• 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31

道程28

よしっ!

 

この調子で最後まで一気に上げようと思います! 

 

あと少しです。

 

お付き合いくださるとうれしいです(*‘ω‘ *) 

 

 

 

 

***************

 

 

 

 

桜華の懐妊が裏付けられたその日_____。

 

黎翔は王宮から夕鈴の自宅がある章安区への家路を急いでいた。

今日は夕鈴が肉汁たっぷりの饅頭を作って待っていてくれる約束だったが、桜華の件があり打ち合わせやなんやらでいつもより大分遅い帰りになってしまった。

夕鈴の事だから、懐妊しているといえども必ず起きて待っているだろう。

愛しい娘を想い自然と笑みが零れ足取りも早くなっていく。

 

「ただいま!!」

 

急いで家の門をくぐると嬉しそうに台所から顔を覗かせて夕鈴が出てきた。

 

「お帰りなさいませ!」

「うん、ただいま!!ごめんね、遅くなって。」

 

両腕に夕鈴を閉じ込めながら額に頬に口付けを落とす。

 

「れ、黎翔様!もう、恥ずかしいです・・・。」

 

子も成したし、身体を繋げてから長く歳月がたっているのに、未だにこんなことで恥じらい赤くなる夕鈴は本当に可愛い。

嬉しくて愛しくて頬と頬を合わせてすりすりしていると彼女にやんわりと胸を押し返された。

 

「だ、駄目です。今、肉饅頭を蒸してるんです。浩大がそろそろ来るよって教えてくれたから出来立てを頂いて欲しくて・・・。」

 

此方を見上げながら口を尖らせて離してくれるよう懇願する彼女はやっぱり破壊的に可愛くて、もう一度だけ腕に閉じ込め頭に口付けを落としてから解放すると大人しく卓に座って出てくるのを待った。

本当は付いて行ってずっとくっついていたいけど、

 

「お疲れになっているんですからお座りになってお待ちください!」

 

と可愛く叱られるとそれ以上我儘を言う気になれない。

どこまで夕鈴に溺れてるのかと自嘲してしまうが、それも悪くないと日々を過ごすうちに受け入れられるようになった。

元々彼女への気持ちが定まらず、見ない振りをしていた頃に比べると箍が外れたせいかどんどん好きになっている気がする。

こんな幸せが自分に用意されていたのならば、過去の色々な暗い闇はバランスを考えると仕方のないことかもしれないとまで思う。

それくらいに夕鈴という存在は自身の中で光り輝く存在であり、そういう者と出会えた奇跡に本当に感謝している。

だが同時に、これから先を共に手を取り歩んでいくためには、この闇を彼女に隠し続けるわけにはいかないだろう。

 

いつもより遅い夕餉を取り、彼女が入れてくれたお茶を飲みながら思案していた。

 

「黎翔様?」

「ん?」

「あの・・・、何かありましたか?」

「なんで?」

「先程から考え込んでらっしゃるので・・・。あの、私でよろしければ、お話していただけませんか?あっ、でも、っ、お役には立てないかもしれませんが・・・。」

 

心配そうな顔をしていたかと思うと青ざめて俯いてしまった。

コロコロ変わる君の表情を見ているだけで、僕がどれほど癒されているか君は知らないんだろうな。

腕を引っ張り膝の上へと誘うとお腹に気を付けて腕を回して抱き締め息を吸い込む。

 

「はあ~。ゆーりん、いい匂い。」

「や、なに?かがないでく~だ~さ~い~。」

 

涙目で後ろを向いて睨み付けてくるその仕草が愛おしくて顔中に口付けを落とす。

本当は真綿で包んで何も見せたくはないけれど、それはきっと君を傷つけるだろうから、意を決して話を切り出した。

 

「あのね、桜華の事なんだけど。」

「・・・はい。」

 

桜華の名を出した途端身体が強張る君が切なくて。

 

でも、決めたんだ。

 

共に。

 

だから、これ以上不安に思わなくて済むように手を強く握ると、君は力を抜いて身体を預けてきた。

 

「それで、今日遅くなっちゃったんだけど。」

「はい、それは・・・浩大から御正妃様の件で遅くなるってだけ聞きました。」

「えっとね、それで・・・。」

 

どう言っても誤解されそうで何と話せばよいか言葉に詰まってしまう。

本当に夕鈴にかかると狼陛下も形無しだな、なんて思う。

 

「う~ん、桜華がね、倒れたんだよね。」

「え?大丈夫ですか?」

 

素直に心配してくる君が可愛い反面、面白くないと感じてしまうことは黙っておこう。

 

「うん。貧血なんだって・・・懐妊からくる・・・。」

 

言ってしまった。

夕鈴の目が見開かれて明らかに驚いていることが見て取れる。

やっぱり誤解させてしまったかと、どう説明しようかと落ち込んでしまった。

 

「懐妊?・・・誰の御子ですか?誰かと不義密通とか言うやつですか?え?いつの間に?そんな事できるんですかね?黎翔様、大丈夫ですか?」

 

