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道程25

  

 

あちこち場面がせわしなく移動して読みにくいかもですね・・・。

 

 

でもあとは女狐退治ですから!!

 

 

 

***************

 

 

 

______章安区

 

「おっ、李翔さん!今帰りかい?」

「ああ。」

「夕鈴ちゃん、もうすぐだなぁ。そうだ!これ持って行きな!」

「えっ?いいの?」

「おうよ!夕鈴ちゃんの子はみんなの子だ!体力付けて元気な子を産んでもらわんとな!」

 

そう言うと屋台の男はホカホカの肉まんを包んで差し出した。

 

「ありがとう。夕鈴も喜ぶよ。」

「おう!あんたも頑張れよ!」

「ふふ、ありがとう。じゃ、夕鈴が待ってるから。」

 

暖かな肉まんに心まで温かくなった黎翔は夕鈴の家までの道を急いでいた。

 

 

 

 

 

 

 

懐妊が判明した夕鈴を護るため、当初王宮の隠密を軸に几鍔ら下町の若者らが常に警戒態勢で当たっていた。

しかし王宮の隠密といえども数は知れており、更に信用のおけるものとなると数が限られていた。

几鍔らも頑張ってはいたが、どうしても素人。徐々に疲れが見えてきていた。

 

そんな時_____。

 

 

 

「狼陛下は後宮の悪女と呼ばれた唯一をどこかに隠してしまったらしい。」

 

 

 

王宮で囁かれていた噂話が下町まで聞こえてきた。

飯店や屋台の店先で、もしかしたら下町に居たりして、なんて笑いながら話す声があちらこちらで聞こえるようになる。

 

 

 

 

 

黎翔は女狐退治が始まると言ってはいたが、相変わらず汀家に帰ってきて汀家から政務に向かっていた。

そんな黎翔に美味しいご飯を食べてもらうことくらいしか思いつかない夕鈴は、毎日自分の持てる限りのではあるが温かい料理を嬉々として作っていた。

なんだかんだとほぼ毎日ご飯の時間になると顔を出す大食漢の隠密の為にも物凄い量をこさえることになっていたのは余談ではあるが。

故に日々の買い物は欠かせず、夕鈴と出来うる限り共に居たいと願う黎翔はほぼ毎日買い物について回っていた。

 

 

 

その日も政務を早々に切り上げ戻ってきた黎翔は夕鈴と共に食材の買い出しに市場を歩いていた。

毎日頑張っている黎翔の為にと以前下町に居た頃の買い物に比べると随分豪華な買い出しで黎翔の両手はいっぱいだった。

良い食材を手に入れてホクホク顔の夕鈴を見つめ、自然黎翔も笑みをこぼす。

どこから見ても新婚にしか見えない二人は買い物を終え家路を急いでいた。

 

が、にこにこ笑っていた黎翔が急に黙り込み、ふぅ、と溜息をつく。

 

「ごめん、夕鈴。少し下がっていてくれる?」

 

黎翔は買ったものが無駄にならないよう端に置くと、夕鈴を背に庇い抜刀した。

 

「・・・っ、へ、陛下!」

「大丈夫。あと、陛下じゃないから!」

 

後ろに庇った夕鈴を振り返り悪戯な目を向ける。

 

「そ、それどころじゃないです!」

 

ふふふ、と笑うと黎翔は黒い影に振り返った。

 

「無粋な奴らだな。新婚夫婦の邪魔をするとは。馬に蹴られてみるか?」

「貴様に用はない!後ろの娘を此方に渡してもらおう。」

「・・・渡すと思うか?」

「・・っ!渡してもらえねば奪うまで!」

 

賊が刀を揺らめかせ黎翔に襲い掛かってきた。

剣先をうまく受け流しながら夕鈴のいる場所から離れていく。

 

「貴様ら、私が誰だかわかっていての所業か?」

「・・・」

「うわ~、ごっめ~ん。」

 

能天気な声と共に自称有能な隠密が落ちてきながら鞭で賊を薙ぎ払いあっという間に捕縛していく。

全てが終わると捕縛した賊を背に浩大は黎翔に拱手して頭を下げた。

 

「陛下、すまない。護衛の交代の隙間を狙われた。この罰は如何様にも。」

「そんなことより体系を見直せ。穴が開いてはいくら優秀なものとはいえ何の意味も成さぬ。」

「御意。すぐに取り掛かります。」

 

護衛の隙を突かれ章安区に賊の侵入を許してしまったことに責任を感じ、浩大は急いで対応策の為に去っていった。

 

「ごめん、夕鈴、大丈夫だった?」

 

黎翔は背後に庇っていた夕鈴に振り向いた。

 

と、目を見開く。

そこには商店街の皆が夕鈴の周りを取り囲むように立っていた。

 

「えっ?え~っとぉ~・・・」

「へ、李、李翔さん~。」

 

