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柔らかく優しく甘く③

ということで←どういうこと?

 

こちらも続きを持ってきました!

 

今度こそ寝ます!!

 

皆さまおやすみなさい!

 

 

 

 

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「陛下、今日は御呼び頂き、心から嬉しゅうございます。」

 

王宮の庭園に設えられた四阿で優雅に礼を取っているのは氾家長姫氾紅珠である。

お嬢様然とした麗しい笑顔で頬を赤く染め上げ、熱に浮かされたかのような瞳を黎翔に向けていた。

日々政務が忙しいことを理由に中々会えないという事にしてある黎翔から、珍しく声が掛かり、嬉しさが溢れ出ているのが遠目にも見て取れるくらいだ。

 

「いや、なに、今日は大切な話があったのでな。急に来てもらってすまない。」

 

普通王と言えば誰かに謝ったり、礼をのべる必要などない。

むしろそうなると王にとって特別な人物であるという事だ。

黎翔にとってはどうでもいい女である紅珠ではあったが、正妃として迎えるだろう姫であることから表立っては大事にしているように見える様他者とは違う対応をしていた。

 

なので、王宮の誰からも陛下の紅珠への対応は寵妃そのものであると受け取られていた。

 

「いえ、本日はお忙しい最中御呼びしていただき、約束通り琴をお聴かせすることができて、本当に嬉しゅうございます。あの、いかがでしたか?」

「ああ、君らしい可愛らしくも美しい音色であったな。これからも度々弾いて私の心を癒してくれ。」

「あ、ありがとうございます・・・。」

 

甘い褒め言葉に顔を赤らめて俯く紅珠を黎翔は甘い笑みを浮かべつつ心は冷静に見つめていた。

 

「して、紅珠。これはいかがした?」

 

黎翔が卓の上に用意されていた皿に目をやった。

 

「あ!これはですね、肉饅頭、と言うのですわ!なんでも庶民の味なんだそうです。」

 

実は内緒でよく下町に下りている黎翔には馴染みのある食べ物ではあったがここでそれを言うわけにもいかない。

 

「ほう、庶民の・・・。しかし、それを何故君が持って来たのだ?」

「御父上の屋敷に伺った時に良い匂いがしていて。分けていただいたらとても美味しかったのですわ。庶民の味でもこんなにおいしいのかって、私感動いたしましたの!それで、黎翔様にも食べていただきたくて家の料理長に作らせたのですけど、何回作っても食べた味には劣るものですから。御父様の屋敷の下女に作らせたのですわ!お兄様もお味見して大丈夫と仰って下さいましたし!是非頂いてくださいませ。」

 

両手を合わせ胸元で握りしめながら早く口にして欲しそうに見つめてくる紅珠がおかしくて、吹き出しそうになるのを堪えながら肉饅頭に手を伸ばし一口齧った。

 

「優しい味だな。」

「そうですよね。彼女の優しさが入っているような、そんなお味ですの。」

「紅珠は、これを作った下女と話をしたことがあるのか?」

「ええ!もちろんですわ!」

「君が?普通接点はなかろう?」

「そうなのですけど・・・。あまり良い匂いでしたものですから、ついお声を掛けてしまったのですわ。それからも見かけるたびに少しずつお話して。下女ですけど、とても可愛らしくて頼れるお姉さんって感じですわ。」

「同性とは言え妬けるな。君に頼られるのはいつでも私であって欲しいものだ。」

「・・・黎翔様。勿論、黎翔様が一番ですわ。」

 

嬉しそうに微笑む紅珠を見ても心のどこにも響かない。

 

____はぁ、安いもんだな、私の言葉も。

____ただ表面だけを整えるために迎える姫に上っ面の言葉を紡いで中身がない。

____全く。この王宮と何ら変わりはしない。

 

そんなことを考えているとは微塵も感じさせないように振る舞うのも当たり前ではある。

が、面倒なことには変わりはなく。

さっさと本題を話すことにした。

 

「実はね、紅珠。父上から聞いていると思うが・・・」

「はい。あの件ですよね。伺っております。」

「それで、今人選を行っているのだが。」

「ええ。私、先ほどお話した下女を御父様に推薦しましたの。」

「・・・下女を、か?」

「はい。彼女なら私、信用も信頼もしております。安心して黎翔様の御側に仕えさせることができますもの。」

「そうか。要らぬ心労をかけるが君を想わない日はない。君が望むならばその娘を迎えよう。」

「よろしいのですか?そうだと安心です。とても可愛らしいんですのよ。ちょっと妬けちゃいますけど。あ!でも、そうですね。もし後宮に入ったとしても、お妃様は私1人というわけではありませんものね・・・。予行練習だと思って私も我慢いたしますわ。」

「頼もしいな。これからもよろしく頼む。」

「はい!」

 

「陛下、そろそろお時間です。」

 