全く疑う事もなく、まっすぐな瞳で僕を見つめ返してくれる。

 

「黎翔様・・・?」

 

不思議そうに小首を傾げて僕を覗き込んでくる態はあまりにも可愛くて。

 

「ああ、これだから、君には全く勝てる気がしない。」

 

降参するしかない。

この全幅の信頼に応えなければ王でいる資格もないとすら思う。

 

「なんですか?それ?」

「ふふ、夕鈴って本当に僕のこと好きだよねって話。」

「なんですかそれ~!そんな話はしていません!!」

「うん、わかってる!僕も君が大好きだよ。」

「そ、そ、そんな事~~~~~。わ、私だってわかってます。信じています。」

 

じーっと見つめてくるうるうるとした瞳。

 

____囚われているのは私の方だな。

 

ふっ、と笑うと唇を重ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「____、という事なんだよ。」

「はぁ~、それは・・・。陛下、大変ですね。」

「陛下になってる・・・。」

「あ!す、すいません!つい・・・。王宮の話でしたので。」

「ま、いいけどね。」

 

事の次第を話すと夕鈴は静かにじっと聞いていた。

時に目に涙を溜めて何かを言いたそうに唇を動かしていたけど、最後まで何も言わずに聞いていた。

優しい彼女の事だから、きっと桜華にも同情したのだろう。

でもそれを口にしないと彼女が決めたのならば、僕はそれを受け入れ、彼女がこれ以上苦しまないように頑張ろうと思う。

それが彼女の決意の表れだろうから。

 

「でさ、明日なんだけど、迎えを寄越すから、几鍔たちと一緒に王宮に来て欲しいんだ。」

「え?だって明日は桜華様の件でお忙しいのでは?」

「うん。それはそれ。でね、夕鈴が来ないと駄目なことがあってさ。お願い。ね?」

 

彼女がお願いに弱いことは知っているので殊更弱った顔をして両手を合わせ拝む。

 

「わ、わ、黎翔様。王様がやめてください!行きます!行きますから!!」

 

ふふふ、やっぱり夕鈴は可愛いなぁ。焦った顔も可愛い。

 

「じゃあ、う~んと、克右を寄越すよ。明日も忙しいし、今日はもう寝よう。」

 

そう言って、夕鈴を抱きかかえて寝台へ向かう。

 

「もう、歩けるって言ってますのに。」

 

誰も見るわけでもないのに顔を真っ赤にして毎日同じように反論してくるのも可愛い。

 

「僕が抱き締めたいだけだからいいでしょ?」

「~~~~~。」

 

真っ赤な顔を僕の胸に埋めて首の後ろに両腕を回してくる君に温かなものが心に広がる。

寝台にゆっくり下ろして共に掛け布に入るとお腹に当たらないように後ろから抱きしめた。

 

「お休み、僕のお嫁さん。」

「お休みなさいませ。旦那様。」

 

悪戯っ子の様に笑いあって、優しい眠りに落ちた。

 

 

 

 

 

*************

 

 

 

 

 

桜華が引き摺られる様に出て行った謁見の間は沈黙が流れていた。

桜華の奇声とも狂声とも取れる叫び声が遠くなり消え去ってもなお沈黙を守る陛下の次の言の葉を臣下は息を飲んで待ち続けていた。

 

重い空気に耐えかねて臣下の一人が口を開けた。

 

「陛下、僭越ながら、此度の件、これで収拾したという事でよろしいかと存じますが・・・。」

「・・・」

「後宮はまた妃の居らぬ張りぼてになってしまいました。もしよろしければ、いえ、是非に、後宮を整える役を私に担わせていただきたいと存じます。」

 

前回の後宮入りの期を逃した高官はこれ幸いとばかりに先手に出ようと勇み出た。

 

「・・・まぁ、待て。お前たちは今日の予定が何だったか覚えていないのか?」

 

黎翔は相変わらず玉座にゆったりと座り大きく足を組んで酷薄な笑みを浮かべ皆を見まわした。

 

桜華が出て行った後を追う様に退席していた李順が戻ってきて黎翔に耳打ちをすると、黎翔は今まで不機嫌全開で難しい顔をしていたのを瞬時王の威厳を纏った酷薄な笑顔へと変化させた。

黎翔がその場で立ち上がり手を上げると、太鼓が鳴り響き外へと続く扉が開け放たれた。

と同時に、太陽の光が部屋に広がり玉座に向かって一筋の光を作り出す。

 

その光景を見ていた大臣、高官たちは声高に話し出した。

 

「・・・こ、これは・・・!!」

「太陽神の祝福を授けられたという事か?」

「・・・っ」

 

今日は4年に一度、謁見の間の玉座に光が差す日であり、この日に光が差さなかった王の時代は長くは続かないと言い伝えられている大事な行事の日であった。

またそれは正妃を伴って行う行事であり、光が差さない場合は正妃の責任を取らされ斬首刑になった者もいると言うあまり目出度くもない歴史もあるものであった。

 

