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道程23

 

一週間が始まりますね。

 

先週は休みが多かったから楽だったけれど、今週は休みがなくていやだな←通常だよ

 

それではお待たせいたしました←待ってない?

 

いってらっしゃいませ。 

 

 

***************

 

 

 

5か月に入ったってとこだね。」

「っ!」

 

お腹に本当に陛下の赤ちゃんがいる。

夢のようで一瞬で涙が溢れそうになる。

 

「・・・夕鈴ちゃん、結婚、まだだったよね?」

「あ・・・は、い・・・。」

 

そうだ。

ここは下町の、私たち兄弟も取り上げてくれた産婆さんの家で。

私たちの家族の事情も全てわかっている、つまりご近所さんだ。

まだ後宮には戻れないということで陛下と共にここに訪れたのだが、浮かれすぎて考えが至らなかった。

 

「夕鈴には私がいますので。」

 

どうしたらいいのか考えが纏まらず青ざめてしまった私の思考を遮るかのように優しく暖かな声が響く。

 

「あんた、以前ここに来た人だろ?探していたのはこの娘かい?」

「ああ。」

「えっ、おばちゃんこの人知ってるの?」

 

何故陛下が下町の産婆さんなんかと知り合いなのだろう?

どう考えても接点なんてなさそうだけど。

 

「ふぅ。半年ほど前だよ。突然来て、この辺りで未婚のまま子を成した娘がもし来たら王宮まで届け出るようにって、何度もしつこく念押しされてね。てっきり何か調査でもしてるのかと思ったが、夕鈴ちゃんの事だったとはね。」

「え?李翔さん・・・?」

「あ、だって、夕鈴にもし身籠ったままいなくなられたら嫌だなぁって・・・。」

 

えへっと言わんばかりにバツの悪そうな笑みを浮かべてこちらを見つめてくる。

その瞳にはごめんね、と書いてあるようで、やっぱり怒れないなぁなんて思ってしまう。

 

「もう!いいですよ!ホントに・・もう。」

 

最後の方は照れてしまって声が尻すぼみになってしまった。

こんなに私の事を想ってくれていたのかとちょっと嬉しくなってしまって、別の意味で涙が溢れそうになってしまった。

 

「でも、あんた、狼だろ?どうするつもりだい?」

 

産婆さんの容赦ない一言・・・

 

「な!何言ってるの、おばちゃんったら・・・。」

「夕鈴ちゃんは黙っとくれ!私はね、あんたたち姉弟には幸せになってもらいたいんだよ。どんなに苦労してきたか、私たちは皆知ってる。」

「・・・。」

「あんた、狼陛下だろ?こないだ凱旋で私も見たんだよ。雰囲気はだいぶ違ってるが・・・。その紅い瞳、漆黒の髪、陛下そのものじゃないか?違うか?」

「お、おばちゃん、そんな・・・!」

 

そんな言い方をしたら不敬罪で今すぐに首を切られてもおかしくない。

陛下は確かに優しい方だけれど、必要であればどれだけでも冷酷になれる人だ。

 

「ふぅ~。夕鈴、いいんだ。大丈夫だよ。」

 

陛下が繋いだ手をギュッと更に強く握って笑う。

 

「いいんだ、下町での味方は多い方がいい。ちゃんと話そう。そういう事もあるかと考えていたから大丈夫だ。」

 

そう言うと陛下は先ほどまでの李翔さんとガラッと雰囲気を変え、狼陛下になって話せる範囲でおばちゃんに説明を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ~、そうかい。ふぅん。掃除婦だったのが見初められて・・・。夕鈴ちゃんが後宮の悪女だったわけかい。成程ねぇ。そりゃ逃げるね。私でも逃げるわ。わははは。」

 

全てを聞き終わるとおばちゃんは朗らかに笑った。

 

「で、片付いたら戻るんだろ?」

「うん、そのつもり・・・」

「つもりではない。必ず迎えに来る。私を信じていないのか?」

 

頬に手を添えて顔を近付けながら腰に手をまわされ抱きしめられる。

 

「~~~陛下!もうこんなところでやめてください!信じてます!必ず、ですよ?」

 

おばちゃんの前なのに激甘な陛下に照れながらも上目遣いでそう言うと満足したように頷いた。

 

「はは、狼も形無しだねぇ。そういう事なら、夕鈴ちゃんをあんたが迎えに来るまで皆で護るさ。必ず無事に出産まで辿りつかなきゃね。首と胴が離れるのは勘弁だよ。」

 

