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柔らかく優しく甘く ②

そしてこちらの転載です(*´ω`*)

 

なんで中々進まないの?という疑問は横においてください←

 

さぁ、行ってらっしゃいませ!

 

 

 

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「おっ、うまい!今日のごはんはうまいな!誰が作ったんだ?」

「はい!私です!」

 

給仕をしながら夕鈴が振り返って答える。

 

「嬢ちゃんかい?見ない顔だな。」

「はい!今日から此方に御世話になってます。汀夕鈴と申します。よろしくお願いします!」

「そうかい。可愛いうえに料理も上手と来たか!良い新人が入ったな!」

「ありがとうございます!頑張ります!!」

 

くるくると動き回りながら調子よく答えている夕鈴に使用人の男たちの顔が綻ぶ。

 

「ちょっと!あんたたち!夕鈴ちゃんは弟の為に稼がなきゃいけないんだから、変な気は起こしちゃだめよ!」

「え~、いいじゃねぇか。」

 

顔なじみの使用人同士、夕鈴の事で会話が弾んでいた。

 

「あ、あの、変な気って何ですか?」

「・・・っ、ぶっ、あっはっははは~~~!!!」

 

夕鈴のにぶちん過ぎる問いかけに使用人たちから盛大な笑いが起こった。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

氾家で働き始めてしばらく。

屋敷の内部にも慣れ、仕事にも慣れて来て、少しの時間ができるようになっていた。

 

夕鈴は余る時間がもったいないと、普通なら休み時間に回すのだろうけど、そこは彼女らしく、一緒に働く仲間の為に小腹が空いたときにつまめるものを作っていた。

一口で放り込める大きさに作った、野菜をたっぷり入れたお焼きや饅頭、餡をたっぷり詰めた蒸しパンなど、下町では当たり前に食べられるものだ。

 

氾家ではその日使用人用に用意された食材をその日のうちに使い切って良いと言われていた。

たまにご主人様に用意された良い食材であっても、ご主人様が気に入らなかったり、急な予定変更で余ったりしたものが使用人用として回ってくることもままあって。

駄目にしてしまうのももったいないと、夕鈴は全ての食材を使い切れるよう工夫していた。

そこは主婦歴の長い自分の腕の見せ所だと思っていた。

 

が、如何せん。

名門氾家だけあって、余るときの量も結構な量で。

そこで思いついたのが、つまみ易いものを作る事であった。

また汁の出ない持ち運びやすいものにすれば、皆持って帰れる、と結構評判であった。

 

「ふんふんふーん。」

 

その日もまた、夕鈴は余った高級食材で簡単なものを作っていた。

 

「こんなものが余るなんて、さすが貴族は違うわ。」

 

今日はお肉が余ったと使用人に回って来ていた。

昼食でも使ったのだがまだあったので、夕鈴は肉饅頭をこさえていた。

野菜もたっぷり入れて、かさ増しすることも忘れない。

これなら、帰るときにでも小腹に入れられるだろうと考えての事だった。

 

「わぁ、とても良い匂いですね。」

 

一人だと思っていた作業場に急に可愛らしい声が響いて驚いて振り向く。

 

「あ、びっくりさせてしまいましたわね。あまりにも良い匂いでしたので、つい釣られて来てしまいましたわ。」

 

見るとそこには可愛らしい少女が立っていた。

一見しただけでわかる質の良い衣服を身に纏い、髪の毛は双環に結われ、これまたいくらなんだか想像もつかないくらい煌びやかな装飾品が頭を飾っている。

 

誰なのかは知らなかったが、兎に角身分はずっと上と判断した夕鈴は頭を垂れた。

 

「あら、そんな。頭を上げて?私は紅珠。ここの屋敷の主人の娘よ。あなたは・・・?」

「あ!すみません!!私は汀夕鈴と申します。最近此方に下女としてお世話になってます。お嬢様とは知らず失礼をいたしました。」

「いいの。私はいつもは別邸に居るんですもの。知らなくても仕方のないことよ。それより・・・この良い匂いのする食べ物は何?」

「これは肉饅頭です。御存じないですか?下町では一般的な、いわゆる庶民の味です。」

「庶民の味・・・。こんなに良い匂いなのに私は見たことも口にしたこともありませんわ。・・・そうですわ!!夕鈴、それ1つ私に頂けないかしら?」

「へ?これ、ですか?」

「ええ!私食べてみたいわ。」

 

料理長が作ったものならば未だしも、素人の自分が作った庶民料理などお嬢様に食べさせるわけにはいかない。

どうにか断ろうと夕鈴は決意した。

 

「でも、お嬢様のお口に入れるようなものでは・・・。」

「いいの!私がいいと言ってるのよ。御父様でも止めることは出来ませんわ!」

 

何故か鼻息荒く言い放った貴族の姫様が可愛らしく、夕鈴は知らず笑みが零れた。

先程の決意もどこへやら、気が付くと蒸したての肉饅頭を藁半紙で包み差し出していた。

 

