く染めていいのは私だけだ。

 




「こ、浩大!!えっ・・・なに?」


「いや、なんでもねぇよ?」


「なんでもなくないでしょう!それ!」


「ん~?ただの小刀だよ?」


「いや、そうじゃなくて・・・陛下!陛下ですね?何してるんですか!」


「・・・近い・・・」


「近くなんかありません!陛下の方が、よっぽど、いつも、余計に近いです!」


「赤くなってたじゃないか。」


「あ、あ、いや、あの、それは違くて・・・」


「何が違うんだ。」


「と、とにかくですね!浩大は陛下の大事な道具なのでしょう?なくなったら困りますよ!ね!」


「これくらいいつものことだ!」


「いつも!?」


「い、いや、浩大の仕事からしたらいつものこと、という意味だよ?


 


やばい、夕鈴には知られたくないな。


瞬時に子犬の雰囲気を醸し出す。


 


「そ、それは、そうかもしれませんが。危ないですよ。」


 


ふう、ごまかされてくれたようだな。


安堵したのもつかの間。


 


「浩大に何かあったら、私、困ります。陛下も困るでしょう?私の嫁ぎ先がなくなると。」


 


そうだった、こっちの問題があった。


どうやったら夕鈴があきらめてくれるか・・・


 


「ゆーりん、浩大はそういう仕事だし、いつ命を落とすかわかんないよ。だからさ、やっぱり別な人を・・・」


「陛下!良いって言いましたよね?浩大に命令もしてましたよね?」


「でも、よく考えてみたらさ、浩大と一緒になると、ゆーりん、心配事が増えるだろうし、子供だって、もしかしたら隠密になっちゃって、大変な訓練を受けたり、命を落としたりするかもしれないんだよ?ゆーりん、耐えられないんじゃない?」


 


またこの人は私を触れさせないようにしてる。


わたしは少しでもあなたの世界に触れていたいのに。


なんでもいい。


苦しくてもいいから、悲しくてもいいから、少しでもあなたの役に立ちたいのに。


ここで引くわけにはいかない。


子犬陛下には弱いけど。


 


「いいえ!大丈夫です!わかっています!とにかく!わたしは浩大がいいんです!いいですよね?」


 


目も眉も吊り上がってこちらを睨みつけている。


こんな顔をしているときの夕鈴に何を言っても無駄・・・なんだよね。


結局、夕鈴の気迫に押され頷いてしまった・・・


 


「じゃ、浩大、そういうことで。明日からよろしくね。」


「ん~、はは。リョーカイしました。ヘーカ、そういうことで。オレ、戻りますね。」


 


浩大を窓から見送ると、彼女は振り返り拱手した。


 


「では、陛下。私の嫁ぎ先を融通していただき、また、わがままを聞いてくださりありがとうございました。これで陛下の憂いが一つは減りましたよね?良かったです。」


 


面を上げた彼女の顔には、お妃さまの笑顔が貼りついていた・・・


 


その後は明日から忙しくなるから早めに休みたい、


と彼女の部屋から追い出されるように退出されられた。


ホント、思いどうりにいかないよね、夕鈴は。


そこが愛らしく、目が離せなくなるところではあるが、今回のはちょっときつい。


これでいいのだろうか。


本当にこれで・・・?


僕の隣でなければ彼女は安全で、幸せになれるんだ。


自分に言い聞かせるために呟いた言葉は夜風に流されていった。


 


 

**************




つづく




本誌派生SS第57話妄想

あちらの国に入国して初めて書いたお話だったと思います。


57話、といってもピンと来ないですね(>_<)


その回は陛下が夕鈴になんなら嫁ぎ先を融通するよ、と酷いことを言った回です。

あの時は流石に夕鈴と一緒に悲しくなって泣いてしましました。

そして、私の中で妄想が膨らみ破裂してできたのがこのお話でした。


くっそー陛下!覚えてろよ!!

と思いながら書いた記憶があります。

いえ、私は陛下が大好きです。

イケメンは大好物ですし、しかもできる男、その上眼鏡まで似合い、話術も巧みで人の心の機微にも聡い。

本当に陛下に見つめられると腰砕けです。


でもこの回だけは腹が立って腹が立って!!

↑夕鈴につかりすぎている


ということで、私の怒りの上に初めて書き上げたお話をどうぞ。

もちろんつたないし、おかしなところもありますが。



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【57話妄想 ①】←お題すらない






バイト終了を告げられ、

なんとか繋がりを持とうとした私の借金返済の願いを

陛下はやらなくていいのにと言いに来た。

なんでもやってあげたいのに、と・・・


 

本当の願いは言えない。


 

言ってはいけない。

わたしの想いは行き場がない。


 

気付いてほしい。

気付いてほしくない。

気付かれてはいけない・・・


 


考え事をしている私に陛下が言った言葉。


 

「嫁ぎ先を融通することも・・・」


 


は?今なんて・・・


嫁ぎ先?


