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柔らかく優しく甘く④

おはようございます!

 

自分が先を読みたくなっちゃって・・・←おいっ

続きを持ってきました。

 

年末の大掃除の合間の息抜きにでも読んで頂けたら嬉しいです!

 

では、続きです~。 

 

 

 

 

 

***************

 

 

右を向いても左を向いても見たこともないような豪華で繊細な装飾が施された回廊。

確かに豪華だけれどあまり手入れがされていないようにも見え、夕鈴は李順の後ろを歩きながらも主婦魂がうずうずとして落ち着かなかった。

 

「夕鈴殿、お入りなさい。」

 

陛下の側近という李順様に連れられて来た後宮と思われる場所の一室に入ると人影があった。

 

「こちらが貴女が妃として過ごすことを知っている者たちになります。何かある際はこの2人をまず探しなさい。」

「はい。えっと~。」

「こちらのちんちくりんなおじいさんが後宮管理人の張元老師、あっちの窓際に居る者は陛下の隠密の浩大です。」

「あ、管理人さんと隠密さん、ですか。あの、私は汀夕鈴と申します。どうぞよろしくお願いします。」

「なんじゃい!折角偽物といっても妃が来ると言うから楽しみにしとったのに、色恋も知らなさそうな生娘ではないか!もう少し陛下をその気にさせるような妖艶な女子はおらんのか!」

「その気になられては困ります。あくまでも臨時花嫁です。あなたも老師の口車に乗せられないよう、重々気を付けてくださいよ。・・・っふ、と言っても、貴女なら心配する必要もなさそうで良かったですが。」

 

何気に酷いことをさらっと言われた気がする。

そりゃあ嫁ぎ遅れだけど酷い!

まぁ、あの狼陛下に食べられたら怖いから陛下の趣味じゃないなら一安心かもしれないけど。

 

「李順さん、それひっどくねぇ。陛下の趣味もわかんねぇよ。なぁ、りんりんちゃん!気にすんなよ!」

「り、りんりんちゃん?」

「うん!オレ大ちゃんね!陛下の優秀な隠密。よろしくな!」

「はぁ。よろしくお願いします。だ、いちゃん?」

「お!そうそう、大ちゃんね。あっちの老師はじっちゃん、でいいよね。」

「駄目じゃ!仮でも妃ならば老師と呼んでもらおうか。」

「えと、では、老師、と大ちゃん、よろしくお願いします。」

「おう!よろしくな!」

「少しはお色気を纏えるよう頑張るのじゃな。」

「だからそんな仕事じゃありません!!第一、怖くて顔も見てないし、演技だって言われても、できるかわかりませんよ。」

「顔?見てないの?」

「先程ご挨拶の時に拝顔されたのではないのですか?」

 

6つの目が夕鈴に注がれた。

どの目にも疑問の色が浮かんでいる。

 

「いえ、あの・・・。」

「はっきり仰い!!」

「は、はい~~~。あの、その、怖くて、ちゃんと見れなくてですね。その~。」

 

眼鏡の側近さんが睨んできて怖すぎてうまくしゃべれない~。

 

「まぁ、まぁ、李順サン、そんなに睨んだら話せないでしょ?りんりんちゃん、ゆっくりでいいよ。」

「は、はい!あの、それで、顔を拝見することは恐れ多かったので、口元を見ていました。」

「ああ、そういう事ですか。わかりました。別にお顔を見ずとも演技に支障は御座いませんでしょう。それで構いませんよ。」

「っ、あ、ありがとうございます!がんばってみます!」

「頑張ってみる、じゃありません。頑張ります!が正しいです。」

「はぁ、頑張ります・・・。」

「よろしい!それでは、後宮の事は老師に訪ねてください。私は政務に戻らせていただきますので。では老師、頼みましたよ。」

「おお、任せておけ。まずは房中術から・・・。」

「・・・老師?」

 

いくら釘を刺そうとも懲りることのない老師を李順は眼鏡を光らせて睨み付けた。

 

「う、うむ。わかっておる!冗談じゃ。」

「あ、ちょっと待ってください!李順様!!」

「なんです?仮にも妃なのですから、もう少しお淑やかに話していただきたいものですね。」

「それは、・・・済みません。それでですね、ここはお掃除とかはどうされているのですか?」

「どう、と申しますと?」

「こちらまでくる間、素晴らしい装飾が施された回廊を通ってきましたが、ちょっと、あの、なんて言うか・・・。」

「・・・貴女は私が先ほど言ったことをもうお忘れですか?その頭は飾りですか?」

「っ、す、すみません。」

「わかったらよろしい。仰い。」

「はい!失礼かとは思ったのですが、手入れが行き届いてないように感じました。」

「・・・で?」

「ですから、あの、その・・・。」

 

ひぃっ!怖い~。睨まないで~。

ちゃんと話すから!!

