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道程14

こんばんは!

今夜も転載頑張ります!

こちらとあちらを行ったり来たりしてくださっている方がいらっしゃるそうで、ありがたくうれしく思います。

 

さぁ!王都へ戻りましょう!

 

いってらっしゃいませ!

 

 

 

************* 

 

 

 

 

____帰都前夜。

 

 

 

 

 

「雪がちらついてきたな。道理で寒い訳だ。身体を冷やすといけない。暖かくして早めに休むといい。明日は馬車に長く揺られる故。」

「はい、お気遣いありがとうございます。」

 

正妃だけを寵愛するフリをする為に今日も桜花のご機嫌伺いだ。

正直うんざりするが、そのおかげで全てが上手くいったのが幸いだ。

 

「ねえ、黎翔?」

 

名前を呼ばれることも本当は耳障りでしかない。

夕鈴の鈴の鳴るような透き通った甘い声ならばきっと甘美なものを。

 

「なんだ?」

「これで私だけ、ですわよね?」

「何がだ?」

「あなたの后ですわ。」

「いや、一人後宮で待っている。彼女と二人、ということになるか。」

「・・・そうでしたわね。夕鈴がいましたわね。」

 

____寧ろ夕鈴一人いれば事足りるのだがな。

 

「ねえ、この際だから、私一人にして下さりませんか?」

「・・・」

「私が来てから、貴方は殆ど私と過ごして下さっていますもの。もう彼女は必要ないでしょう?」

「・・・」

「ねえ、きっと彼女もそう思ってますわ。出自不詳の妃など貴方にとって利には成りません。そうでしょう?今ならひっそりと退宮させられますわ。」

「・・・ふっ、考えておこう。急に妃が君一人ではどんな理由にせよ民を怯えさせてしまうかもしれんからな。ではもう休まれよ。」

 

内心黒いものが渦を巻いて暴れていたが、桜花の頬に手を添えて微笑み部屋を後にした。

 

____ふっ、とうとう本音が出てきたようだな。

 

大方桜華も王の寵愛を得、自分の思い通りになるとでも思っているのだろう。

騙されているとも気がつかず。

口角が上がり冷笑が漏れる。

必要ないのは牝狐や毒花達であり、あの陽だまりの中咲く野花の様な彼女ではない。

かよわそうでいて、何も持ってないようであるにも関わらす、その実強い。

彼女の強さにいつも助けられ、勇気づけられ今までやってきたのだということを遠く離れた今、強く感じずにはいられない。

 

彼女だけが僕の輝ける星。

 

彼女のもとにも今雪は訪れているだろうか?

寒くはないだろうか?

今はここにない、寄り添う彼女の体温を恋しく思う。

 

明日、やっと会える。

 

掃除は終わったけれど、多分、彼女は事の顛末を聞いて怒るだろう。

酷いと罵られるかもしれない。

でも、諦めず、君だけだと伝え続けよう。

 

逃がしたりはしない。

 

____決して。

 

 

 

 

 

「夕鈴!女将さんが休憩入っていいって!」

「ありがとう、明玉。」

 

下町に戻ってしばらくはぼーっとして過ごしていたけど、几鍔にも会う度に気遣わしげな目線をもらうのが耐えられなくて、明玉の勤める飯店でバイトを始めた。

 

「でさ、ね、見に行かない?」

「へ?何を?」

「お・お・か・み・へ・い・か!」

「っ、な、なんで?」

「ほら、なんでも最近お妃様達を娶られたからって離宮に行かれていたのでしょう?」

「え?ええ、そういえばそうだったわね。」

 

なるべく触れたくない話題だったから適当に相槌を打つ。

 

「もう!あんただって王宮にいたんだから何か聞いたりしてないの?ばったり会ったりとかさ。淡白すぎない?」

 

こっちからしたら下町のみんなが何故こんなに狼陛下の噂話が好きなのかを聞きたい。

わたしは一生この話題が出る度に胸を痛めるのだろうか。

 

「ん〜、だって王宮の隅っこにいただけだもの。会ったとしても顔を上げることも出来ないわよ。」

「それはそうね。でね、なんでか分からないんだけど、今日離宮からのお帰りの際に民からも顔を見れるようにって沿道に立つことが許されたそうなのよ。」

 

基本的に陛下はいつ誰に狙われるか分からないので不特定多数の人に顔を晒すことは極力避けられる。

にもかかわらず何故?何かあったのかしら?

