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本誌派生SS第57話③(追記あり)

ということで、このお話は連続で投下します。



(追記)


平成28年7月2日、白友であり、リンクもさせていただいております花愛さまよりいただいた絵を挿絵として公開させていただきました。

本当に!ありがとうございました!

またくださいね!←(((o(*゚▽゚*)o)))


************



翌朝の夕鈴はいつもと変わらない様子で朝餉を共に取り、見送ってくれた。


詳細を聞いた李順は驚いた顔をしてはいたが、私が娶らずに済んで良かったですよ、と毒づくことは忘れなかった。


夕鈴だったら、誰でも喜んで結婚するに決まってるのに。


 


それからはいつも通りに日々は過ぎていった。


 


ただいつもと違うことといえば、彼女は後宮の立ち入り禁止区域での掃除をしながら、常に浩大と話をしているということだった。


なんでも、家族には、王宮での掃除中に知り合った下男と恋に落ち、バイト期間の終了に伴い離れがたく、結婚の話が出た、という説明をすることにしたという。


恋愛結婚なのに、いろいろなことがわからないでは怪しまれるから、と他愛もない話を二人で延々とやっているらしい。


 


面白くない。


私と共に過ごす時間よりも、明らかに奴との時間の方が長い。


なんで奴が彼女の家族に正式に紹介されるのか。


なぜ、結婚の許しを請うのが奴なのだ?


命令を下したのは自分だが、蓋をした感情を持て余す。


油断をすると走り出しそうになる自分を律する日々が続いた。


 


彼女の自室を訪れれば従来通りにこやかに出迎えてくれ、同じように時を過ごしてはいたが、何時も、彼女の笑顔は李順が指導したお妃教育の賜物であるかの様なものでしかなくなっていた。


もう、彼女の屈託ない、陽だまりのような笑顔を向けてはもらえないのだろうか?


あの笑顔が、安らぎが、もう奴だけのものなのだろうか。


暗い感情が覆い尽くしていた。


 


それでも、彼女を逃がさなければならない。


責任感がどうにか自分を押しとどめていた。


 


 


 


 


とうとう、明日、浩大が夕鈴を貰いに行く。


僕の花嫁でいてくれるのもあと少し。


時間が惜しいから早々に人払いをして二人で過ごそう、と急いで彼女の部屋に行くとすでに人払いがされていた。


中から話し声がし、時折彼女の笑い声が聞こえる。


こんな笑い声は最近僕の前ではなかったな、なんて寂しさがこみ上げた。


捨てられた子犬か手負いの狼か。


今の僕の顔はきっとひどいものだろう。


 


「じゃあ、明日はよろしくね、浩大。」


「ん~、リョ~カイ。でもさ、ホントにいいのかよ。オレとで。」


「良いも悪いも・・・でも、ありがとね、浩大。付き合ってくれて。ごめんなさい。」


「いや、いいよ。命令だし?それに、お妃ちゃん結構かわいいし?オレ役得じゃね?」


「お世辞言っても何も出てこないわよ?私下町じゃあ嫁ぎ遅れで有名なんだから!可愛くねぇって。」


「いやいや、ダイジョーブだよ。可愛いから。まあ、アッチの方はソノ気になれるかわっかんないけどね~。」


「アッチ?」


「閨の方?」


「ね、あ、う、・・・何言ってんの!」


「いやぁ、お妃ちゃん可愛いけど、そういう対象として見たことないからなあ。でも、子供たくさん産んでくれるらしいから頑張らなきゃいけないじゃん?旦那様としては!」


「もう!」


 


なんだか僕と話すより二人の心の距離はうんと近いように感じる。


旦那様って。良い響きだな。


僕が言われたかったな。


浩大め!僕がいるのをわかってやってるに違いない。


一度殺さねばわからんらしいな。


小刀を投げようとした時・・・


 


「んじゃ、試してみよっかな?」


 


能天気な声に動きも思考回路も止まって、ただ茫然と見つめていた。


浩大の指が夕鈴の顎をとらえ上を向かせ、その可愛らしい唇に己のそれを重ねていた。


彼女の表情は見れなかった。


だが、しばらくすると彼女からか細い声が漏れ聞こえてくる。


 


「ふ・・・ふぁ・・やぁ・・・こ・・・だい・・」


 


彼女は膝から崩れ落ち、浩大にしっかりと抱きとめられた。


後姿でも耳や手の指の先まで真っ赤に染まっているのがわかった。


 


血の気が引く。


心臓が恐ろしいほど早鐘を打つ。


頭の中は気絶しそうなほど大きく警笛が鳴り響いた。


怒りと悲しみと絶望と、もう何が何だかわからない感情の渦に飲み込まれただ立ち尽くしていた。


 


「ん~。大丈夫そうダネ。いい声で啼くじゃん?これなら誰だって煽られるんじゃね?そう思わねぇ?なあ、へーか?」


 


オレはわざとヘラッと軽薄そうに笑って見せた。


まだ意地はれるかね?へーか。


とりあえず死ぬ前に少しくらい美味しい思いしてもいいよね~。


 


 


 


う、うそ?


