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道程26

台風の影響で風が強いです。

 

意外にも強くて、街路樹がわっさわっさ揺れて、折れているところも。

 

強風域でも侮れない、今回の台風は来なくてよかった。 

 

雨がガーっと降るのでそれが嫌だなぁ。

 

綺麗に一日中晴れって全国的にも少なさそうですよね?

 

晴れないかなぁ。

 

晴れたらまた今度は日焼けするからやだっていうくせにね!(●´ω`●)

 

さて、場面は王宮に戻ります。 

 

********** 

 

 

 

 

 

王宮の回廊を正妃付きの侍女がらしからぬ急ぎ足で息を切らして駆けてきた。

 

「申し訳ございません。陛下はいらっしゃいますでしょうか?」

 

青ざめながら政務室の入口で入室の許可を伺ってくる。

 

「何事でございましょうか?陛下は御政務中であられますよ。」

 

李順が顔色を変えずに問い返すと侍女は青ざめながらも話し出した。

 

「あの、申し訳ございません。御正妃様がお倒れになりましたのでお伝えに参った次第でございます。」

「ああ、また・・・。そうですか。わかりました。もう下がってよろしいですよ。」

 

李順は何事もなかったかのように書簡に目を戻す。

 

「あ、あの・・・。」

「はい。まだ何か御用ですか?」

「お倒れになったことを陛下にお伝えしていただけますか?」

「ええ、御政務が終わり次第お伝えします。」

 

書簡から目を逸らさず答える。

 

同じ部屋にいるのだから黎翔にも聞こえているのに、まるでそこには居ないかのように、聞こえていないかのように振る舞っているの李順がおかしくて、黎翔は笑いをこらえることに必死だ。

 

「あの、すぐにお伝えしなくてもよろしいのでしょうか?」

「ええ、大丈夫です。陛下の御意志ですので後で何か貴女に咎が行くことはありません。ご安心して御下がりください。それから、今回は侍医を呼んでしっかりと診てもらってください。」

 

めったに女に笑みなどやらない李順が微笑んで答えると侍女は頬を赤く染めて下がっていった。

 

「お前の笑顔も役に立つもんだな。」

「こんなもの役に立たないならしませんよ。めんどくさい。変な勘違いをしないといいのですが。」

「はは、いいんじゃないのか?たまには女と戯れても。」

「何をおっしゃるんです!!まだやらなければならないことが山積みなんですよ!誰のせいだと思ってらっしゃるのですか!そんな戯言をおっしゃる暇があるのでしたら早く署名を済まされてください!どうせまたあちらへ行くのでしょう?」

「ふむ。それもそうだな。桜華はほっておけ。私の寵愛は全くもって失われたと印象付ける良い機会だ。顔を見に行く気にもならん。変な噂を立てられても困るからな。」

「左様ですね。後宮には渡られない方がよろしいと思います。恐らく・・・。」

「・・・だろうな。ふっ。待ちくたびれたぞ。」

「仕方御座いません。一応隣国の皇女であられるのですから、あちらがどういう思惑であろうとも事を荒立てるのは得策では御座いません。それに隣国への貸しができると思えば多少の時間は致し方ないかと・・・。」

「わかっている。その辺は任す。うまくやれよ。」

「御意。」

「さて、今日も早く帰らなくちゃな。今日の夕餉は肉饅頭なんだって!楽しみだな。」

 

先程までの冷たい気配はすっかり霧散して下町の愛しい娘に思いを馳せ子犬になる黎翔に目頭をつい押さえてしまった李順であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで終わりだな?李順。」

