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道程7

陛下独白です。

酷い陛下に見えますが、陛下は陛下なんです。

だって私、陛下大好きなんだもの←その割に扱いがいつも酷い

 

 

 

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渇きが治まらない・・・

 

隣国から国王が寵愛している皇女との縁談が持ち込まれたのは半年ほど前のことだった。皇女は先々王、つまり僕の父の妹が正妃として嫁いだ先で産んだ、僕の従妹姫にあたる。

幾度が面識がある程度ではあるが、確か整った顔立ちだったような記憶がある。

好みの問題で言うと美しいではあるが好みではない、というところか。

国も安定してきているし、そろそろ下っ端妃でありバイトである夕鈴だけでは抑えが利かなくなってきていることもわかってはいた。

 

彼女といると楽しくて面白い。

 

最初はそんなものだった。

王としてではなく、一人の人間として扱ってくれるのが嬉しかった。

王であることが当たり前だと思っていた僕に向かって偉いと言えるのは彼女くらいなものだろう。

共に過ごしているうちに彼女の見る世界を一緒に見ることが楽しくなった。

庶民だから視点が違うのだろうと思ったがそうでないことにしばらくして気が付いた。

 

彼女だから僕にとって楽しいのだということに。

 

でもそれはお気に入りのおもちゃを手に入れたようなものだった。

 

彼女の借金が終わって帰る日が近くなっていたある日____。

 

僕は彼女を半ば無理矢理に本物にした。

ただ彼女がいないと楽しい日々が無くなることに寂しさを感じた。

なんでもいいから傍に置いておきたかった。

 

ただそれだけだった。

 

それがどの様な感情から来るものなのかなど考える必要はなく、深く掘り下げる必要もない。

寧ろ僕自身の感情は遠い昔に置いてきており、どんな気持ちがそこにあるとしても、僕は気にしてはいけないし、気が付いてはいけなかった。

無理矢理身体を繋げても彼女なら、彼女の言うところの子犬で兎に角謝りだおせば許してくれるだろうと軽く考えていた。

予想通り彼女は王宮の魑魅魍魎共なんかよりもあっさりと僕を許し、なおかつ傍に居続けてくれることを了承した。

寧ろ傍に置いてほしいと言ってきた。

 

簡単だった。

 

それは僕の目論見通りで、何故彼女が傍に居たいといったのかはわからなかったし、考えもしなかった。

彼女が身体を許してしまった自責の念からそういったのか、王の御手付きになったから諦めざるを得なかったのか、僕に僅かでも好意があったのか、理由は何でもよかった。

 

ただ、ただ逃がしてしまってはいけない、それしかなかったのだから。

 

手に入れる前はその時だけ身体を繋げればよく、ここに残ってくれるのならば今後は触れずにいようと思っていた。

基本的に夜伽の相手は一夜限りが多かったし、飽きてしまえば簡単に切り捨ててきたのだ。

だから彼女に対してもそうだろうと思っていた。

 

一度触れてしまえば興味も薄れるかもしれないと_____。

 

けれどそんな考えはあっさりと覆され、一度触れてしまえば止まらなくなり、夜ごと触れるごとに理性などと言うものは簡単に焼き切れた。

何故こんなにも求めずにはいられないのか。僕にも分らなかった。

 

だけれど、寵愛を一身に受けるというバイト妃であることに表立っては変わりはなく、何度か囮にもなり、彼女の周りには常に危険が付きまとっていた。

彼女を排除しなければ、という輩は一人や二人ではなく、世継ぎも産まれない中、もう抑えるのは限界に近かった。

夕鈴に世継ぎを産ませることも考えたが、庶出の妃から生まれた子供を、自分の様な危険な目に合わせるのはごめんだった。

その為にも身籠らないようにしてきたのだ。

そんな中持ち込まれた縁談は、国にとっても李順にとっても満足のいくもので、奴は好機と捉えたらしく、毎日暇さえあれば縁談を受けるよう迫ってきた。

僕の方と言えば、夕鈴との偽物かもしれないが穏やかな普通の夫婦生活の様な暮らしがなくなるのはとても寂しく、今更夕鈴がいなくなることは考えられなかったから、その度にただ睨みつけていた。

王としてならば縁談を受け、ついでに他の妃たちも娶り世継ぎを作ることは義務なのはわかっている。

そんなことは王になる時には受け入れるつもりだったし、今もそれは変わらない。

必要なことなのだ。

 

だが夕鈴は_____?