あの人は大丈夫なの?

 

「何変な顔してんのよ!」

 

不可解な気持ちが顔にそのまま出ていたようだ。

 

「な、何よ!失礼ね!わ、私は行かないわ。明玉見てきたらいいじゃないの。」

「そう?こんな機会2度と無いかもよ。」

「いいの!大体目が合っただけで命がなくなったら困るわ。」

 

紅珠の巻物はものすごい人気で下町にもすっかり浸透していた。

 

「あはは、あれは物語の話でしょう。まあ、確かに狼陛下なら有り得そうよね。でも、あの物語の通りなら、陛下はとても美丈夫なのでしょう?だったら絶対拝顔したいわ!!ね!あんたも行くわよ!!」

 

手首を掴まれて引っ張られる。もしも目でも合ったら、気付かれたらヤバい気がする。

全身が行ってはいけないと拒否をしているのに、明玉に引っ張られた手を上手く解くことが出来ず、気がついたら陛下の通る予定の道の沿道まで引き摺られてきていた。

 

「や、私はいいわ。戻る!!」

 

そう踵を返そうとするも、後ろから後ろからどんどん民衆が集まってきて身動きが取れなくなってしまった。

こうなるともうどうしようもない。

ここまで人が沢山いるのだから私のことなんて気がつかないだろう。

ちょっと楽観的だけど、顔を上げなければ大丈夫かもしれない。

 

それに・・・最後かもしれない。

 

あの人の御顔を心に焼き付けたい。

きっと前を見つめ、怖さの中にも威厳がある酷薄な笑みで大衆を魅了するだろう。

大好きな狼陛下の姿を目に焼き付けて。

しばらく辛いだろうけど、前を向いてがんばろう。

別々の道を歩くことを良かったと思えるように。

そう思い直して陛下の訪れを待った。

 

 

 

 

 

しばらく待っていると訪れを告げる兵の先導隊が来た。

隊列の後ろの方を見やると大勢の兵が周りを取り囲んでいる所があった。

離宮に行かれるときは御正妃様と共に馬車に乗られていたはずだったが、どうやら馬に乗ってらっしゃるようだった。

 

____きっとあそこに陛下がいらっしゃる。

 

そう思うと高鳴る胸を押さえることが出来なかった。

さっきまでどうやって見つからないようにするか思案していたのも忘れ、背伸びをし身を乗り出して陛下が来るのを待つ。

 

____早く、早く、無事な御顔を見せて。

 

だんだんはっきりと見えるようになってきた。

馬上の彼はとても威厳に満ちていて、正に孤高の王だった。

周りの兵ももちろん鍛え抜かれた選りすぐりの者であろうが、陛下の前には存在は無いも同然だった。

 

____陛下。ご無事で。良かった。

 

急な帰還の行列で何かあったのかと思ったけれど大丈夫そうで安堵する。

ふっ、と笑みが漏れたその瞬間・・・陛下と目が合った。・・・気がした。

一瞬驚いた顔をした気もしたけど、すぐに酷薄な笑顔になっていた。

きっと気のせいよね。この人数だもの。気がつくはずは無いわ。

そのすぐ後ろに豪華な馬車が続いていて、きっと御正妃様はそれに乗っているのだろうと思った。

見つかっていないか物思いに耽っていると、後列の方からざわめきが聞こえてきた。

さっきまでの陛下への畏敬の声とは違う、明らかに何か良くない感じのざわめきだ。

うわっとか、ひえっとか聞こえてくる。

 

____どうしたんだろう?

 

