• 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 5
  • 6
  • 7
  • 8
  • 9
  • 10
  • 11
  • 12
  • 13
  • 14
  • 15
  • 16
  • 17
  • 18
  • 19
  • 20
  • 21
  • 22
  • 23
  • 24
  • 25
  • 26
  • 27
  • 28
  • 29
  • 30
  • 31

柔らかく優しく甘く⑨


っていうかですね。

 

こっちは鬼暑くてですね。

 

お正月三が日、うちの4歳の殿は半袖で過ごしましたよ、ええ(*_*;

冬っていつからでしたっけ?

今年は冬物買う手間が省けましたね←チガウ

 

旅行者と思われる皆さんのコートがなんとも・・・

 

それでは、下町編完結です(#^^#)

 

いってらっしゃいませ! 

 

 

 

************* 

 

 

 

「あれ?」

「あっ。」

「また会いましたね。」

「ホントだね。こんにちは。」

 

あれから毎日買い物に行くたびに翔に会う。

いつも出掛ける場所も買う物も違うのに、何故かすれ違う。

 

どんだけ偶然?

 

ちょっと疑問にもなるけど、あの人懐っこい優しい笑顔で声を掛けられ近付いてくるのが嬉しく感じる自分もいて。

今日は家を出てからずっときょろきょろしながら歩いている自分に気が付いていた。

当たり前の様に顔を合わせ、いつものように家へ来てご飯を食べる。

毎日来るから青慎ともすっかり顔なじみになってしまっていた。

他愛のない話をして微笑みあっておやすみなさいを言って別れる。

優しくて穏やかな日々だった。

 

けれど、そんな日はいつまでもは続かない。

 

「あの、翔、あのね・・・。」

「うん、どうしたの?」

「えっと、私、ほら、住み込みで働いてるって、覚えてる?」

「うん、覚えてるよ。」

「それで、ね。今日中には戻らなきゃいけなくて・・・。」

「え?本当に?」

「うん。あの、毎日会えて、その、た、楽しかった。」

「・・・そっか。僕もゆーりんに会えて、毎日ご飯食べれて楽しかったよ。」

「・・・。」

 

物凄く残念そうに俯くから何も言えなくなってしまう。

 

「仕方ない、ね。」

「ごめんね。」

「・・・。」

「・・・。」

 

いつもは今日は何食べたい、とか、どんなものが好き、とか、いろいろ話しながら買い物をしたり歩いたりするけど、今日はもう一緒にご飯を食べることは出来ない。

 

肩を並べて王宮まで向かいながら、離れがたくて、でも何も話せなくて、二人で黙ったまま歩いていた。

 

「あ、あのさ・・・。」

 

翔が立ち止って私の手を掴んで言った。

 

「う、うん、何?」

 

急に手を掴まれて驚き、手を引こうとしたけど、翔は逆にギュッと握りしめてきた。

 

「あの、また会える?」

「え?あ、また休みが貰え、たら。」

「・・・、また肉饅頭、作ってくれる?」

「うん、翔、美味しいって言ってたね。」

「僕、ゆーりんの作った物じゃなきゃ、もう食べる気しないな。」

「ふふ、何言ってるの?私のなんて適当だよ。」

「そんなことないよ。優しくて、甘くて、ゆーりんらしい味だよ。」

「~~~~~。」

「おっと、危ない。」

「~~~~~、もう、あ、歩けないじゃないの。」

「ふふふ、知ってるよ。」

「知ってる、じゃない!もう!!」

 

休みの間中毎日顔を合わせて喋ったけど、翔は言葉を真っ直ぐに此方へ向けてくる。

あまりもの恥ずかしさに腰が砕けると、翔はタイミングよくいつも支えてくれた。

 

まるで、王宮に居るあの人のように_____。

 

翔と過ごす時間は優しく温かくて、私にとっては宝物のような時間だった。

常にドキドキして緊張を強いられる仕事で疲弊していた心を柔らかく包み込んでくれた。

でもそれと同時に、何故か時々陛下の事を思い出して辛かった。

何かの拍子に翔の行動が陛下のそれと重なってその時の感情を思い出し私を揺さぶった。

翔に好意を感じれば感じるほど、陛下の事を思い出して困った。

戻ればまた陛下に翻弄される日々が待っているだろう。

会いたい、辛い、でも・・・。

翔にも同じことを感じる自分がいた。

あの笑顔が見たい、美味しいって言ってもらいたい。

自分の心の中に2人もいるなんて考えられなかった。

第一、今まで恋なんてしたことがない。

好きになるのは1人だと思っていたのに、いきなり2人とか許容できない。

どちらも気の迷いじゃないかと思う。いや、思いたい。

大体、どっちにせよ身分違いなのには違いないだろう。

何故か毎日下町でばったり会ってはいたものの、翔は身に付けている物といい、物腰から食べ方までどことなく気品があった。

青慎が勉強している時も、そっと助言をしているところを何度か見たこともある。

あれだけの教養や知識を持つ人が庶民なんて考えられない。

それに気が付けたのは、李順様のお妃教育の賜物だけど。

知らないという事をわからなければ、わからないことだらけなのだ。

教育というのは本当に大切で、それを庶民にも与えてくださった陛下は素晴らしい方には違いなかった。

 

