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道程20

 

お久しぶりです。

 

転載しているだけなのに間が空いてしまってすみません。

 

台風、猛威を振るっているようですね。

 

今年はこちらにはちっとも来ず、しかし行った先では物凄い被害が出ていて心配です。

 

皆さまお気を付けくださいませ。

 

 

では、春部屋の続きです。

 

いってらっしゃいませ。

 

*************** 

 

 

 

 

 

夕鈴は寝台で覚醒できずにいた。

なんだかとても長く寝たような気がするのに、中々瞼を開けることができずにいる。

沢山寝た割に身体はとても疲労している気がして、でもそれは最近にあるだるい感じとは違い心地よい疲れである気がした。

どうにか目を開け身体を動かそうと試みてはみるものの、気が付くとまた微睡みの中に引き寄せられる、ということを何度も繰り返していた。

何度目かにうっすら覚醒した時、やっと青慎の事を思い浮かべ朝餉を作るために起きなければならないことを思い出す。

可愛い弟の事を思い、どうにか重い瞼を開くことに成功した。

なんで今日に限って中々起きられなかったのか、ぼーっとしながら天井を見上げていると、部屋に入る日差しに気が付き背に嫌な汗が流れる気がした。

どう贔屓目に見積もってもそれは昼も過ぎているだろう日差しで、ものすごく寝坊したことにあせる。

青慎はちゃんと起きて学問所に行っただろうか?朝餉は自分で作ったのだろうか?

何故起こしてくれなかったのか?

色々なことが急に気になり思考が定まらないまま、急ぎ寝台を降りようと掛け布をめくった瞬間、肌に刺さる冷気に驚いた。

恐る恐る下を見やると、やっぱりというか、まさかというか、身体は何も身に纏ってはおらず、それどころかあちらこちら、いや、全身くまなくと言っていいほどに紅い花が咲いており、手首には擦り傷まであって。

あまりもの姿態に一気に意識が覚醒したかと思うと、すぐにぷしゅーと音を立て寝台に突っ伏してしまった。

 

____あ、私、陛下・・・と。

 

「~~~~~/////っ。」

 

声にならない叫び声をあげて寝台の上でもぞもぞとのたうち回ってしまう。

そうだった、昨日陛下が来て、離宮での話を聞いて、戻ってきて欲しいと言われて、それで、それで、それで・・・/////。

うわぁ~、穴があったら入りたいってこの事だわ!恥ずかしすぎる!

実家なのに・・・実家なのに!青慎もいたのに!!

 

昨夜の事を思い出しあたふたしてしまう。

この疲れはつまりそういうことで、考えたら最後の方は何も覚えてないけれど、空が白みかけていた気がする。

 

と、とにかく何か着ないと・・・。

 

だるい手を動かしてどうにか寝台から下りようとしていると扉をたたく音が響くと同時に中に入ってくる人影。

 

「夕鈴?起きたか?」

 

それは愛しい、何にも代えがたいあの人で。

耳に響く声はまだ昨夜の熱から冷めきれていない身体を疼かせる。

自分では抑制しきれない身体の反応が恥ずかしくて、思わず目を逸らしてしまった。

 

「わが妃は寝起きも可愛らしいな。」

 

妃限定の甘い狼陛下の笑顔で近づいてきて顎をとらえられ上を向かされると掠めるくらいの優しい口付けをしてすぐに離れてしまった。

 

「ふっ、そんな顔をされると我慢ができなくなるのだが?」

 

すぐに離れてしまった熱に寂しさを感じているとそれを悟られ殊更甘く抱きしめられる。

 

「へ、陛下、恥ずかしい、です。」

「ん?何?」

「ですから、陛下、恥ず・・・。」

「ん?間違ってるよね?」

「へ?な、何を・・・?」

 

陛下がぎゅっと抱きしめたまま期待に満ちた瞳で顔を覗き込んでくる。

と昨夜交わした会話を思い出し、かーっと顔が赤くなるのを感じた。

 

「あ、あの・・・。」

「うん。」

「えと、れ、黎翔、様?」

「うん!なぁに?夕鈴!」

 

さっきまでは狼の気配だったのに既に子犬の態を纏って幻のしっぽがあり得ないくらいぶんぶんと振られている気がする。

 

「お願いされたから、僕もそうして欲しくて名前呼んでって頼んだのにすぐ忘れるなんて酷い妃だな。私を翻弄して楽しんでいるのか?」

 

そうかと思えば素早くまた狼の気配に戻る。

翻弄されているのはこっちの方だと思うが、どちらにせよどっちの陛下も好きなのだから仕方がない。

知らずに笑みが零れると、陛下の唇が頬に落ちてきた。

 

「ねぇ、そろそろ何か着てくれないと、僕襲っちゃいそうなんだけど?」

 

と悪戯な瞳で覗き込まれて何も身に纏ってないことを思い出した。

 

「あ、あの、外で待っててください。」

「う~ん、で、どうするの?」

「着替えますので・・・。」

「だってさ、夕鈴、立てないと思うよ?」

「そ、そんなことはありません!」

 

勢いよく寝台から立ち上がろうとして膝から崩れ落ちたところを陛下に支えられる。

 