振り向くとそこには紅い眼をぎらつかせた愛しい人がいた。

 

 

************

 




ほんとにもう浩大ったら。


閨とか、恥ずかしいこと言わないでよ、っと思っていたら、


 


「んじゃ、試してみよっかな?」


 


と能天気な声とともに唇を塞がれた。


な、何が起こっているの?わけがわからない。


しばらくすると、舌が侵入してきた。


ちょ、ちょっと待って。


こんな口づけは知らない。知りたくない。


なんで陛下じゃないの?


 


いや!


 


あまりものことに頭がついていかない。


押し退けよう。そう思った。


でも・・・


嫌悪感とともに、受け入れなければいけないんだと悲しくなった。


どうせ好きな人のもとには行けないのだ。


大切なあの人のためにも平気にならなければいけないんだ。


頭のどこかに冷静な自分がいて。


自分を説得させる言い訳をどうにか考えながら、我慢していた。


息も絶え絶えに、どうにか言葉を紡ぎだしてみる。


 


「ふ・・・ふぁ・・やぁ・・・こ・・・だい・・」


 


膝から落ちた私を浩大が支えてくれた。


 


「ん~。大丈夫そうダネ。いい声で啼くじゃん?これなら誰だって煽られるんじゃね?そう思わねぇ?なあ、へーか?」


 


は?へーか?


う、うそ?


 


振り向くとそこには紅い眼をぎらつかせた愛しい人がいた。


 


狼陛下!


さーっと血の気が引くのがわかる。


今の私はとんでもなくひどい顔をしているだろう。


なんで好きな人にこんなところを見られなきゃいけないの?


悲しすぎる・・・


もう!なんで浩大はそうニヤけてるの?


 


なんで陛下?怒ってるのかしら?


目も合わせてくれない・・・


こんなところでこんなことして呆れられた?


 


夕鈴がいろいろ考えている間も黎翔は微動だにせずこちらを睨みつけていた。


 


仮にも妃だから、王様以外と口づけをしてはいけないんだわ。


それで、バイト中なのにって腹を立てているのね。


謝らなければいけないわね。


 


そう考えがまとまって声を出そうとした瞬間。


黎翔が夕鈴へ向かってずかずかと歩いてきた。


へ?と思う暇もなく手首を強く捕まえられ黎翔の方へ引き寄せられ担ぎ上げられる。


何が何だかもう、とにかく謝らせてほしいのに、有無も言わさない雰囲気だ。


黎翔は大股で夕鈴を肩に担いだままどこかに向かっている。


 


よくわからないけど、なにかまずい気がする。


口をパクパクさせているとニヤニヤと笑いながら手を振る浩大と目が合った。


と、同時に後ろを向いているはずの陛下の手元から光るものがいくつか浩大へ飛んだ。


な、なんなの?


 


「へ、陛下!あ、あの・・・」


 


やっとの思いで言葉をかけるとゆっくりと寝台に降ろされた。


陛下は何も言わず、私の上に覆いかぶさるように乗ってくると両手を寝台に抑えつけた。



花愛さまからの頂き物 




さっきからの展開についていけず目をぐるぐる回していると、


 


「・・・ゆーりんはさ・・・」


 


耳元で陛下の声がした。私の肩口に陛下の顔が埋まっている。


 


「ゆーりんは、誰のお嫁さん?」


「へ、陛下のです。・・・偽も、ん・・・」


 


最後までいう前に唇を塞がれた。


また~。もう何なの?この人達は!


逃げ出すこともできず、陛下にされるがまま。


息もできなくて、朦朧としてくる。


 


「へ・・いか・・お・・しおき・・です・か?」


 


涙が零れる。


 


「なんで?」


 


狼の瞳で子犬のように優しく聞かれる。


 


「だって、臨時とはいえ、私はまだ陛下の花嫁なのにあんなことしてしまって・・・


すみません。」


「違うな。」


「違う?」


「あぁ、違う。君は、私が怒って君に口づけをしたと思ってるのか?」


「違うんですか?」


 


見上げる陛下の顔に寂しそうな微笑みが浮かんだ。


な、何?これ?


こんなに弱り切った狼は見たことがない。


これじゃあ、耳も尻尾も垂れてる子犬陛下じゃない?