「熱いのでお気を付け下さい。それから、たくさんあるので、お気に召すかはわかりませんが、幾つか一緒にお包みしております。お気に召さない場合は処分していただいてよろしいですので。」

「わぁ!ありがとう!早速頂いてまいりますわ。」

 

嬉しそうに下女である夕鈴にきちんとお礼を言って踵を返すお嬢様にあっけにとられつつも、こんな下働きの者にさえお礼を言ってくれるお嬢様のファンになった夕鈴であった。

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

「夕鈴!夕鈴!ああ、ここに居たのかい。」

「はい、どうしました?」

 

使用人頭が大声で夕鈴を探し回っていた。

 

「夕鈴!よくわからないんだけどね、お嬢様があんたを探してるみたいなんだよ。」

「へ?」

「会ったことがあるのかい?」

「え、ええ。この間、肉饅頭が良い匂いだとおっしゃるので分けて差し上げましたが・・・。」

「ま、まさか、美味しくなかったとかって、く、苦情じゃないだろうね・・・?」

「ええ?そ、そんな・・・、ま、まさか、ですよ、ね・・・。」

「と、取り敢えずお待ちになってらっしゃるから急いでいきな。」

「わ、わかりました。」

 

今日も何かつまめるものでも拵えよう、とウキウキだった夕鈴の心は今やどよーんと落ち込んでいた。

もしも苦情だとしたら、折角普通よりも良いお給金の貰えるこの御屋敷で働けなくなるかもしれない。

そうしたら、青慎の学問所にかかるお金が・・・。

 

考えれば考えるほど思考は落ち込んでいき、紅珠が待つ部屋の前に付いたころには項垂れて涙が零れそうになっていた。

 

「・・・失礼いたします。夕鈴です。」

 

バターン。

 

夕鈴が言うが早いか否か、凄まじいスピードで扉が開き紅珠が飛び出してきた。

 

「夕鈴!!」

 

自分の名を呼びながら紅珠が嬉しそうな顔で飛びついて来て何が何だか分からなくクラクラしてしまう。

 

「紅珠・・・夕鈴が驚いているよ。」

「ああ、夕鈴!貴女ですわね。ごめんなさい、驚かせてしまって。此方へ。」

 

紅珠が夕鈴の手を引き部屋の中の椅子のところまで誘うと座るように促した。

 

「紅珠、君はいつも思い付きで行動しすぎる。そこが可愛いのだが。」

「嫌ですわ、お兄様ったら。」

「あ、あの・・・。」

 

何やら気が付いたら座っていたが、見目麗しい紅珠の側にこれまた優雅な美丈夫が佇んでいる。

 

「ああ、僕は水月、紅珠の兄になります。よろしくね。」

「は、はい!私は汀夕鈴と申します。あの、下女としてこちらにお世話になってます。ですが、あの、私をお呼びとお聞きしたのですが。」

「そうでしたわ!夕鈴!この間の肉饅頭ですのよ!」

「っ、お、お口に合いませんでしたか?申し訳ありません!!あ、あの・・・。」

「ぜんっぜん、違いますわ!とても美味しかったんですの。それで、また作っていただきたくてこうして来たのですわ!折角なので兄にも食べていただきたくて。」

「僕は別に・・・。」

「お兄様!夕鈴の作る肉饅頭はとっても美味しいんですのよ!私、黎翔様にも食べていただきたくて!!」

「ああ、陛下にね。では僕は毒見・・・いや失礼、味見係かい?」

「そうなんですの!お兄様が美味しいとおっしゃられるなら、黎翔様にさし上げても差し支えないかと思って。」

「ふぅ。仕方ない。本当は料理長が作ったもの以外あまり口に入れたくはないのだがね。可愛い妹の頼みだし。夕鈴、僕のぶんもお願いするよ。」

 

色々とおかしな会話がされていた気がする。

毒見って、毒見?

黎翔様・・・って?誰?っていうか、水月様は『陛下』っておっしゃらなかったかしら?

『陛下』?

『陛下』って、陛下?

『黎翔様』って、え?国王陛下?

ああ!確か、珀黎翔って・・・。

ええ~~~~~!!!!!

 

「あら?夕鈴?」

「ん?なにか目を回してるね。正気に戻ってくれないかな?」

「嫌ですわ、お兄様。少しくらいは心配してください。夕鈴の作ったものがいいんですから。」

「はい、はい。ではお茶でも入れて差し上げようか。」

「それはいいですわ。お兄様の入れたお茶は世界一美味しいですものね。」

「僕をおだてて何をさせようと企んでいるのかな?この御姫様は。」

「ふふ、嫌ですわ、お兄様ったら。お味見と助言だけでよろしいのですよ。」

 

そんなキラキラな会話がされている横で夕鈴の頭は許容量をオーバーし、中々正気を取り戻すことは出来ずにいた。

 

 

 

 

 

*************

 

 

続く

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