その場で待っていると、衛兵達に囲まれ歩く人々がやってきた。

よくよく見るとその一団は全員が縄で手首が縛られ、各々繋げられている。

衛兵から逃げられないように両側から槍を向けられていた。

 

____一体どういうこと?なんでこんな?

 

衛兵の隙間から中に捉えられている人の顔がちらちら見える。

 

____あ、あれは!!お妃様達!!

 

一人ではない。御正妃様以外全員だった。

その後には王宮で見たことのある官吏が何人か縄に掛けら頭をうなだれて歩いていた。

何があったのかはわからなかった。ただ、陛下は確か離宮でいろいろやってくると言っていた。

 

____これがいろいろの、結果なの?そんな・・・。

 

わざと晒す為に帰都の際に行列をしたとしか考えられない。

 

____離宮で何があったの?私はこれを見てよかったの?どうして・・・。

 

どれだけ考えても答えなんて出る訳も無く、私はただ呆然と見送ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「李順!どういうことだ!!何故夕鈴が戻らない?」

 

王宮への道中、沿道の民衆の中に愛しい彼女を見つけた。

迎えに間に合うようにとあんなに願ったのに何故?と思いはしたが、見せしめの為に急な変更で行列を行う事になったので帰宮が遅れたのかもしれないと思って夜まで待った。

 

待ったのに、何故?

 

「・・・」

「李、順・・・なんとか言ったらどうなんだ!!!」

 

卓の上にある未決済の書簡も、王専用の茶器も関係なしに腕で払う。

彼女以上に大事な物などこの世には無い。

 

「・・・陛下。私は離宮に行くまで陛下の計画を知らなかった、これは本当の事です。そして、夕鈴殿との関係も、気が付きませんでした。しかしながら、陛下の彼女への執着具合から、彼女が市井に戻れなくなる事を危惧しておりました。彼女の為には、ここにいては危ないと判断した為です。あの様に真っ直ぐな性格、努力を惜しまず質素倹約に勤しみ、狼陛下と呼ばれる貴方にすら真っ向から意見を述べられる。私はこれでも彼女を評価しておりました。ですから、市井に戻れる様に、と。」

「李順・・・?はっきり申せ。」

「・・・彼女にこう言いまいした。今回の休暇は、休暇で終わらせるも、バイト終了として元の生活に戻るのも、貴方次第です、と。貴方の判断でしてかまわないと申しました。」

「・・・」

「この時間まで戻られない、という事は彼女は元の世界に戻る事を選んだ、という事に・・・」

「そんなはずはない!!約束、したんだ・・・!ずっと傍に居ると!ずっと・・・」

「・・・私の判断ミスでした。申し訳ございません。」

 

うなだれ顔を青ざめて拱手する様を見て現実なんだと知らされる。

本当に夕鈴が、自分で・・・。

僕の元から去る事を選んだのか?

 

「もう良い。下がれ。だが変な気は起こすなよ?まだ牝狐の退治が残ってるからな。」

「・・・御意。」

 

____夕鈴・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「バーイットちゃ〜ん!!」

「きゃあ!こ、浩大?ひ、久しぶりね。驚かさないでよ!」

「驚かす?どっちがだよ。約束破ったくせにさ。あっちはもう嵐だよ。」

「そ、それは、その・・・ご、ごめんなさい。」

「オレに謝ってどうすんの?違うダロ?」

「・・・お元気かしら?お疲れの様に見えたけど。何か・・・あった?」

「ん〜、まあ、ね。見てたんだろ?行列。」

「ええ、見てたけど。何が起こったのかなって。」

「何って、わからない?」

「・・・」

「分かってんダロ?」

「・・・ふぅ。ええ、分かってるわ。多分、私のため、よね?」

「ピンポーン!!分かってんなら、なんで帰ってあげないのさ。へーか、めちゃくちゃ頑張ってたぜ。あんたってホント特別で特殊だよな。」

「どうして?御正妃様の方が大事にされているじゃない?後宮にいらしてからずっと入り浸りだったじゃないの。」

「あー、それね。それは、うーん。へーかから聞いてよ。」

「もう聞く必要もないわよ。」

「そんなこと言わないでさ。ま、取り敢えず今日はへーかのおつかい。これ、バイトちゃんに。」

 