考えに耽っていると、そっと下ろされた。

 

「ここで、いいかな?そろそろ貴族の居住地域だし。」

「あ、済みません。お、重かったですね。」

「んーん、ゆーりん軽いから大丈夫だよ。」

「翔は何か鍛えてるの?荷物もいつも軽々と持ってくれたし。」

「ん~、まぁね。人並みにね。普通だよ。」

 

ニコニコと笑みを絶やさずに、最後まで私を気遣ってくれる翔が嬉しかった。

本当は離れ難いけど・・・、でも。

 

「あ、じゃあ、私行きますね。」

「うん、また、ね?」

「はい!また!」

「あ!ちょっと待って!!」

 

翔は私の腕を掴んで引き寄せた。

するっともう片方の手が頭の方に伸びて何かが差し込まれる。

 

「え?何?」

「うん、毎日御馳走になったから、そのお礼。」

「え?え?」

「簪、だよ。」

「ええ!そんなの貰えないです。私だって毎日会えて楽しかったし。」

「うん、僕も。・・・、だから、忘れないで?」

「わ、忘れないですよ?」

「うん。」

 

翔はこの数日では見たことがなかったくらい寂しそうに微笑んで簪に手をやった。

その瞳に見つめられると居た堪れない気持ちになる。

 

「で、でもこんなの貰わなくても、忘れないですよ。」

「うん、ゆーりんはさ、そうだと思う。」

「そうですよ。」

「うん、これはね、僕の我儘だよ。」

「わ、わがま、ま?」

「そう。見るたびに僕を思い出して。忘れないで。」

 

どうして会って数日しか経たない私にこんなにも懇願するような目を向けてくるのだろう。

正式には大分前にぶつかっているのだけど。

 

「ね?僕の顔、忘れないでね?」

「わ、忘れない!約束する。」

「絶対だよ?あと肉饅頭も、約束だよ。」

「はい!腕が鈍らないように、あちらでも作ってもっと美味しくできるように頑張りますね。」

「うん、僕、楽しみにしてるね!」

「じゃあ!」

「じゃあ!」

 

何度も振り返りながら手を振った。

何度振り返っても、嬉しそうにこっちを見て手を振り返してくれるから、こっちも嬉しくて、何度も何度も、遠くなっても飛び跳ねるように手を振った。

その度に頭に挿してくれた簪がシャランシャランと心地よい音を立てた。

 

翔に尻尾が生えてぶんぶん振っているように見えたのは私だけの秘密だ。

 

 

 

 

 

翔が見えなくなると王宮を見上げた。

物凄く立派で、威厳があって、太陽の光を浴びて光り輝いている。

だけどなんだか周りからは浮いているようにも見える、孤高の牙城。

まるであの気高く人を寄せ付けない雰囲気を漂わせながらも、寂しそうな声を出して優しく私を縛り付けるあの人のように。

 

真っ直ぐ、あの人が待つ、いや、待ってはいないだろうけど。

あの人がいる王宮へ。

 

翔のおかげで少し気が晴れたのも本当だったから。

それと同時に、寂しそうなあの人も心配だったから。

 

下町に久しぶりに来て、暮らしがより良くなっているのを感じた。

これからも陛下の御世で発展していくのだろうと思う。

あの人の事は、良くはわからないけど。理解はできないけれど。

そんな気持ちを持つのも不敬に当たるかもしれないけど。

寂しそうで頑張りやなあの人の、少しでも、ほんの少しでも役に立つのであれば。

 

もう少し、頑張ってみよう。

 

 

 

 

*************** 

 

 

 

つづく


スポンサーサイト

コメント

覗いたら続きが〜(o^^o)
これからどうなるんだったかなー?って思いながら
また続き楽しみにしています!
花愛 様

コメントありがとうございます~(^_^)
私もすっかり忘れていて、全部読み返しました!
区切りがいいようにアップできるようにしているつもりですがいかがでしょうか?

続きもなるべく早めに持ってこれるようがんばりま~す!(^^)/

コメントを投稿する

管理者にだけ表示を許可する