好きな人にこんなことを言われるなんて。


ほんと、どうしようもない・・・


そう・・・なら・・・


 


「陛下?嫁ぎ先・・・ですか?」


 

「う、うん。あの、きみさえ良ければ。」


 

「どんな?私は庶民ですよ。貴族の方、というわけにはいかないですよね?」


 

「そ、そうだね。えっと~、誰かいるかな?」


 

「そうですね。私、知らない人に嫁ぐのは嫌です。王宮勤めの貴族の方とは身分違いになりますよね。」


 

「あー、うん。まあ、貴族となるとこの件を知っている李順くらいかな?」


 

「李順さんに失礼です。陛下の側近であられるのに、私のような庶民ではつりあいませんよ。それに、一生李順さんの指導されるのは嫌です。」


 

「あ~、そう・・・だよね。うん。え~っと、誰かいいと思う人はいるの?」


 

「私・・・浩大がいいです。」


 

「へっ!浩大?」


 

「えぇ。浩大なら身分は庶民と変わらないですよね?」


 

「えっ、まあ、そうだけど・・・」


 

「浩大と結婚すれば、陛下も李順さんも、バイト終了後、私を監視する必要もないでしょうし、陛下に嫁ぎ遅れを心配されることもなくなりますし。」


 


一気にまくし立てた。


少しでもあなたの役に立ちたい。


浩大と結婚すれば、あなたのことが少しくらいはわかるかもしれない。


ただ下町に戻るよりもよっぽどいい気がする。


 


「こーだーい、その辺にいるんでしょう?」


 

「はは、お妃ちゃん・・・」


 


苦虫を噛み潰したような顔で現れた彼は、


陛下に礼をとるとこちらに向き直った。


 

 

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あれ?今日は陛下のお渡早いな。


なんて思っていたら、なんか面白いことになってるし。


二人ともウケる~


勘弁して、李順さんとか、マジ嫌そうな顔しそうだよ。


 


独り言ちながら屋根の上で聞いていた。


全くもって難儀な方たちだ。


 


ってちょっと待って!


なんか矛先がオレに来てない?


いや、お妃ちゃん、なにとちくるってくれてるの?


やばいよ、寒くなってきたよ。


 


 


「こーだーい、その辺にいるんでしょう?」


 

「はは、お妃ちゃん・・・」


 


とりあえず陛下に礼をとってお妃ちゃんの方を見る。


気持ちはわかるけど、それ陛下に言ってくんね~かな?


とばっちりだよ~。


 


「聞いてたんでしょう?」


 

「う、う~ん。まあ・・・ね。」


 

「浩大は嫌かもしれないけど、陛下が私の嫁ぎ遅れを気にしてくださっているのよ。」


 


心配してるというか、どうせなら安心できる相手にってとこだろうけど。


へーかもな、言うこと違うだろっつうの。


ホントお妃ちゃんの気持ちわかってねぇよ。


どうするかな?オレ。


 

 


「え~っと~、へーか、いいんすか?オレがもらっても・・・?」


 

「・・・夕鈴がいいならな・・・」


 


冷気ハンパねぇのにいいんだ?


さて、どこまで我慢できるものなのかね?


 


「へぇ!・・・そっか。それは、命令ですか?」


 

「・・・そう・・・だな。」


 

「・・・了解しました。そのように。」


 


陛下に再度礼をとってからお妃ちゃんに近づいた。


 


「陛下の命令だから、俺はまあいいけどさ。お妃ちゃん、本当にいいのか?」


 

「なにがよ。私が浩大がいいって言ったのよ。」


 

「いや、だってさ。結婚だよ?お妃ちゃん、俺の子供産んでくれんの?」


 

「こ、う、で、・・・子供くらいいくらでも産むわよ!」


 

「いくらでも!へえ。俺頑張らなきゃいけないなあ。


 


お妃ちゃんの耳元に近づいていたずらっぽく囁く。


 


「ねぇ、ホントに好きな人のとこに嫁いだ方がいいんじゃね?気持ちは、わかんだけどさぁ。」


 

「す、好きって・・・そんな・・・言えないもの。」


 


お妃ちゃんが耳まで真っ赤にして言う。


あはは、可愛いよな。


 


 


 


やば!


小刀が飛んできた。


ホンキだよ。


うわぁ、殺気ハンパねぇ。





 

 

*****************

 

 

 

 

つづく

 

お粗末様でした!