 

夕鈴にとってはそれは違うだろう、と思う。

王として、仕方がないことであることは理解しているだろうが、気持ちの上で受け入れられるかと言ったらそうではないのではないか。

傍に居たいと言ってくれたが、それがどんな気持ちから来ているのかわからない今、他の妃たちを娶って彼女に逃げられるのは避けたかった。

女ったらしだと罵られるのも嫌だし、嫌われるのも勘弁だ。

彼女の温かな笑顔が見れなくなるのだけは避けたい。

 

この王宮で彼女だけが唯一私に温もりを届けてくれていたから。

 

もう僕にはそれを手放して生きていけるとは思えないほどに。

王宮でただ王としていた時がいかに色のない日々だったのかを思い知るには十分すぎるくらい彼女との日々は温かく優しい時間だった。

 

けれど・・・

 

もしも他の妃の誰かで彼女の代わりになりそうな者が来たならば、彼女を手放してもいいと考えていたのも事実で。

長い月日を共に過ごすうちに、僕の隣に、ここに居続けることは彼女にとって良いことではない気もしていた。

彼女の存在に助けられているのは確かだったけど、人の好さにつけ込んで縛りつけている自覚はあった。

いつしか、あの時手を付けずに帰していた方が良かったかもしれない、と考えるようになっていた。

だからその気もないのに李順に言われるまま妃を娶った。

 

______でも失敗だった。

 

妃たちを数人娶っては見たが、どれもこれも気持ちが悪かった。

存在自体が鬱陶しく、共に過ごさねばならない己の身を恨んだ。

裏に控えている生家への見返りを求め、彼女たちは兎に角僕の機嫌を損ねないようにしていたし、仕方なく抱けば熱い瞳で見つめ、艶めかしい態で政事に口を出してくる。

生家がいかに繁栄するかが彼女たちの命であり、王を癒すとか楽しませるというのはそのついでだ。

裏にちらつく欲にうんざりする。

 

彼女に似ている者なんかいるわけがなかった。

本当はわかっていた。気が付かないふりをし続けていただけに過ぎない。

気が付いてはいけなかった。

認めてはいけなかった。

彼女が既に、真実に、僕の本当の唯一になっているなどと。

それは僕の唯一の弱点になる。

敵からの集中砲火を生涯受けることになるのだ。

元々バイトで、囮も仕事の内だったけれど、今彼女に何かあったら、僕は、自分がどうなるのかわからなくなってしまっている。

それでも、彼女を守れるなら、他の妃に目を少しでも逸らせるなら、それで安全であれば、自分を押し殺してでも王としての役目を果たそうと考えていた。

房事も仕方のないことだと自分を納得させていた。

けれど、他の妃を抱けば抱くほど彼女を求めている自分を思い知らされ、結局事の後彼女のもとを訪れては他の女の匂いが消え失せるまで彼女を抱き潰してしまう。

それについて夕鈴がどう思っているか、気が付いているのか、そんなことにも気を回せない位、僕は追いつめられているらしかった。

他の妃達にそれを感づかれたら夕鈴が危ないことはわかっていたが、それでも彼女のもとに通い、彼女自身を確かめずにはいられなかった。

 

手放せない・・・

 

そう思った時には既に心は囚われていたのに、気が付かないふりをしていた結果がこれか。我ながら情けないものだ。

大切に思う女一人満足に守れない。

今更気持ちを伝えることも憚れる。

伝えたとして、夕鈴は受け入れてくれるだろうか。

 

_____王とは不自由なものだ。

 

明日、正妃がやってくる。

彼女は僕の渇きを癒す存在になってくれるだろうか。

 

_____否。

 

もうわかっている。夕鈴でないと駄目なのだ。

 

 

 

 

 

渇きが治まらない・・・

 

 

 

**************

 

 

つづく



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