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本誌57話派生SS番外編 汀家の困惑

懲りずに番外編があったりして・・・


これでこのお話はおしまいです!!



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あの日、僕は学問所からの帰り道、いつものように夕餉の買い物をして帰路に就いた。


いつもの、何気ない、本当に普通の一日が終わろうとしていた。


 


「あれ?父さん、どうしたの?」


家に着くと、いつもは僕よりも遅く、下手したらあまり家にはいない父が先に帰宅していた。


「う~ん。父さんにもわからないんだ。上司から早く家に帰るよう言われてな。なんでもいいから帰れ、と。道草もせず、とにかくまっすぐに帰るように言われたんだよ。」


僕も父さんも訳が分からなかったけど、こんな時間から父さんがいるのは珍しいし、たまにはのんびりするのもいいね、と笑いあったんだ。


でも帰宅を命令されるなんて、父さんまた何かやったんじゃないよね?姉さんまた怒るかな?なんて考えながら夕餉の準備をしようと台所に行って荷物を降ろしていると玄関の戸を叩く音・・・


「青慎~、お、お客様だ。お前もおいで。」


とお父さんの上ずった声が聞こえてきた。

取り立て屋だったらどうしようかな?もう~。

なんて思いながら出て行ったら、そこにいたのは取り立て屋なんてものでも、もちろん几鍔さんでもなくて。


「いらっしゃいませ。こんばんは。あの・・・」


「青慎、ここに来て座りなさい。」


「は、はい。」


とりあえず居間の食卓の椅子に来訪者と向かい合わせで座ってみる。


なんだか上等な衣を着た美丈夫が二人・・・一人は眉間に皺を寄せてこちらを睨みつけていて。

もう一人は優しい微笑みで見つめていた。

なんとも対照的な二人に困惑しつつ、どう見ても貴族であるような佇まいに恐縮してしまう。


一体何なんだろう?

貴族ということは、父さんじゃなくて、王宮勤めの姉さんに何かあったのかもしれない。


目つきの悪い人が口を開いた。


「本日はどうしても汀家の皆様そろってお話を聞いていただきたく、父上にも早くにご帰宅いただいた。申し遅れたが、私は政務室補佐官をしている柳方淵と申す。」


「そんなに怖い顔をしていては何事かと怖がられてしまうよ。まぁ、君の笑い顔なんて想像もできないけどね。」


もう一人の微笑を浮かべた美丈夫が言った。


「うるさい!!貴様と言い合うためにここへ来たのではない!!貴様も早く名を名乗れ!!!」


「それもそうだね。すみませんね。彼はいつもこうなのですよ。私は方淵と同じく、政務室補佐官の氾水月と申します。よろしくお願いしますね。」


ん~~~~~、柳?氾?・・・


柳・・・?氾・・・?


柳~~~~~~!!!氾~~~~~~!!!


「「え~~~~~~~~~!!!!!」」


僕と父の声は見事に重なりもの凄く大声になってしまっていたんじゃないかと思う


「__えと、あの大貴族の柳家と氾家のご子息ということでしょうか?」


いくら下町といえども大貴族の名前くらいはある程度知っていて当然だった。

逆に言えば、それくらい大貴族ということでもあるのだけど。


「うむ、そうである。いや、恐縮することはない。別に悪い知らせというわけではないのだ。」


「そうかなあ。ある意味家族の方々にとってはつらい決断になると思うけどな。」


「だから貴様は~~~~~」


二人で漫才でもするかのように話をしていてさっきからちっとも内容が伝わってこない。

柳家と氾家って仲が悪いって聞いた気がしたけど聞き間違いだったのかな?


柳方淵さまがゴホンと咳払いをすると、きっ、とこちらを見つめ背を正したので僕たち親子も急いで背を正した。


「口で言うよりも、まずはこちらの書簡に目を通していただきたい。」


父さんは恐る恐る受け取ると僕にも読めるように広げて見せた。


_____ん?


_______へ?


____________・・・・・・?


おそらく目がまあるく見開いたまま動かなくなった僕らに、二人の政務室補佐官は若干気の毒そうな、訝しげな視線を向けた。


「字が読めぬわけではあるまいな?どうかしたか?」


声をかけられやっと衝撃から戻ってきた父さんが震えながら言った。


「あ、あの。何かの冗談では?」


「冗談ではない!我が君が冗談で正妃様を決めると思われているのか!」


「いえ、あの、そういうわけではなくて。ですが、娘は庶民です。何故そのようなことに。」


「お父様。落ち着いてください。別に狼が取って食おうという話ではないのですし。二人の馴れ初めは存じ上げておりません。それを問うのも我々には許されることではありません。なので、何故?、には答えを持ち合わせておりません。」


「ね、姉さんは王宮で掃除婦をしていると聞いていたのですが・・・」


「そうなのですか?我々があの方にお会いした時は既に陛下唯一のお妃さまでらっしゃいましたが。そのあたりのお話は我々は聞かない方が命の心配をせずに済みそうなのでここでやめていただけると助かります。」


「水月!貴様はまたそんなことを。」


「あの方に睨まれたらそれだけで息もできなくなってしまうよ。知らない方がいいこともあるのだよ。」


「まあ、詮索する必要はない。陛下があのお妃が良いと。いや、あのお妃でなければ駄目なのだとおっしゃられていられるのだ。我々はその意に沿うことが陛下の御為!」


「私の安息の日々の為にもお妃さまがいてくださらないと。ここ最近の政務室にはもう近づきたくないよ。」


「お妃のせいにするな!!貴様は!!~~~~~今はよい!!!貴様のせいで時間がかかり役立たずと思われてはかなわんからな!!」


「兎に角!!その書簡の内容は理解したと思ってよいな?」


なんだか良くわからないけど、とりあえず頷かないといけないと思い、父さんと二人ぶんぶんと音を立てて上下に頭を振った。


「ふむ。その書簡は御署名にある通り、陛下の側近である李順殿からである。そして、それが本物であり無事に家族のもとに届いたことを柳家と氾家が確認をした。」


「つまり、ここに書かれてあることは嘘偽りなく本当だということでしょうか?」


「そうだ。あのお妃の弟君にしては聡いようだな。」


「方淵、さっきから君随分と失礼な物言いだと思うんだけど。」


「うるさい!!あの通常のお妃像とは真逆を行くお妃だ。そんなもんでいい。」


「まあ、今のうちだよね。ご正妃様になられたらいくらなんでも口は慎むべきだしね。」


「彼女がご正妃様になられようと何も変わらん!」


「全く君らしくて楽しみだよ、方淵。」


優しい微笑みを終始たたえた美丈夫はそう言うと、では我々はこの辺でお暇いたします。と騒がしく帰っていった。


 


____一体何だったんだろう。


いや、訪問の理由はわかってはいるんだけど。


 


嵐が去った後の自宅の居間で茫然と会話をすることもなくしばらく佇んでいた。


「夕鈴が・・・行ってしまう、のだね。」


父さんがどこを見るでもなくポツリと言った。



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そんなこんなでお嫁さんの実家決定しました。

お二人の漫才のおかげですね!←違う



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