そう言うとおばちゃんは茶目っ気たっぷりに片目をつぶって笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま~、青慎帰ってる~?」

「ね、姉さん、お、お客様・・・。」

「ゆ、夕鈴・・・一体これはどういう事だ?」

「あれ?父さんまで?こんな時間にどうしたのよ。まさか、さぼってきたんじゃ・・・。」

 

こんな時間にいるはずのない父に眉間のしわが寄るのを抑えきれず叱りつけようと思った時だった。

 

「ふぅ~、夕鈴殿・・・。御父上は私がお連れしました。」

「李、李順さん~~~~~。」

 

気配なく影から現れた李順さんに全身の血が逆流したような感覚に陥りふらつくと、逞しい腕に支えられた。

 

「李順、夕鈴を無闇に威嚇するなと何度言ったらわかる。」

「威嚇などしておりません。通常運転です。何か疚しいことがあるからびくびくされるんですよ。私のせいではございません。」

「す、すみません・・・。」

「夕鈴は悪くないよ。あのね、今日は夕鈴の御家族にちゃんとお話ししなければと思ってさ。子が居るのがはっきりしたら、そうしようと決めていたんだ。僕達の事、これまでの事、それからこれからの事。いろいろ話が込み入るから李順にも来てもらったんだ。御父上にも逃げられないように捕まえてきてもらったんだ。」

「ちょ、ちょっと待て。今、なんて言った?」

 

父さんが急に青ざめた顔で陛下の話を遮った。

 

「子が居るって言ったか?」

「ええ、言いました。夕鈴のお腹には私の子が居ます。」

「な、な、何を!嫁にもやっとらんのに、どういう事だ!大体そういう相手がいるとも聞いておらん!」

 

父さんは顔を真っ赤にして陛下の胸ぐらをつかみ今にも殴り掛かりそうだ。

 

「すみません。順序が逆になってしまったことは、本当に申し訳なかったと思ってます。ですが、私は夕鈴に傍にいて欲しい、一生を共にしたいのです。どうか許してくださいませんか?」

 

陛下が父さんに向かって頭を下げる。

 

「へ、陛下!やめてください!庶民なんかに頭を下げるなんて!李、李順さん!止めてください!」

「止めたって聞くわけがないでしょう。あなたは馬鹿ですか?陛下ですよ。」

「ちょ、ちょっと待て・・・。確認するが、今、陛下・・って言ったか?」

 

二人の話を聞いていた父さんが一瞬にしてさぁっと顔を真っ青にした。

 

「あっ!いや、父さんこれは・・・。」

「如何にも、私は白陽国国王 珀 黎翔 だが。」

「へ、陛下!」

「陛下ではない!名を呼んでくれ、夕鈴。」

 

こんな場面でも普段通りに甘いままの陛下に焦っているのがばからしくなった。

 

「ふふ、はい、黎翔様。」

 

そのまま差し出された手に自分の手を添えると腰に手が回り引き寄せられて、すっぽり腕の中に囲われる。

 

「いちゃつくのは後にしてください。御父上と弟君が唖然としています。」

「・・・お前は。まぁよい。そうだな。きちんと話をせねばなるまい。」

 

「李、李翔さんは、やっぱり陛下なのですか?」

 

呆然と立ち尽くしていた青慎が震える声で疑惑を確信したとばかりに聞いてきた。

 

「そうだ。偽名を使い身分を隠していてすまなかった。」

「じゃ、じゃあ、陛下!陛下は御妃様が、いえ、今は御正妃様がいらっしゃいますよね?姉さんが後宮で耐えられるとは思えません!姉さんの事は遊びなのですか?あの、あの時僕に頭を下げたのは、あれは、嘘ですか?」

 

青慎が目に涙をいっぱいためて、手をぎゅっと握りしめたまま陛下を見つめている。

こんな時なのに、なんて姉想いの可愛い弟なのだろうと嬉しくなって涙が零れた。

 

「いや、君に話したことに嘘偽りはない。私には夕鈴が必要で、この命尽きる日まで共にと思っている。いや、そうする。詳しくは言えないが、今の正妃は廃妃になる。いずれ夕鈴には正妃になって立后して貰うつもりだ。」

「・・・本当、ですね?姉さんは幸せになれるんですよね?」

「ああ、安心してくれ。私には夕鈴さえいればいいのだ。他は要らぬ。」

 