どうしたらいいかわからない夕鈴は黎翔に助けを求める視線をよこしてくるが黎翔とてどうすればよいのか考えあぐねていた。

賊を切ることはなかったものの、黎翔は抜刀したままであったし、夕鈴を庇っているところを見ると恐らく賊とやりあっているところも見られてしまっただろう。

 

 

 

どれくらいの間だったろう。しばらく商店街の皆と黎翔が睨み合い動けずにいた。

 

 

 

「なぁ、李翔さんよ。・・・じゃ、ねぇよな?あんた、狼陛下、じゃねぇのか?」

「お、おじさん!まさかそんなわけないじゃない。」

「じゃあ、なんで夕鈴ちゃんが賊に狙われるんだ?夕鈴ちゃんはずっと下町育ちだ。そんなことに巻き込まれるような子じゃないことは皆知ってる。」

「・・・」

「それに・・・、それに、李翔さん、あんたは陛下に似てる・・・。似てる、似てると話してはいたが、今のは・・・。そうなんだろう?だから夕鈴ちゃんが狙われたんだろ?なぁ、夕鈴ちゃん。あんたは後宮の悪女だったっていうのかい?」

「あ、あの、いえ、その・・・。」

 

商店街の皆の真剣な目に何と答えたらいいのかわからずに俯いてしまった。

何と答えようと真意は伝わらないように思えたから。

 

「夕鈴・・・。」

 

本当のことを言いたくて、でも言えなくて、皆から目を逸らした私に陛下が手を差し伸べる。

 

「だ、駄目だ!夕鈴ちゃんは渡せねぇ。あんたは信用ならねぇ。」

「な、何言ってるんです?陛下は立派なお方です!!」

 

陛下を罵る言葉に思わず叫んでしまった。

 

「あ・・・。」

 

さぁっと頭から血の気が引くのがわかる。

自分で爆弾発言をしたことに震えがきて足元ががくがくしていると陛下が人垣を掻き分けて私の腰を攫い胸の中に囲われた。

その表情は狼とも子犬ともとれる顔で。ちょっと苦笑いしながら私の額に唇を寄せた。

 

「ちょ、陛下!皆が見てます!」

「え?僕気にならないけど。」

「私が!皆が気にします!」

 

驚いて周りを見渡すと皆が揃いも揃って目を大きく見開き口をあんぐり開けてこちらを見ていた。

その様にため息をつくが陛下はどこ吹く風だ。

これが彼の通常仕様なのだから仕方ないのだろう、と思うことにする。

すると私を抱き寄せる腕の力が強まった。

 

「ふぅ~。そうか、やはり気が付いていたか。我が民は優秀で喜ばしいことだ。なぁ、夕鈴。」

「やはりって、陛下・・・。」

「うん?だって、僕、離宮からの帰り道、顔を隠してなかったし、産婆さんもすぐにわかったでしょう?」

「それは、そうですが・・・。」

「だから、想定範囲内だよ。というか、むしろそれでいいんだ。」

「あ、あの、それはいいとしてですね、さっきからコロコロと入れ替わってますが・・・。」

「ああ、それも良い。彼らは君の為に私の前に立ちはだかった。真摯に君を思っての事。そんな素晴らしい民を欺く必要はあるまい。」

「・・・」

「皆の者、その通りだ。李翔とは此方に来た時に使っている名。私の本当の名は珀黎翔。この国の王だ。」

 

陛下の言葉に私たちのやり取りを黙って聞いていた商店街の皆はざわつきだした。

 

「じゃ、じゃあ、夕鈴ちゃんは・・・。」

「その通りだ。夕鈴はわが唯一の愛しい妃だ。」

「で、でも、陛下には御正妃様が!」

「ああいるな。」

「なら何で・・・。」

「ふむ・・・。」

 

そこまで話すと陛下は顎に手を当てて口を閉ざしてしまった。

よくよく見ると商店街の皆の膝はガタガタと震えていて顔も青ざめている。

それでも陛下を詰問するのをやめない皆がありがたくて涙が出てきた。

陛下は私の瞳から零れ落ちた涙を親指で拭うと笑みを浮かべて皆に向き直った。

 

「皆を巻き込むのは本意ではない。夕鈴にはいずれ正妃になり立后して貰う。詳しくは言えないが、正妃は近々退くことになる。夕鈴は国母になる大事な身体。我が唯一であるのに違いない。」

「じゃ、じゃあ今のは・・・?」

「恐らく正妃の手の者ではないかと思う。確証はまだないが。戻り次第子細を聞く。」

「夕鈴ちゃんが狙われているってことだよな?」

「不甲斐ないがそういう事だ。」

「だからいつも几鍔たちが共に行動しているのか・・・。」

「・・・。」

 

何も言わない陛下に答えを是と得た皆は丸くなってぼそぼそと話をしだした。

時折、でも、とか、それなら、とか、だが、とか声が漏れてくるが何を話しているのかはよく聞こえない。

どうしたらいいのかわからずに相も変わらず陛下の腕の中に囲われたまま項垂れていた。

 