「陛下、此度祝福を授けられたこと誠に目出度きこと。言祝ぎを申し上げます。」

 

皆がざわつく中柳、氾両大臣が先んじて拱手し頭を垂れて祝いの言葉を紡ぐと、呆然と立ち尽くしていた臣下達も我に返り次々と言祝ぎを申し出た。

 

「しかし、何やら騒がしくはないか?」

「この目出度き時に何事であるか?」

 

謁見の間に居並ぶ臣下達は自分たちの言祝ぎが終わってもなおざわついている気配に何事かと顔を見合わせる。

 

再び太鼓が鳴り響くと、先程まで真っ直ぐに玉座を照らしていた光線に一筋の影が差した。

 

皆の視線が扉の方へ向けられると太陽を背に美しく着飾った一人の女性が侍女に手を引かれ入ってきた。

 

「あ、あれは!!」

「っ、・・・自ら退宮した妃ではないか!」

「何故大切な行事であるこの場に!!」

「たかが元寵妃が臨席してよいものではない!早急に退室されよ!!」

 

久しぶりに現れた元寵妃に臣下達の多くは侮蔑の言葉を送り、下がるよう進言した。

 

「今、何と申した?わが后を愚弄したものは誰だ?」

 

黎翔の冷たく凍るような声が響き渡ると臣下の多くは口を閉ざし青ざめて俯くことしか出来ない。

 

「陛下、后・・・、と申されましたか?」

 

やはりここでも常に落ち着き払った態度である氾大臣が口を開いた。

 

「ああ。我が唯一だ。后以外あり得まい。」

「そうであられましたか。本日の行事は御正妃さまと執り行うのが常ですから少々心配しておりましたが・・・。」

「大事ない。・・・夕鈴、ここへ。」

 

黎翔が手を差し出すと夕鈴は久しぶりの妃然とした笑顔を引きつりながらも湛え、手を重ね一段高い所へ上った。

見ると玉座の傍に明らかに新しい正妃の座が整えられており、これはもう決定事項であることを皆に見せつけていた。

 

「し、しかしながら、陛下。この方を妃に迎えられ寵愛するのは構いませんが、何も持たない女性が一国の正妃になど到底認められるものではありません!」

 

先程後宮を整える役を買って出ようと申し出た高官が食い下がる。

 

「何も持たぬ、と?」

 

黎翔は夕鈴への甘い笑みをすっと変化させ獲物を見据えるかのような目付きでその高官を睨み付けるが高官も自分の家を反映させるために必死である。

 

「はっ!その娘、庶民の出だと言うではありませんか!そんな陛下の為にならぬ妃など今まで通り下位の妃として留め置き、陛下の為、国の為となる素晴らしい姫を娶るべきかと存じ上げます。」

「ふむ。お前の言う事も尤もではあるな。がしかし、私は此度の後宮での諍い事にとても心を痛めておるのだ。あの様な事が起こることは私の本意ではない。無駄に命を散らす必要などないのだ。桜華はともかく、他の者は皆我が白陽の大事な民であった。二度とあの様な事が起こらぬよう、私は妃は一人でよいと思うに至ったというわけだ。妃の腹には私の子が居る。彼女が国母だ。にも拘らず正妃にしない、と言うのは道理に適わぬだろう?」

 

黎翔の言葉を聞いて部屋にいる全ての者の目が夕鈴のお腹に注がれた。

お腹が目立たぬようゆったりした衣装に身を包んでいた上に、急に現れた元寵妃に驚いたこともあり、お腹の膨らみに気が付かなかったのだ。

愛おしげに夕鈴の腹に目をやり甘い笑顔を向ける黎翔を見て臣下達は諦めざるを得ないことをやっと悟ったのである。

元より、前回の後宮での件で釘を刺されていた柳、氾両大臣が何も言わず恭順の意を表していることにこれ以上否を唱えることも利口ではないと判断した様であった。

 

「それでは、皆様、夕鈴様を白陽国王、珀黎翔陛下の御正妃様にお迎えする、という事でよろしいですね。」

 

畳みかけるように李順が臣下たちに問うと

 

「「「「「「御意!!陛下、御正妃様、おめでとうございます!!」」」」」」

 

何十人もの声が重なり恭順の意を示した。

すると急に扉の向こうから地を這うような声が響いてきた。

 

「やった~!」

「おめでとう!!」

「陛下、夕鈴ばんざ~い!!」

「幸せになれよ!!」

 

多くの言祝ぎの言葉が次から次へと聞こえてくる。

 

「ふふ、困りましたね。民の心を此処までつかんでしまうとは。」

 

氾大臣が不敵な笑みを浮かべて言うと、

 

「何も持たぬのだ。これくらいはして貰わねばな。」

 

柳大臣は苦虫を噛み潰したように言葉を零した。

 

 

 

 

 

そうして夕鈴は後宮へ戻った。

 

 

 

 

 

____わけではなかった。

 

 

 

 

 

**************

 

 

 

つづく

 

簡単には帰らなかったりして( *´艸`)

スポンサーサイト

コメント

コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する