 

「ふぅ。あの!掃除!お掃除させてください!!」

「はぁ?」

「いつまでこのお仕事をしているかはわかりませんが、いずれ私は元の場所に戻る身です。得意な家事を生かして仕事をしていましたし、腕が鈍ると市井に戻った時に食いっぱぐれるかもしれません。なので、時間の調整ができるのでしたら、是非!是非!お掃除をさせていただきたいと思いまして。」

「ああ、そういう事ですか。・・・そうですね。それはいいかもしれません。考えておきます。」

「ありがとうございます!!」

「では、兎に角お妃仕事をまずは頑張るように。良いですね?」

「は、はい~~~。」

 

 

 

 

 

*********

 

 

 

 

 

「お妃様、陛下のお越しです。」

「え?は、はい!」

 

眠る準備をしていると私付きだと紹介された侍女から先触れがもたらされた。

確かに妃かもしれないけど、夜着を着ただけの姿を結婚前に殿方に見せるなんて恥ずかしすぎる。

しかも相手は仮初めの夫で、その上この国の王様だ。

みっともなくて御前に立てる気がしない。

 

「妃よ。今戻った。何も困ったことはなかったか?」

 

色々思案していると、陛下が入ってきた。

唖然として何もいう事が出来ずにただ俯いて立ち尽くしていると陛下が此方に近づいてくるのが分かる。

逃げ出したい!

ただその一心だった。

 

フワッ。

 

何か温かいものに包まれた。

とてもいい匂い、柔らかくて優しくて、それから甘い。

 

目を瞑っていい香りに身を任せていると頭上から声がした。

 

「もう下がって良い。二人きりにせよ。」

 

驚いて目を開けると飛び込んできたのは誰かの衣で。

いい香りだと思っていたのはその人物の匂いだった。

 

後宮で、仮でも妃を抱きしめる腕を持ち、侍女を下げることができる人物は、私が知る限り只一人しかいない。

 

状況に気が付き腕の中から逃げ出そうとあたふたするも、なぜか陛下がぎゅうぎゅうと抱きしめて来て、動けば動くほど拘束する力が強くなっていく。

抜け出すことを諦めかけた時、ふっと腕の力が弱まり拘束から抜け出せた。

 

「君は・・・私の妃であろう?」

 

冷たい声色で問われ、脚が震える。

涙が零れ落ちそうで、唇を強く噛み締めた。

 

「は、い・・・。」

「囮だと言ったはず。君は私の寵愛を受ける妃だ。わかるか?」

「・・・い、いえ。」

 

明らかに身に纏う雰囲気が変化した。

察しの悪い私に苛立ったのだろう。

一般庶民には王族の事など分かりませんよと言ってやりたいのは山々だったけど、恐ろしさにうまく喋ることもできそうにない。

 

「ふぅ。つまり、私の愛情表現をただ受け入れるふりをすればよいのだ。今の様に逃げ出すような素振りは許さぬ。」

「・・・。」

「わかったか?」

「は、い。申し訳、御座いませんでした。」

「仲の良い振りをしなければ囮には成らぬ。見た限り、そういう事には不慣れであろうが・・・。励め。」

「は、い。」

「寵愛を見せつけるために、時間のある時は此方へ来る。と言っても、案ずることはない。私も忙しい身だ。此方では政務をするだけだ。君も好きにするが良い。」

「わかりました。ではあの、寝所の方に居ますので、必要な時は呼んでください。失礼いたします。」

 

頭を下げ拱手すると逃げるように寝所に向かった。

 

李順様から妃教育用にと沢山の書簡を持たされていたから、今日はそれを読んで時間をつぶそう。

同じ部屋にさえいなければ何とかなるかもしれない。

兎に角、青慎の為にも、紅珠様の為にも、何としてもこの仕事をやり遂げると決めたのだ。

やると決めたからには狼が怖いなんていつまでも逃げてはいられない。

 

怖くて恐れ多いから顔を見ることは出来ないけれど、抱きしめられた時に感じたあの温もりは本物だと思うから。

偽りの温もりではあるけれど。

 

 

 

 

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つづく

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