話が終わったところでうまい具合に李順がやってきた。

 

「李順、聞いていたか?」

「はい。そのように。」

「李順様、夕鈴をよろしくお願いしますね。それでは、黎翔様、失礼いたします。」

 

そう言うと紅珠は優雅に礼を取り女官に付き従われ去って行った。

見えなくなるまで何度も何度も振り返り黎翔に目礼しながら。

 

「陛下、紅珠様のおっしゃられる方でよろしいんですか?」

「それで良い。彼女の望む様にさせろ。ただでさえ正妃候補の彼女が入る前に入れるんだ。」

「しかし、全くの庶民の様ですよ。」

「もう調べたのか?」

「ええ。既に氾大臣より打診がありましたから。汀夕鈴。下級役人の娘です。17才という事で、多少嫁ぎ遅れではありますが、実直で真面目な性格、勤務態度も良く、明るい性格で同僚からも好かれているようですね。後・・・。」

「後・・・?」

「官吏を目指している弟がいるそうです。その為に入用だと。」

「ふん。つまり金が必要という事か。都合がいいな。」

「はい。恐らく金につられて引き受けるのではないかと・・・。」

「しかし、金につられてくる娘など後でめんどくさいことになるのではないか?」

「そうなったらなったでいかようにもできましょう?」

「それもそうだな。」

「大体、囮ですよ。命があるかもわかりません。」

「ふっ。お前も大概だな。」

 

目的の為には手段を選ばない、まさに狼陛下とその側近の素顔がそこにあった。

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

うあああああ~~~~~~~。

確かに引き受けるとは言いましたよ!

言ったけど、こんなに怖いとは思わなかったのよ~~~。

 

玉座から見下ろす狼陛下は噂通り、いや、噂以上の威圧感でこちらを凝視している気がする。

頭を垂れているのでよくはわからないけど。

 

「今日から暫く、そうですね。目的が達成されるまで、ですが、陛下の寵妃として後宮で暮らしていただきます。」

「~~~は、い。」

「聞いてらっしゃるんですか!」

「は、はい!!」

 

玉座に座る陛下も怖いけど、さっきから眼鏡を光らせて厳しい言葉を投げてくる陛下の側近さんという方も怖い。

 

「なんで貴女が此処に来たかわかってますよね?」

「は、はい!お嬢様の代わりに、お嬢様に害をなすものを炙り出すための囮です!!」

「よろしい。では陛下に御挨拶なさい。」

「は、はい!拝顔叶いまして光栄でございます。私は汀・・・。」

 

しかし夕鈴が最後まで言う前に黎翔が遮った。

 

「名などよい。呼ぶことはないからな。君はただ私の寵妃である振りをすれば良い。人前で妃の名を呼ぶことはない。よって君の名は知らずともよい。わかったらもう下がれ。」

「~~~~~」

 

何なのよ!

王様だか狼だか知らないけど、挨拶くらいさせなさいってのよ。

こんなんで寵妃とか演じろとか無理っつーの。

 

悔しくて涙が零れそうになる。

青慎の為に少しでもお金を稼ぎたくて、それにいつも庶民の私なんかに優しく接してくださるお嬢様に懇願されたこともあってこの仕事を引き受けたがもう帰りたくなっていた。

 

「では夕鈴殿。貴女が後宮で過ごすにあたっての協力者を紹介しますのでついて来て下さい。」

 

帰りたいけれど、可愛い弟の顔が浮かぶ。

 

貴族ではない者が良い学問所に通い、必要な本等を揃えるのは本当に大変で。

青慎は古書等を使って勉強していた。

どうにかそうやって揃えられたとしても、ぼろぼろになった本はあちらこちら頁が欠けていたり字が薄くなっていたりして。

同じ学問所に通う貴族の子息に頭を下げて書き写させてもらっているようだった。

青慎は言ってはこないが、恐らく嫌味を言われたこともあるだろう。

それでも夕鈴が一生懸命働いてなんとか用足ししていることを知っているので必死になって勉強している可愛い弟。

その弟に、少しでも良い状態の書物を買ってあげたい。

心置きなく勉学に励んでもらいたい。

 

その為にはこの仕事はとても都合が良かった。

そうだ。自分で決めたのだ。

 

狼陛下は本当に怖い。

けれど、陛下のおかげで私のような娘が朝早くから夜暗くなるまで働いても安心して道を歩けるようになった。

食べ物にも贅沢さえしなければ毎日市には新鮮な食糧が並ぶ。

怖いのさえ我慢すれば、陛下は悪い人ではないはずだ。

 

そしてこれはどちらにとっても都合のよい契約だった。

 

「夕鈴殿!聞いてますか!」

「は、はい!今参ります!!」

 

夕鈴は決意も新たに歩みだした。

 

 

 

******************** 

 

 

つづく

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