でも・・・。

でも、誰かを傷つけても、誰かの犠牲の上に成り立っている幸せだとしても、それは私が望んだことで、陛下一人が責任を背負うのは違う。

私は、私の意志で陛下と共に、永に過ごしたいと思ったのだ。

彼の隣で胸を張って前をしっかり向いて共に歩いていきたい、と。

 

「あの、あの、陛下。御手を離してください。私にも、お話しさせてください。」

 

陛下は抱きしめる力を弱めて顔を覗き込んできた。

目をしっかり開いて陛下を見つめ返すと、ふぅ、とため息をついて解放してくれた。

 

「本当にわが妃は思い通りにならぬな。」

 

苦笑いしながらも嬉しそうな声だった。

 

「申し訳ございません。ですが、皆さんが誤解しているのであれば、それを正しとう御座います。お許しくださいませ。」

 

李順さん仕込みの妃然とした所作で礼を取り笑みを浮かべると、黎翔様は目を見開き酷薄な笑みを浮かべ狼陛下で答えた。

 

「ふっ、さすがわが妃。願いを叶えよう。」

 

私の手を取り甲に唇を寄せながら妖艶に笑う陛下に腰が抜けそうになるのを踏ん張って、陛下の束縛から離れ皆の前に立つ。

 

「いろいろ、お話しできないことがあるのは事実です。事実ですが、陛下は素晴らしい方です。私は、陛下と出会って幸せをいっぱいもらいました。陛下が政務に励まれ、本当にこの国の為、私たち民の為に身を粉にして頑張ってくださっていることを知りました。・・・確かに、皆も知っている通り、辛い、ことも、ありましたが・・・。でも、でも、それでも、私がいい、と言ってくれる陛下と共に歩みたいのです。陛下は、私に無理強いはしていません。それだけは、誓って違います!私の意志で陛下と共に居ることを信じて欲しいのです。そしてこの御子の誕生を私たちは心から待ちわびています。ですから、大丈夫です。だから、だから、どうか秘密にしてもらえませんか?」

 

最後の方は涙声になっていたから皆に聞こえていたのかはわからなかったけれど自分の思いを言い切った。

陛下はまた私を抱き寄せて、頭の上に唇を寄せてくれた。

 

「秘密に、は聞けねぇな。」

「な、おじちゃん!」

「誤解すんな、夕鈴ちゃん。俺らは陛下の御世になってとても暮らしやすくなっていることを知ってる。商売もしやすくなった。物価も安定してるし、破落戸もだいぶ減った。それもこれも皆そこにいる陛下のおかげだ。」

「・・・」

「俺たちは、夕鈴ちゃんに幸せになってもらいてぇ。そして、狼陛下の御世には満足している。・・・つまり、だ。」

「つまり・・・?」

「区全体で護ればいいじゃねぇのか?ってことだ。」

「え?」

「だから、皆に言っちまった方が早いってことだ。」

「皆にって・・・。」

「ふっ、そんな手があるのか?」

 

今まで黙って聞いていた陛下が口を開いた。

 

「ああ。几鍔たちだけでは荷が重いだろう。皆で背負えば大した重さじゃねぇ。護る手も目も多い方がいいに決まってる。違うか?」

「・・・違わないな。ふぅ。全く、思いがけず味方が増えたってところか。」

「へ、いか~~~~っ。」

 

嬉しくて涙が溢れる。陛下のやってきたことはこんなに下町で受け入れられていたのだ。

 

「だから陛下じゃないって。」

「は、はい!黎翔様!」

「はは、本当に仲がいいのな。いろいろ考えるところはあるけど、いつも二人でいるところを見ているからな。疑う余地はない。あんたらはどこからどう見ても新婚さんだよ。」

 

商店街の皆もほっとして笑いあい、みんなで顔を合わせ頷き合った。

 

 

 

 

 

 

 

そして今に至る。

陛下は下町に居る時は穏やかな李翔として振る舞い、皆も特別扱いはしない。

普通に声をかけ、普通に商売相手をする。

ただ違うのは、いつも優しく見守っていてくれること。

とにかく気にかけてくれて、いろいろ差し入れをくれたり初産の私の相談にのってくれたりしてくれる。

それがとてもありがたくて、陛下と共にこの国の民の為にがんばろう、と最近よく話すようになった。

取り敢えずは僕たちが幸せにならなきゃね。と陛下がいたずらっ子の様に笑うから、そうですね。って笑顔で返して陛下に手を伸ばす。

 

 

 

この幸せが溢れて皆に届きますように。

 

 

 

 

***************

 

 

つづく

 

 

 

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コメント

続き転載されるの待ってました ヽ( 'ω' )ノ
朝から読んでしまった。朝から泣きそうでした (*´-`*)
また続き待ってます
花愛 さま

すんごくコメントが早くてびっくりしました!!(*'▽')
ありがとうございます!

朝から泣きそう・・・
やった!お涙ゲット←違う

転載がんばりまーす!!

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