「はい、お疲れ様でした。下町に下りられるようになってから政務が捗って大変喜ばしいことです。」

「じゃあ、夕鈴に特別手当出すって言っとくね!」

「何をおっしゃるのです?彼女は今宿下がり中の妃。臨時花嫁の契約はもうありませんよ。」

「え~、夕鈴喜ぶと思ったのにな。」

「ふぅ。陛下、彼女は既に貴方の正式な妃ではありませんか。金銭のやり取りがあった方が良いとおっしゃるのであればそうしますが・・・。」

「いや、それで良い。いくら彼女が喜ぶと言っても、いつまでもそうだと寂しくなる・・・。」

「陛下・・・。早く行かないと肉饅頭が冷めますよ。」

「あ!そうだった!じゃあ、行ってくる。後は頼んだぞ・・・っ!はぁ~。」

「陛下?」

 

意気揚々と下町に向かおうとした黎翔の不機嫌すぎるため息に李順も部屋の出入り口を振り向く。

 

「陛下、申し訳ございませんが、侍医が此方へ参っております。陛下への謁見を申し出ておりますがいかがいたしましょう。」

 

黎翔の常以上の冷気に当てられた侍官が震えながらも彼の進路を塞いでいた。

 

「・・・急ぎか?」

「はっ、御正妃様の事でいらしたようですが。急ぎ御耳に入れたいことがあると申しております。」

「ふむ。では通せ。」

「行きそびれましたね?」

 

李順は笑いを押し殺して黎翔に気の毒そうな目を向けると、黎翔は舌打ちをする。

 

「全く!なんで今なんだ。はぁ、あと少し早く終わらせてれば。明日はもっと書簡の量を減らせ。」

「何をおっしゃるんです?たかが肉饅頭が冷めるだけではないですか!」

「たかがではない!大体夕鈴に会えない時間は地獄で過ごしているのと同じだ。私に死ねと言ってるのか?」

「はい、はい。では夕鈴殿が早くお戻りになれるように頑張ってくださいね。」

 

優秀な側近は黎翔の不機嫌などどこ吹く風で発破をかける。

兎に角正妃を穏便に追い出さなければ始まらないのだ。

 

「失礼いたします。」

 

侍医と元夕鈴付きであった、現在は正妃付きの侍女が入室し頭を垂れて拱手した。

 

「なんだ。」

 

下町に行きそびれたことで機嫌の悪い黎翔の気に当てられ二人は青ざめていく。

 

「陛下に申し上げます。御正妃様は御懐妊しております。そこからくる貧血でお倒れになられたと思われます。」

「ほう、懐妊と?」

「~~~はっ。」

 

正妃が白陽で療養中は閨を共に過ごさないよう黎翔に伝えていた侍医は脂汗が出るのを止めることができなかった。

自国で療養して戻ってきた後、正妃の殿へ黎翔が一度もわたっていないことは周知の事実になっていたこともあり、どう考えても懐妊はおかしい。

 

「あ、あの陛下・・・。」

 

部屋の静寂を破ったのは何故か侍医と共に来ていた侍女だった。

 

「なんだ?」

「御正妃様は、この事は陛下には言わないで欲しい、と何度も侍医に詰め寄っておりました。」

「そうか・・・。お前がここに来たことがばれたら困るのではないか?」

「あの、私は陛下と、・・・お妃様に仕えております。私は信じております。お妃様に再び会えると・・・。陛下、何かお役に立てることは御座いませんか?」

 

まさか臣下からそう言われることがあるとは思ってもみなかった黎翔と李順は目を合わせほくそ笑む。

これこそが知らない間に人を魅了してしまう夕鈴ならではのことだろう。

黎翔は胸に温かいものが満ち溢れていくような感覚に表情が緩む。

 

「では、侍医は私に報告をしていないふりをせよ。その者は正妃の侍女として今まで通り勤めよ。わが妃が戻った時其方が居れば心強いだろう。変な気は起こさぬよう。」

「有難きお言葉・・・。」

 

侍女は瞳いっぱいに涙をため何度も頷きながら低頭して出ていった。

 

「して、侍医よ。其方の目立てでは正妃はどんな感じだ。」

「恐らく6か月に入っているのではないかと思います。お腹も膨らんできております故。」

「・・・。」

「恐らくは自国へ里帰りしていた時、と思われます。」

 