「ほら、ね?あの、昨夜はその、我慢がきかなくて・・・。ごめん、ね?」

「~~~~~」

「あ、僕が服取ってくるから待っていて、ね?」

「す、すみません。お願いします。」

 

陛下は部屋の箪笥の中から嬉しそうに服を選びだして持ってきてくれた。

 

「これ、着てるところ見たことないなって思って。とても似合うと思うんだ。着て見せて?」

「は、はい!あの、ありがとうございます。あの・・・。」

「じゃあ、はい!腕通そうね?」

「へ?陛・・あ、黎翔様!自分で着れます!」

「え~、奥さんが怠そうな時は夫に頼っていいんだよ。僕、甘えて欲しいんだ!」

「だ、駄目です!陛下にそんなことはさせられません!」

「あ!また陛下って呼んだ!罰として夫に着替えを手伝わせて!ね!」

 

何だろう、この我儘きかん坊振りは・・・。

どこの世界に妃の着替えを手伝う王がいるのか?いやいない。

いや、ここにいる、のか?

 

頭が痛くなったけど、満面の笑みで嬉しそうにしているから、結局また私が折れて着替えさせてもらってしまった。

 

 

 

 

 

着替えを手伝ってもらいながら、青慎はちゃんと自分で起きて私たちの分の朝餉も作ってから学問所に向かったことを教えてもらって安堵する。

と共にそういえば、と不安がよぎる。

その不安に気が付いたのかすぐに陛下が教えてくれた。

 

「大丈夫だからね!夕鈴の可愛らしい艶声は聞かれてないから!」

 

満面の笑みで言ってくる。どこまでも甘い形容に知らず頬が染まってしまってることだろう。

それでも胡乱げな視線を向けると苦笑いしながら事の真相を教えてくれた。

 

「いや、あの、怒らないでね?夕鈴が最近あまり眠れてないって報告が上がっていたからぐっすり眠れる香を持ってきてたんだ。だから、それをちょっと、ね。」

 

ちょっとって・・・陛下、私の葛藤は一体何だったのか。

知らず知らずに口がとんがり、目が座っていたらしい。

陛下が青ざめたまま笑みを張り付けて言い訳をしてきた。

 

「ご、ごめんね。あの、僕、どうしても夕鈴の温もりを感じたかったから、その、ほら、戻ってきて欲しかったし、ゆっくり話をしたかったから、その・・・ね。」

 

続く言葉は眠ってもらってた、だろう。

全く、この人は何をしてくれているのだろう。

伺いを立てるかのように覗き込んでくる瞳。

 

ただの下町娘なんかに・・・。

 

嬉しくて、申し訳なくて、涙が溢れてきた。

 

「ゆ、夕鈴、ごめんね。泣かないで、ね。怒っていいんだよ。君は何も悪くないんだ。僕が勝手にしたことだから。ごめんね。」

 

一生懸命に謝ってくれる陛下にこれ以上誤解されたままだと困るから、涙は止まらなかったけど精一杯の笑顔を向け抱き付いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、黎翔様、ここに居て大丈夫なのですか?王宮の方は?」

「うん、今日はお休み~。大丈夫!ちゃんと李順に了承を得て来てるし。」

「そうなんですか?珍しいですね。」

「そうだね。でも夕鈴をちゃんと取り戻すまでは下町に居てもいいって言ってたよ。」

「へっ?そ、それはどういう・・・。」

「李順もね、別に反対していた訳ではないんだ。ただ、何の後ろ盾も持たない君の身を案じてここに戻った方がいい、と判断していたらしい。情が通じていないのなら戻れるはずだ、と。離宮で実は何年も前から関係があったと言ったらすんごく驚いて。ぷっ、くくく、あの顔、夕鈴にも見せてあげたかったよ。奴のあんな呆けた顔を見たのは初めてだったよ。」

 

クスクス、笑いが止まらないようでずっと身体が震えている。

久しぶりに陛下の膝の上に乗せられ抱きしめられながら話す。

背中に陛下の体温を感じて恥ずかしいけれど、元より未だ足腰が立たないのでどうしようもない。

それにこの温もりが私だけのものだと思うと嬉しくて顔が知らず綻んでしまう。

 

「わが妃はとても楽しそうだな?」

 

綺麗な顔に抗えない位優しい笑みを浮かべ陛下が覗き込んできた。

 

「いえ、あの、嬉しくて!陛・・黎翔様の御傍に居られることが夢のようで。」

「夢ではない。昨夜さんざん愛し合ったのにまだわからないか?」。

 

妖艶な笑みを湛え耳元で囁かれる。

その顔でその声は反則だ。全く勝てる気がしない。

 

「~~~~~大丈夫です!心配には及びません!十分に理解しております!!」

 

思い出して死にそうなくらい恥ずかしくなり陛下の腕の中で腰が砕けてしまう。

 

「ふっ、わが妃は本当に可愛らしいな。愛でたい気持ちを我慢するのも大変だ。君は本当に私を翻弄するのがうまい。」

 

何を訳わからないことを嬉しそうに言っているのかわからないけれど、貴方が嬉しそうにしてくれるならそれでいい。

 

私の幸せは、貴方の隣にしかないのだから。

 

 

 

**************

 

 

 

つづく

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