 


「本当に君には何も伝わらないな。いや、伝えることはしないように自分にも強いてきた。・・・が、もう我慢はやめよう。」


「我慢・・・ですか?」


「君が誰かに触れられることが、こんなにも私を揺さぶるとは思わなかった。頭では理解していたのだが、目の前でやられるとは・・奴も余程命がいらないと見える。」


 


なんなんですか?その狼の微笑は。


怖いんですけど・・・怖い~。


 


「ゆーりんはさ、浩大が好きなの?」


「へ?す、好き?いや、あの、その、ある意味ではそうなのかもしれませんが。」


「ある意味・・とは?」


「あ、あの。浩大は陛下にとって大事な道具なのですよね?あ、あの、だからですね、私にとっても大事なわけでして。」


「なんで僕の大事なものはゆーりんも大事に思うの?」


「え、なんでって、あの、その・・・」


 


あ~、もう、何て言えば。


だいたいさっきから、狼になったり子犬になったりずるいわ。


 


「その・・・何?」


「へ、陛下は私にとって大事な方だからです!陛下には幸せになって欲しいんです!いや、あの、変な意味ではなく、民としてですね・・・」


「民として・・それだけ?」


「い、以前も申し上げました・・・離してくださいませ。」


 


瞳をそらして呟くように言うのが精いっぱいだった。


もうこれ以上はやめて。想いを口走ってしまいそう。


なのに陛下は離してくれなくて、なおも私の上にのしかかったまま。


 


「では、夕鈴だけに言わせていては悪いな。」


 


な、何が?


 


「私にとっても夕鈴は大事だ。民として・・・では、ない。いつも隣で笑っていてほしいし、僕のために毎日お茶を入れてほしい。」


「君の憂う顔は見たくないし、その前にさせないようにしたいと思う。」


「君にとって大事なものは私にとっても大事だ。」


 


陛下は何を・・・?


 


「私は夕鈴が好きだ。これは、君の気持ちと同じ、ではないか?」


 


え、いや、まさか・・ね。


そんな自分に都合のいいように解釈してはダメ。


 


「汀 夕鈴!」


「・・・」


「ゆーりん?」


「は、はい・・・」


「私の・・僕の・・花嫁になって。」


「へ?いや、あの・・」


「僕のそばは嫌?命も狙われるし、忙しくて会えない日もあるし、嫁ぎ先としてはいまいちお勧めできない。だから、僕から逃がそうと思ったんだ。でも、無理だってわかったから。夕鈴、私の本当の花嫁になってくれないか?もちろん是しか聞かないが・・・」


「それって・・・拒否は・・」


 


詐欺だわ~!


 


「否は聞けない。君がいないと僕は笑えない。君がいないと幸せになれない。君だけでいいんだ。他には妃はいらない。君さえいれば、何もいらないんだ。」


「僕に幸せになって欲しいんでしょ?」


 


意地悪な笑みでこちらを見ている。


くっそー。こっちの気持ちなんかとっくにわかってるって顔して悔しいわ。


さっきから気になることを聞いてみる。


 


「陛下、先程から、狼になったり、子犬になったり、とても自然ですよね?もしかして・・・」


「ははは、こんな時に。でも、言っとかなきゃダメかな?うん、ゆーりんの思ってる通り、どちらも私で僕だ。」


 


あー、やっぱり。騙されたわ。


 


「嫌か?やはり狼は怖い・・か?」


 


そんな捨てられた狼みたいな顔して・・もう!


 


「嫌ではありません!」


「ホント?」


 


あー、耳と尻尾が見える。


真実がわかるとこっちも子犬じゃなくて、喜んだ狼の様に見えるから不思議ね。


 


「じゃあ、いい?」


「何がですか?」


 


あれ?耳と尻尾が下がったわ。


 


「結婚だよ~。してくれるんでしょ?」


「へ、いや、あの、それはですね・・わたしでは、その。」


「私は夕鈴を愛している!夕鈴は違うのか?」


 


あー、もう。


 


「私だって陛下のこと・・・で、でも。」


「否は聞かないといったはずだ。」


「いや、あの、でも・・・」


「可愛くないことを言う唇は塞いでしまおう。」


 


陛下はニヤリと笑った。


顔中に口づけが降ってくる。


だんだん頭が蕩けてきて、無意識に陛下の首に両手を回し引き寄せていた。


陛下は嬉しそうに笑うと紅い瞳を煌めかせて呟いた。


 


「じゃあ、是というまで、今夜は共に過ごそう。」


 


その後のことはよく覚えていない。


恥ずかしさと混乱で朦朧としている間に狼に全て捧げてしまった。


何度も何度も責め立てられ、まさに是というまで離してくれなかった。


 

***********



 

 

つづく 


あ、そうそう。


私は浩大が大好きです!!





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コメント

使って貰ってありがとうございます(*^^*)
嬉しいです!
花愛さま

いえいえ!
こちらこそありがとうございます(*^^*)
絵が入ったことで、なんだか自分の書いた拙いお話がよく見えるというカモフラ現象が…
ラッキー(≧∇≦)

またよろしく、ね?( ̄▽ ̄)

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