侍医は青ざめたまま、それでも恐らくは陛下が欲しているだろうと思われる情報を正しく伝える。

 

「確実、だな?」

「はい、時期的に確実にそうだと申し上げられます。」

「そうか、わかった。ではもう下がれ。先程申し付けたことを忘れるな。」

「御意。」

 

ほっと息を吐き侍医は足早に退出していった。

 

「・・・しかし陛下、先程の侍女は・・・?」

「ああ、夕鈴付きだった者だ。よく仕えてくれているようだったが、あれほど夕鈴に好意を持っていたとはな。」

「夕鈴殿は後宮の主であった、という事でしょうね。」

「そうだな。彼女らの為にも夕鈴を此処に取り戻さねばな。」

「御意。」

「さて、じゃあ僕は夕鈴のとこに行ってくるね~。」

「これから御行きに成られるので?もう門も閉まっていると思いますが。」

「あー、うん。大丈夫。門番ももう僕が毎日通ってるの気が付いてるし。すぐに通してくれるんだ。思ったよりも味方が多くてびっくりだよね~。」

「はぁ、そうですか。もう面は割れてるのですか・・・。もう何を言っても無駄でしょうし、仕方ないんでしょうね。」

 

優秀な側近は遠い目をしつつも笑みを浮かべ、いそいそと嬉しそうに下町に向かった主を見送った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ガッシャーン、バリバリ。

 

後宮にものすごい音が鳴り響いていた。

 

女の金切声と共に。

 

「何故!何故黎翔は来ないのだ!!私が行けば来るなと言うのに、倒れても様子を見にも来ぬとはどういうことだ!お前!ちゃんと陛下に伝えたのか!!」

 

正妃は白陽側の侍女の襟元を掴み詰み寄る。

 

「は、はい。確かに伝えました。ですが、陛下は政務がお忙しいとのことで・・・。」

「政務だと?私の方が大事ではないのか?やはり・・・そうであるのか。」

 

力なく侍女を掴んでいた手を緩める。

 

黎翔が後宮に渡って来なくなり、此方から行けば戻れと言われ、仕方なく大人しく待っていたら唯一の存在を隠しているという噂があると聞いた。

 

その時に気が付いた。

 

もう既に心は黎翔に囚われていたのだと。

 

自国の駒としての生に否はないものの、できれば本当に愛した人の子を身籠りたかった。

それが望めぬというのであれば、せめて子だけは愛する人の子として産み落としたいと願った。

それならば、一度でもいいから閨を共にせねば、と画策するも全て叶わず。

倒れても臥せっても黎翔が此方に訪れることはなかった。

それどころか食事も共に取ることはなく、お茶を共にすることもない。

顔を見ることも叶わず、只々日々は流れていった。

だからといって時が待ってくれるわけもなく、お腹は少しずつ膨らみを増してきている。

焦って下町に居ると言われている唯一に刺客を送るも何の知らせもなく。

かと言って黎翔から叱責を受けることもなくただ焦りだけが濃くなっていくだけの毎日。

父王からの書簡では次代の白陽の王が自分の血を継ぐ者になることへの嬉意が綴られており、黎翔への侮蔑の言葉が書き連ねられている。

黎翔への想いに気が付いた今となっては、父王への憤りのない怒りに身が焼かれるようで日々鬱々として過ごしていた。

そして今日、侍医が遣われ、いつ黎翔の耳に懐妊が届いてもおかしくはなくなってしまった。

ばれてもいい、愛しい人の傍に居続けることを許してもらえるならば、最近ではそう思うようになっていた。

 

物思いに耽っていると侍女が息を切らしてやってきた。

 

「御正妃様、王宮より遣いの者がいらしまして、明日陛下が謁見の間にてお待ちしているとのことです。」

 

 

 

 

*************

 

 

つづく

 

 

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