そう言うと浩大はちょっと大きな箱を取り出して私に差し出した。

 

「ん!へーかから。」

「陛下、から?」

 

そういえば何かお土産をって言ってたんだったわ。

わざわざ届けてくださらなくても、怒って憎んで捨ててくれたらいいのに。

あの人は、もう・・・。

 

「ほら!泣いてないで開けなよ!大体泣くくらいなら逃げんなよな~。」

「うっさいわね!わかってるわよ!」

 

受け取った箱を開けてみる。中から出てきたのは・・・。

 

「ゆ、雪だるま?・・・兎?」

「あー、これかぁ。」

 

それは手の平には少し余るくらいの小さな兎の雪だるまだった。

長い耳がちょんと頭に乗っている。

ご自分で作られたのかしら?想像して頬が緩む。

 

「離宮で最後の夜、雪が降ってさあ。それでだね。」

「陛下がご自身で?」

「うん。朝から庭に下りて何してんだろ?って思ってたけど、これ作ってたんだナ。よく見えなかったけど、嬉しそうな顔して作ってたぜ。」

「ふふ、一緒に御作りしたかったな。・・・陛下に、ありがとうございますって伝えてくれる?」

「りょーかい!!・・・で、一緒に帰んねぇ?」

「・・・帰れ、ないわ。私、欲張りだもの。陛下を独り占めしたくて仕方ないの。でも困らせたくないから、一緒には居られないわ。私なんか居ても居なくても変わらないでしょう?」

「そう?じゃあなんでバイトちゃんのいない離宮で、アンタの為に、へーか自らがこれ作ったんだろうネ?」

「・・・思い出してくださって、こうやってお土産をいただけたことはものすごく嬉しいのよ。でも、ね。御正妃様がいらっしゃるでしょう。陛下も優しい方だもの。これからは一人だけをきっと慈しんでいくんだわ。本当は誠実な方だもの。」

 

____優しいのも誠実でいようとするのもアンタにだけなんだけどネ。

 

「ふう。アンタも頑固だね。・・・ま、いいや。取り敢えず渡せたし。んでさ、何か食わせてよ!お腹空いて死にそう!!へーか人使い荒いんだもん。何か美味しいのこさえてよ!」

「・・・浩大?それ目当てでしょう?」

「あ、バレた~?離宮行く前はほとんど毎日食べてたから舌が寂しがってサ。いいダロ?」

 

こんな時でもいつも通りの軽口で接してくれる浩大は助かる。

 

「よし!じゃあ沢山作るから食べて行って。お土産届けてくれたしね!」

 

家族の分を差し引いて、それでも大量に残っていた食べ物を持って行ってとお土産を渡された。

 

____陛下に持って行って。

 

単純にそう言えばいいのに。こっちも難儀な人だナ。

オレが好きなものも確かに作ってくれているけど、どう見てもへーかが好きなものの方が多いんだけど。

 

お土産に渡された包みとバイトちゃんの顔と行ったり来たりして見ていると、

「う、うっさいわね。は、早く行ってよ!冷えるじゃないの!」

って真っ赤な顔して目を逸らしながら言う。

「オレ、今すぐ食うから冷えないと思うけど~。」

 

そうからかう様に言うと背中をぐいぐい押された。

 

「は・や・く!!」

 

王宮を指さしして言う。ホント、ばっかだよな。

 

「はい、はい、ちゃんと届けますよ?お妃ちゃん?」

 

そう言って地を蹴り屋根に上がった。

 

「だ、誰がお妃ちゃんよ!もう違うわよ!」

 

下から睨み付けてくる。ホント、面白れぇ。

 

「はい、はい、じゃあね、お妃ちゃん、また来るヨ。多分ね~。」

 

返事は聞かないで屋根を飛んで急いで王宮を目指した。

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