陛下が青慎の肩に手を置いて見つめると、青慎は涙を拭って笑って頷いた。

 

「といういう事です、御父上。夕鈴との婚姻を認めてください。お願いします!」

 

再び陛下が父さんに頭を下げる。この人は・・・。

ただ一言召すように言えば皆が動き誰も逆らえない。

そういう立場にあるはずなのに、私の為に、普段は絶対に下げない、下げてはいけないであろう頭を下げてくれている。

 

「父さん、私も、お願い!辛いこともあるけど、ううん、今までも沢山辛かったしこれからも辛いこともあるかもしれないけど、でも、それでも、この人の傍に居たいの!お願いします!」

「私からも、お願い致します。陛下の幸せの為に、お二人の婚姻を認めていただけないでしょうか?不本意ではありますが、国の行く末を左右する案件だと考えざるをえません。どうかお許しいただきたい。」

 

気が付くと李順さんまで頭を下げている。

 

「お!オレっちも!」

 

久しぶりに響く人懐っこい声に振り向くと浩大が膝をつき拱手しながら同じように頭を垂れている。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!俺は頭を下げられるのは慣れてないんだ!勘弁してくれ!取り敢えず頭を上げてくれ。」

 

父さんの声に皆が頭を上げ全員の視線が父さんに向けられた。

 

「夕鈴。・・・それでお前は幸せになるんだな?」

「ええ、父さん。何があろうと、陛下の、黎翔様の傍に仕えることが私の幸せです。」

「ふぅ~、そう、か。お前には苦労かけた。陛下、娘をお願いします。」

「はい!ありがとうございます!大事にします!絶対に守り切って見せます!」

「ま、守り切って・・・?」

 

物騒なことを連想させる言葉に父さんが蒼白になった。

 

「あ!大丈夫っすヨ。オレっち達も皆で護りますから!お妃ちゃんは侍女たちにも好かれているし、味方はいっぱいいるっすヨ。」

 

急にどこからともなく現れて話に加わっていた浩大に怪訝な顔を向けた父さんに李順さんが説明を始めた。

 

「私は李順、と申します。陛下の側近をやっております。そちらの男は陛下の隠密の浩大です。夕鈴殿の警護を主にやっていただくことになろうかと思います。後、陛下はまだまだ敵の多い方ですので、夕鈴殿の実家であるこちらの警護の総括もこの浩大がやりますので覚えておいていただきたいと存じます。詳しいことは言えませんが、浩大が戻ってきたということは王宮での掃除が始まるということですので、暫くは落ち着くまで夕鈴殿は下町にて御子の出産に備えていただいた方が安全かと考えております。それ故、こちらにて普通にお過ごしください。王宮との連絡は浩大が請け負います。浩大以外の者を遣いにやることはありませんのでご注意ください。」

 

出来る側近らしく簡潔に全てを一息に説明すると、急に家の外へと続く扉が開いた。

 

「おい!今の話は本当なのか?」

「~~~~几、几鍔!!な、何立ち聞きしてんのよ!」

「うるせぇ、お前が産婆のばあさんとこから男と出てきたって聞いたから様子を見に来たんだ。・・・で、李翔さんよ?いや、陛下、か?本気か?」

「本気だよ、金貸し君。」

 

陛下の目が細められて顔には微笑が浮かぶ。

几鍔も陛下の冷たい気配に青ざめてはいるものの、一歩も引く気配はない。

 

「ふぅ~、わかったよ。なら汀家と夕鈴はもともと俺たちの仲間だ。俺たちも護ってやる。今の話からすると表立って警護することは出来ねぇんだろ?俺たちならこいつらと一緒に居ても怪しまれることはないしな。どうだ?」

「・・・そうだな。私が夕鈴と共に居れないのに金貸し君と一緒というのは面白くはないが、夕鈴を護る、という点については信用できるだろう。頼めるか?」

「ああ。」

「夕鈴に手は出すなよ。」

「ああ?アホぬかせ!こんなガキに誰が!そんな物好きはてめぇくらいだ!」

「え~、夕鈴は可愛いよ。」

「陛下になんて無礼な物言いを!」

 

その後は皆が入り乱れて訳がわかんなくなっちゃったけど、とにかく私は幸せで、今から来るであろう嵐の事なんてすっかり忘れていた。

 

 

 

 

**************

 

 

つづく 

 

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